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女子体操の五輪辞退問題
◉パリ五輪の女子代表選手の宮田笙子選手が、喫煙によって代表を辞退したというニュース。日本体操協会は、辞退という形にしたわけですが、実質は剥奪という処分ですね? この処分が重いか軽いかで、かなりの議論になっています。
【「社会的ペナルティーの重さに懸念」“五輪辞退”に至った宮田笙子の母校・順天堂大が声明を発表!「出場もあり得ると考えておりました」【パリ五輪】】THE DIGEST
7月19日、日本体操協会は東京都内で緊急会見を開き、パリ五輪の女子代表選手である宮田笙子(順天堂大)が代表辞退に至ったと発表した。
(中略)
女子代表チームの主将にしてエースが“五輪辞退”という、まさに異例の事態だ。母校である順天堂大は19日付けで、公式ホームページ上に「本学学生のパリオリンピック出場辞退について」と題した声明を掲載。謝罪するとともに、経緯や今後に向けたサポートについての考えを明らかにした。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。
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■順天堂大学の見解■
詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。19歳の未成年の喫煙というのは、18歳を成人とする部分や選挙権との絡みで、矛盾も出ています。そこをきちんと、整合性を取る出来でしょうね。個人的には、18歳で飲酒と喫煙は解禁でいいと思いますし、競馬などの馬券(勝馬投票券)の購入は、大学生だと成人していても制限されるように、立場による何らかの制限はあっていいと思います。(※馬券の購入は、年齢だけに改正されているとのご指摘を受けました。訂正いたします) 所属する順天堂大学の声明の、重要部分を転載しておきます。
しかしながら、宮田選手は今回の行為を深く反省しており、これまで日本代表のリーダーとして真剣かつ真摯に練習に取り組み、大会に出場することを強く願っておりました。また本学としては、当該選手に対する教育的配慮の点から、常習性のない喫煙であれば、本人の真摯な反省を前提に十分な教育指導をした上で、オリンピックに出場することもあり得ると考えておりました。したがって、この度のオリンピック出場辞退という結果には、本人が負う社会的ペナルティーの重さへの懸念から、誠に残念な思いでおります。
これに対する、平祐介弁護士のコメントも、転載しておきますね。
出場辞退は「教育的配慮」の観点からペナルティーとして重すぎる場合がある旨を指摘。極めて妥当な声明文です
— 平 裕介 Yusuke TAIRA (@YusukeTaira) July 20, 2024
「社会的ペナルティーの重さに懸念」“五輪辞退”に至った宮田笙子の母校・順天堂大が声明を発表!「出場もあり得ると考えておりました」【パリ五輪】(THE DIGEST)https://t.co/5fr2Uv4ypj
出場辞退は「教育的配慮」の観点からペナルティーとして重すぎる場合がある旨を指摘。極めて妥当な声明文です
「社会的ペナルティーの重さに懸念」“五輪辞退”に至った宮田笙子の母校・順天堂大が声明を発表!「出場もあり得ると考えておりました」【パリ五輪】(THE DIGEST)
では、どの程度のペナルティが妥当か、という部分は難しいですね。順天堂大は声明で「本人の真摯な反省を前提に十分な教育指導」って言ってるのですけれども、そこにあまり具体性がないんですよね。実は、こここそが問題の本質のように思います。
■ペナルティの軽重■
例えば、アメリカのテレビドラマとかでは、不祥事を起こした高校生が清掃局の手伝い30日、みたいなペナルティが課されるシーンとか見ます。例えば今回の件も、パリ五輪終了後に全国○箇所の体操クラブでの小中学生の無料指導とかの、社会貢献の建設的ペナルティと、肉体労働などの罰則的ペナルティと、2種類の明確な基準があれば、五輪に「出す・出さない」の二者択一の議論とは、違ったかもしれませんね。出すと出さないでは、ペナルティの重さが、極端に違いませんか……と。
これは日本の死刑廃止論者も同じで、死刑廃止の代わりの恩赦なしの終身刑や重労働刑とセットなら、あんがい死刑廃止賛成は多いと思うんですよ。日本人は、死穢や血穢を嫌う、穢れの思想があるのですから。できれば、死刑はしたくないって部分は、あると思うんですよ。でも、それでは遺族などの報復感情が満たされない。近代法のルーツであるハンムラビ法典も、同害報復(タリオ)が原則ですから。死刑を廃止するなら、それに匹敵する罰が必要なのに。
それを、現行法で対応可能と、事実上の廃止だけを主張するから、死刑廃止論に賛意が増えない。それと同じです。犯罪者だけが有利になるような改正は、改正ではないですから。だから、何度調査しても、死刑制度廃止の賛成が、とても高い比率になってしまう。そこを民度とか、欧米では~と出羽守になって批判しても、しょうがないんです。死刑を廃止するに足る対価を示せ、死刑廃止論者はそこから逃げるな、という話でしかないんです。
■同害報復の原則を■
今回の件も「五輪後に、そんなペナルティが科されるなら、まぁ出場は容認していいか」って話になったかもしれません。もちろん喫煙の罰として、何が等価の罰なのかは、法学者の意見や、社会のコンセンサスが必要なんでしょうけれども。あくまでも自分の私見ですが、と前置きした上で。例えば、順天堂大学が留年ぐらいのペナルティを課すのなら、「それは学生には、ちょっと重いから五輪の方は出場でいいんじゃね」って人は多そうですけど。学生にとって、喫煙による留年は充分に重いです。
自分の母校の渋谷腐れナンパ大学だと、試験でのカンニングが発覚したら、その後の試験を受ける権利が剥奪され、留年が自動的に決まっていました。喫煙で留年なら、ペナルティとしては、それと同じですから。自分もいちおう、マイナーとはいえ体育会系の主将を務めた人間ですから、スポーツ選手を五輪の出場辞退に追い込むというのは、可哀想だと思いますよ、主観的に。ただ、現行ルールでは、それぐらいしかペナルティの方向がないのですから。
であるのなばらば、まずはそこから議論するほうが、建設的ではありませんか? こういうのがもっと一般化すれば、不毛な議論も無くなると思うんですけども。許す・許さないの議論では、喫煙というルール違反のペナルティが、軽すぎるか重過ぎるかの、二者択一にしかならないので。第三の選択肢の可能性を、議論したほうが良さげです。
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