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新技術でCO2からメタノール量産

◉従来の技術の2倍以上の収率で、メタノールを製造できる新技術のパイロット設備を、大手の住友化学が稼働するとのこと。ロシア連邦軍のウクライナ侵攻によって、昨年からようやくエネルギー問題の関心が高まり、原発再稼働の議論も進んでいますが。水素やアンモニア、エタノールといった、昔からよくある 物質を用いての火力発電の研究も、だいぶ 進んでいます。それらの話題をまとめてご紹介。

【収率2倍…住友化学が新技術でCO2からメタノール量産へ】ニュースイッチ

 住友化学は2023年末に、二酸化炭素(CO2)から従来技術の2倍以上の収率でメタノールを製造できる新技術のパイロット設備を稼働する。島根大学と共同開発中の新コンセプトの反応器を採用し、収率を高める。生産能力は年数百トン。量産を見据えた検証を行い、30年に量産工場の稼働を目指す。

https://newswitch.jp/p/36480

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、なんか、内容にあったいい感じのイラストがありましたので。

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■メタノールと水素と蟻酸と■

メタノール……メチルアルコールという呼び名のほうが、自分らオッサン世代にはシックリ来ます。だって、人体に有害で、呑んで失明した人人も昔はいました。鹿児島県だと、名産のサツマイモを澱粉にする工場が各地にあって、そこで生成されたメタノールを盗み出して呑んで、失明した人間もけっこういましたから。エチルアルコールとメチルアルコールの、呼び名が定着していました。

目散るアルコールと、偶然ですが名は体を表していますしね。ただ、アルコールの構造的には、メチルアルコールがもっとも単純で、合成は楽なようですね。人体に有害なので管理は厳密にしないといけないのですが。バイオマスのエネルギーも、基本はエタノールを作って燃料にする形。またエタノールは、水素を安全な形で運ぶ水素キャリアとしても、優秀です。記事によれば、「この実証とは別に、シンガポールでCO2と水素からメタノールを製造することも検討している。」とのこと。

TOYOTAの子会社が研究している人工光合成も、ブドウ糖や果糖、デンプン質などの炭水化物を生成するのではなく、蟻酸を作り出して、そこから水素を取り出すという、かなり興味深い手法です。水素エンジンに力を入れているトヨタですから、水素をどのようにして安全に生産し、それを保管した 輸送するかまで含めての戦略は必要ですが。エタノールの効率的な生産というのは、トヨタの水素エンジン推進戦略とも、密接な関係が生まれそうです。

■メタノール変換触媒を創製■

一方、東京工業大学では「物質理工学院 材料系の杉山博信大学院生、元素戦略MDX研究センターの細野秀雄栄誉教授、北野政明教授、笹瀬雅人特任准教授、宮﨑雅義助教の研究グループは、低温での二酸化炭素水素化反応を促進するPdMo金属間化合物触媒を開発し、0.9 MPaと25 ℃という温和な条件でのメタノール合成を実現した。」とのこと。なんだか、一気に動き出した感じですね。こちらも、アンモニアの処理が関わっていて、興味深いです。

【室温で二酸化炭素をメタノールへ変換できる触媒を創製】東京工業大学

要点
・酸化物前駆体のアンモニア処理による簡便な手法によって、パラジウム(Pd)とモリブデン(Mo)が交互に積層した金属間化合物触媒を合成
・大気下および反応雰囲気下でも性能が劣化しない高い安定性を実現
・加圧条件下(0.9 MPa)において、二酸化炭素水素化による室温(25 ℃)メタノール合成を達成

https://www.titech.ac.jp/news/2023/066478

こうやって俯瞰してみると、水素とエタノールとアンモニアとは、それぞれ密接な関係があって、次世代のエネルギー戦略を考える上で、とても重要なのが見えてきます。物質自体はそれこそ、数千年前から知られているような、ありふれた物質なんですけれどね。逆に言えば、そういうありふれた物だからこそ、堅実に開発が進められるという面も。あんがいアルコール自動車が見直される未来が、やってきたりして。

■九電もアンモニア混焼試験■

アンモニアに関しては、石炭と一緒に燃焼する混焼の試験を、九州電力が始めたようです。アンモニアも エタノールも、それ自体が燃える物質ですから。ただしアンモニアの場合は、可燃性がそれほど高くないという欠点はありますが。しかし石油や天然ガスと比較して、石炭は世界中の色んな場所から算出しますから。エネルギーの安定供給という面から見ても、アンモニアと石炭の混焼は、日本にとって重要になるでしょう。

【九州電力、石炭火力でアンモニア混焼 同社初の試験】日経新聞

九州電力は7日、石炭火力の苓北発電所1号機(熊本県苓北町)で石炭にアンモニアを混ぜて燃やす試験を11日から実施すると発表した。アンモニア混焼試験は同社初となる。電源の低・脱炭素化の一環で、アンモニアは燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しない。今秋からは石炭火力の松浦発電所2号機(長崎県松浦市)でも同様の試験を実施する。

苓北発電所1号機での混焼試験は既存設備にアンモニア用のバーナーや配管を取り付け、石炭にアンモニアを0.1%混ぜて燃やす。燃料の燃焼状態や設備への影響を確認することで、2030年までにアンモニア20%混焼に向けた技術を確立したい考えだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC074Q10X00C23A4000000/

アンモニアに関しては、こちらのnoteでも書きましたが。従来のハーバー・ボッシュ法だと、アンモニアの合成には400度から600度の高温状態が必要だったのですが、東工大の研究で200度以下の低温でのアンモニア合成が可能な触媒が発見されたとのこと。やはり理系の雄・東工大。日本の国益のためにプラスの研究をたくさんしていますね。無能な方の菅元総理大臣の母校ですが。関係ないだろ!

期待したいですね。

■革新的リチウムイオン電池■

さて、おまけですが。韓国の浦項工科大学校と西江大学校の共同の研究チームが、これまた画期的な技術を開発したようです。電気自動車の後続距離を従来の10倍に伸ばすという、革新的な バッテリー技術。電気自動車の弱点はやはり、ガソリンスタンドほど潤沢なエネルギー供給施設がないこと。国策として普及を強制した中国のような状況には、ありませんからね。そうなると バッテリーの持ちがかなり重要になってきますね、少なくとも普及の初期段階においては。

【電気自動車の航続距離をこれまでの10倍伸ばす革新的なリチウムイオンバッテリー技術が発表される】Gigazine

従来のリチウムイオン電池を使用した電気自動車よりも10倍の距離を走行可能となる新しいリチウムイオン電池技術を韓国の浦項工科大学校西江大学校が共同で発表しました。

Layering Charged Polymers Enable Highly Integrated High‐Capacity Battery Anodes - Han - Advanced Functional Materials - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/adfm.202213458

https://gigazine.net/news/20230407-ev-lithium-ion-battery-technology/

どうも、電気自動車自体は、欧州勢が力を入れていた割に、厳しい感じですね。TOYOTAの、水素エンジン戦略が正しいのかも。知らんけど。ただ、電気自動車も水槽 エンジン自動車もアルコール自動車もガソリン自動車も、状況に応じて 共存できるのが本当の意味での多様性のような気はしますけれどね。いずれにしろ、エネルギー問題というのは本当に人間の生き死ににも関わってきますので、国の大事。できれば 政治主導ではなく、科学的な事実と研究をもとに、最適を選んで欲しいです。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ

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