カブ旅1-8

スーパーカブで旅に出る。

急がず、焦らず、どこまでものんびりと。
旅にスピードはいらない、いろんなことを見過ごしてしまうから。

いろんなものを見て、いろんなことを感じて、どこまでものんびりと前へ進む。
ゆっくりと、ゆっくりと、大切に、取りこぼさないように。

人生の全ては貴重で、愛おしい。

  ○

そしてしばらくするとメスティンで炊いているご飯が出来上がる。さっきまで勢いよく吹いてた水蒸気も段々と大人しくなり、やがては完全に止る。
 そうすると蒸らしだ。実はこれが非常に重要。タオルでぐるぐる巻きにして、保冷バッグに入れて、ひっくり返して暫し待つ。焦りは禁物だ。
 待つこと10分。美味しいご飯が炊ける道のりは遠い。普段は炊飯器でボタン一つだが、いざ火で炊くとなるとなかなか大変なことに気づく。不便さを実感することで、日常の便利さに感謝する。これもキャンプの醍醐味なのかもしれない。この不便さを確認しにキャンプに来ているのだろう。
 熱々の蓋を開ける。真っ白の湯気とともにサバの香りがもう美味しい。ゴロゴロと大きめの鯖の身をスプーンで崩してご飯をいただく。
 うまい。
 多少の焦げもキャンプならではだ。そしてこれも美味い。
 お酒を飲むのを忘れて、ご飯をかきこんでいる。体の中でエネルギーに変わっていくのがわかる。これで、ああ体は疲れていたんだなと実感する。疲れて、腹が減って、ご飯を食べて、それがエネルギーになる。正義だ。

 一気に食べてしまった。もう少しゆっくりとお酒とともにいただくつもりだったのに。
 ご飯を食べ終わって、タバコに火を付ける。ゆっくりと煙が上っていく。今日もお疲れ様。ゆっくりと夜はふける。


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