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「裸のトークバラエティ」とは何か。~あちこちオードリーについて語る~

テレビを見る時間が減っている。動画全盛の世の中で、見逃してもTverで見られるし、リアルタイムでつけていることがほとんどなくなった。そんな状態でも、欠かさず見ている番組が一つある。「あちこちオードリー」だ。
(と言いながら住んでいる地域では放送が遅れるのでTverで翌日に見ている)

「裸のトークバラエティ」というキャッチフレーズがついている通り、なかなか他の番組では見られないような本音のトークが見られるのが魅力である。
あと、恐らくこれは番組の方針でもあると思うのだが、よくあるバラエティのわちゃわちゃ感(ひな壇で誰かが立ち上がって騒いだりとか、ネタをぶっこんだりとか)がないのが良い。あれはあれで楽しい時もあるが、もう類似のやり取りが多すぎて飽きている。

明るいキャラクターが心の闇を吐露したり、逆に暗いと思われがちなキャラクターが意外な意見を持っていたり。もちろん完全にテレビ用の仮面を脱いでいるわけではないと思うが、少なくとも「他の番組では見せない顔」が見られるのが新鮮で面白い。自然体に見えるのが魅力であるということは、逆に言うといわゆる馬でいう「かかっている」状態になるとこの番組では空回りしやすい。爪痕を残すための番組ではなく、自然と足跡が残っているような番組なのだと思う。

なおプロデューサーは現在フリーでは最も売れっ子(おじさんだが)と思われる佐久間宣行氏。最近は深夜番組のMCまでやってて、段々と表に出だした感もあるが、他と差別化を図る狙いやバランス感覚はさすがだ。

基本的にはゲストを招いてトークする番組だが、たまに企画モノが放送されることがある。「インパルス板倉による絶望チェック」「自作自演占い」「芸能界の参考書を作ろう」「どんよりポエム」など。
どれも面白いのだが、中でも「自作自演占い」は白眉だと思った。予め自分で悩みを伝えておき、ニセ占い師に「あなたの悩みは○○ですね」と言ってもらってから「うわ…当たってる」というしらじらしいやりかたではある。しかし自分から言いにくいことが占い師に当てられた体裁を取ると話せるようになるという点によく気付いたなあ、と感心させられた。確かに考えてみるとMCがカウンセラーなわけでもないのに「あなたのお悩み話してみてください」では話しづらいだろう。たまにひな壇系の番組でも「聞いてください(MC)さん、私こんな不満を持ってます」みたいなやりとりを見るが、予定調和感がすごいし、悩みというフィルターを通して爪痕を残そうとする雰囲気がだいたい出すぎている。

出川哲朗がアメトーークでオススメしていたり、業界視聴率が高いようだが、それは恐らく「タレント・芸人の新しい魅せ方の参考になる」ということに尽きるのではないだろうか。「Aという芸で有名になった人にはとにかくAをやらせておけばいい」という考え方は、ホントに期間限定の消費にしか繋がらない。バラエティに二番煎じの内容が多い現状から見ると、飽きられたら他の人を使うだけという思考でやっているスタッフも多いのだろう。

そして、やはり根幹を支えているのがオードリー若林の回す力と質問力だ。台本がなく、事前打ち合わせもほとんどない番組らしいので、内容は若林が本当に気になって聞いていることだと推測される。それがいちいちツボをついて面白い。たまにゲストが多い時は正直質問が回りきらなかったりするが、多分放送枠に収まらなかっただけで、未公開スペシャルなどで出てくるのだろう。またゲストもしゃべりやすそうにしていることが多く、緊張させないという空気作りも優れている。まあこのあたりは「オードリーをナメてる」という自虐ぽいネタにもつながっているところだが。

というように基本絶賛している番組だが、2つほど苦言というか要望がある。それは「冒頭で、その後のトークの美味しいところを見せないでほしい」というのと「なるべくゲストの数を絞ってほしい」である。
冒頭で面白いところを入れるのはまあ常套手段というか、見続けてもらうために有効なやり方なんだろうなと理解はしているのだが、「ああ、さっき見た面白いやりとりね」となるより新鮮に見たかったという気持ちがある。とはいえこれは完全に最後まで見るとわかっているファン目線の話なので、無理だろうなとは思うが。
あともう一つ「なるべくゲストの数を絞ってほしい」というのは、ゲストが2組あって1組のゲストがハネたとき、どうしてももう1組がオマケっぽい感じになってしまうからである。「これは1組だけで充分撮れ高ありそう」というゲストの時は1組だけなので、まあ保険もあるとは思うが…。

ということで今後も楽しみにしていきたい。
ちなみに昨日放送していた「エルフ・ニッポンの社長・マユリカ」の回は3組もいたのにそれぞれのキャラクターを理解させつつ過不足のない回し方で、なにげに神回ではないかと思った。ケツの不憫な扱いが面白い。


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