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百英雄伝×百時間 Switch版プレイレビュー

世界中(日本含む)のJRPG好きからの支援を集めて制作された「百英雄伝」。幻想水滸伝の精神的続編として期待され、また古き良きドット絵と現代的なレベルのビジュアルを掛け合わせた画面が公開されるたびにますます楽しみになったものである。ちなみにキリよく百時間と書いたが、本当は92時間くらい。かなり寄り道をして寝落ちもしてこれなので、本来はもっと短く済むと思う。

そんな「百英雄伝」を先日クリアした。

個人的な採点としては以下。各項目100点満点としての点数。

●システム 85
●グラフィック 95
●シナリオ 75
●キャラクター 90
●プログラミング 50

なお、前提として筆者は幻想水滸伝1~5をすべてクリアしている。そのほか「幻想水滸伝ティアクライス」「幻想水滸伝 紡がれし百年の時」もクリア済。ありていに言ってしまえばまあまあの幻想水滸伝オタクであろう。

オマケ的に言うとシリーズの方の個人的評価は「2>1>5>3>ティアクライス>4>>>>百年の時」という感じ。百年の時に至っては幻想水滸伝を名乗らなければここまで評価低くないのだが…。

シリーズファンでない場合だと、各項目10点ずつくらい下がるかもしれない。


システム 85
幻想水滸伝シリーズおなじみの「本拠地」システムが長い時を経て復活。「仲間集め」「料理対決」「温泉」「ミニゲーム」「劇場」など、シリーズファンとしてはまさにこれがやりたかった、というシステムが多く取り入れられている。仲間を集める意味としての「英雄コンボ(協力攻撃)」もあり、「この2人・3人が共通点ありそう」などと探すのも楽しい。その一方で戦争システムはやや冗長に感じた。個人的にはめちゃくちゃシンプルだった幻想水滸伝1のシステムが一番好みだったというのもある。


グラフィック 95
ドットのキャラに非常に多くのアニメーションパターンが用意されていて、それが美麗な背景グラフィックの中で躍動する。幻想水滸伝がそのまま進化していったらこういう形になったかもしれないなぁ、と思うと感慨深い。キャラパターンは特に一騎打ちの時になるとさらに多くのアクションが見られ、ほんとよく作ったものだと思う。


シナリオ 75
「国と国の争い」「段々と増えていく仲間たちとの団結」「異なる種族たちの協力」といった、いわゆる幻想水滸伝テイストの要素は一通り押さえてあったと感じる。ただ過去作への思い入れが強すぎるせいか「喪失の要素が薄い」とか「主人公がリーダーになる説得力」とか「相手国内での背景説明」あたりが気になった。これもやはり幻想水滸伝2ができすぎていたのだろうなあ。


キャラクター 85
個性豊かなキャラクターは今回なんと120人が仲間になる。これまでは水滸伝にちなんで「108星」とされていたが、元ネタの水滸伝キャラを連想させるのも段々と無理が出ていたので単純にたくさん仲間が増えるということでよかったと思う。イラストタッチも懐かしくも魅力的に描かれていたと思う。

ちゃんと人間以外の仲間(ドラゴン、グリフォン)もいるし。

プログラミング 50
この一点だけでガクンと評価が下がる人もいそうだが、とにかく不具合が多い。特にSwitch版はマシンパワーの低さがダイレクトに影響していてとても快適とは言いづらい出来。しかしかなりマシンパワーを使いそうなスマブラやゼルダでさえかなり快適なロードとレスポンスだったことを考えると元々のプログラムの問題もないとは言えないだろう。具体的に言うと「1.ロード時間が長い」「2.ショップなどの処理が重い」「3.バグがある」「4.フリーズする」の4点。
1と2はそのうち慣れるし、3は自分の場合たまたま致命的なものに当たってないのでいいのだが、問題は4。とにかくエラーで停止しやすい。たぶんクリアまでに15~20回くらいは食らっている。対策としてはとにかくこまめにセーブ。エンディング中にエラーになったらどうしよう…とヒヤヒヤしていたがそれはなかった。
ちなみにロード時間に関してはPS5やPC(Steam)だと快適らしい。ハードを持っているならそちらがオススメ。
※追記:その後のアップデートでロード時間に関してはかなり改善された模様

総評としては「幻想水滸伝を超えるものではなかったが、今の時代に楽しめる2DベースのRPGとしては概ね満足」というところ。ただ残念なのがディレクターである村山氏(幻想水滸伝1.2のメインディレクター)が今作の発売を待たずに急逝したことである。仮に百英雄伝の続編が出ても、テイストはまた違ったものになるだろう。他の人だとクオリティが下がると決まったわけではないのだが。

ちなみに、良い点の中で一つだけ、もはやイカれているレベルのものがある。それが「劇場」だ。遊び方は台本に応じてキャストを選ぶだけだが、用意されたデータの数がイカれている。たとえば「赤ずきん」の場合。赤ずきん役、狼役、猟師役、ナレーターのセリフがあるのだが、それが数十人以上のキャスト分全部ある。一体どれだけ録音の手間がかかったのだろう。しかも台本は複数あるのだ。気が遠くなる。しかも同じ役でもキャラクターによっては勝手に台詞を変えたりうまくしゃべれなかったりするのでそのぶんバリエーションがある。間違いなく今作で一番イカれている要素といえよう。

願わくば幻想水滸伝6としてあの世界観の続きで楽しめたなら言うことはなかったのだが…。まあそれは言うまい。書いたけど。

さてここから先は内容に触れてのネタバレ感想となる。というか自分の記録用でもあるので有料ゾーンとした。主に要望と言うか物足りなかったところについて語っていくが、幻想水滸伝ファンゆえである。純粋に百英雄伝を楽しむ人にはぜひそのまま楽しんでほしい。

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