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人工光合成の可能性

◉ずいぶん昔、人工光合成は変換効率が10%になると、実用的になると聞いた記憶があります。一般に、天然の植物の光合成の効率は1%、人工的に最適の条件にしても5%以下と言われますから、まだまだ技術的なハードルは高いと思っていたのですが……いきなり7.2%って数字が出てきました。しかも、トヨタ自動車グループの研究所から。これは、一気にエネルギー問題の中心に躍り出そうです。

【世界最高水準の人工光合成に成功】共同通信

 トヨタ自動車グループの豊田中央研究所(愛知県長久手市)は21日、太陽光を使って水と二酸化炭素(CO2)から有機物のギ酸を生成する「人工光合成」の効率を世界最高水準まで高めることに成功したと発表した。過程でCO2を材料とするため脱炭素化につながるほか、生成したギ酸から水素を取り出し燃料電池の燃料に使うこともできる。早期実用化を目指す。
 豊田中央研究所は2011年に、水とCO2のみを原料とした人工光合成に世界で初成功。当初は太陽光エネルギーを有機物に変換できる割合が0.04%だったが、改良を重ね7.2%まで向上させた。植物の光合成の効率を上回るという。

しかも、人工光合成の研究とはいえ今までのようなブドウ糖や果糖、デンプン質などの炭水化物を生成するのではなく、蟻酸を作り出して、そこから水素を取り出すという、かなり興味深い手法です。

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■蟻酸と人工光合成■

0.04%が7.2%とか、飛躍がスゴいですね。蟻酸はその名の通り、ありの仲間が持っていることが多い、強力な酸です。もともと、蟻塚から発見され、防腐剤や抗菌剤としても普通に使われている化学物質ですから。次世代エネルギーとしての水素の利用方法や運搬法法は、イロイロと研究されています。ある種の合金に吸着したり、エタノールに変えたり。しかし蟻酸とは。検索したら、こんな記事がヒットしました。

【人工光合成によるギ酸の合成に成功――外部からの電気エネルギーなしにCO2を変換 GSアライアンス】fabcross

GSアライアンスは2020年11月17日、CO2や水、太陽光などの光エネルギーを用いて、燃料や化学物質の中間体原料となり得るギ酸を人工光合成により合成したと発表した。酸化物と金属錯体を複合化させた同社独自の触媒を採用しており、外部からの電気エネルギーなしの人工光合成に成功している。
同社では、合成されたギ酸を水素貯蔵の手段としても活用できるとしている。水素は宇宙で最も小さい元素であり、特に気体の水素の貯蔵が困難で、コスト高に繋がっている。ギ酸は、必要な際に水素に変換して、燃料電池により電気エネルギーとすることができる。強酸であり取り扱いに注意を要するものの、液体であるため水素と比較して貯蔵が容易で、実用化のハードルを下げることができる。また、水素ではなく、ギ酸を直接燃料電池の燃料とする研究開発も進められている。

こちらが疎かっただけで、蟻酸と人工光合成って、既に動いていたんですねぇ。しかし、そこから短期間で効率アップし、トヨタ自動車グループの研究所から発表と言うことで、インパクトが大きかったです。アントニオ猪木さんの永久機関とは、訳が違いますからね。しかも水素ではなく蟻酸を直接、燃料電池の燃料にする研究も。蟻酸自体は危険性もありますが、これは研究が進みそうですね。

■水素と次世代エネルギー■

ついでと言ってはなんですが、水素エネルギーについて、関西電力が、こういう動きをしています。関電の目論見の是非は、自分には解りませんが。ひとつハッキリしてるには、第四世代原子炉の超高温原子炉も、その高温を利用しての石炭液化とか、水素生成が視野に入ってるのですが。それぞれが独立しつつ、連帯できる可能性があるのは、面白いですね。

【関西電力が水素バブルを機にもくろむ、「原発・起死回生シナリオ」の勝算】ダイヤモンド・オンライン

電力業界の西の雄、関西電力が水素社会で主役を張るという壮大な野望を抱いている。切り札としているのは、関電が“宝”としている原子力発電所である。特集『1100兆円の水素バブル』(全8回)の#3では、関電が温める起死回生シナリオに迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

ここに、人工光合成と蟻酸が割り込んでくるとは。何かひとつにオールインするのではなく、第四世代原子炉と人工光合成と石炭液化と水素生成など、幅広く動くことが大事でしょう。小型モジュール炉は早くても2030年前後。その間に、幅広く埋めていければ、再生可能エネルギーに過剰な期待を抱いてる人に対して、代替案になるでしょう。個人的には、かなり期待したいですね。

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