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KADOKAWAが圧力に屈する

◉KADOKAWAが、2024年1月24日の発売を予定していた書籍『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』の刊行を、中止しました。原著はアビゲイル・シュライアー著『Irreversible Damage』で、「不可逆的なダメージ」ぐらいの意味でしょうか。作家でジャーナリストの著者の書は、学者が書いた学術書ではないのでアメリカでも物議を醸していて、批判があるのは事実です。でも、既に数カ国で出版されており、抗議に屈して直前で発売中止とは、言論の自由の観点からも不味いです。

学芸ノンフィクション編集部よりお詫びとお知らせ

来年1月24日の発売を予定しておりました書籍『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』の刊行を中止いたします。

刊行の告知直後から、多くの方々より本書の内容および刊行の是非について様々なご意見を賜りました。
本書は、ジェンダーに関する欧米での事象等を通じて国内読者で議論を深めていくきっかけになればと刊行を予定しておりましたが、タイトルやキャッチコピーの内容により結果的に当事者の方を傷つけることとなり、誠に申し訳ございません。

皆様よりいただいたご意見のひとつひとつを真摯に受け止め、編集部としてこのテーマについて知見を積み重ねてまいります。
この度の件につきまして、重ねてお詫び申し上げます。

2023年12月5日
株式会社KADOKAWA
学芸ノンフィクション編集部

https://www.kadokawa.co.jp/topics/10952/

ヘッダーはKADOKAWAの公式サイトより、KADOKAWAのグループ理念だそうです。

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■本を焼く者たち■

ドイツの詩人ハインリヒ・ハイネは、 戯曲『アルマンゾル』の中で有名な言葉、「焚書は序章に過ぎない。本を焼く者は、やがて人間も焼くようになる。(Dort wo man Bücher verbrennt, verbrennt man auch am Ende Menschen.)」と書いたのですが…。まさに、本を焼こうとする者たちが、跋扈する令和の世。言論は自由なんですが、それは出た本への批判であって、出版すること自体を妨害するのは、事前検閲と同じです。出版関係者が本を焼こうとしたことは、記憶しておきたいです。

『あの子もトランスジェンダーになった』刊行に関して、KADOKAWAへ「トランスジェンダー差別助長につながる書籍刊行に関しての意見書」を国内外の出版関係者24名による賛同コメントをつけて提出しました。
@kadokawahonyaku
@kadokawa_san
@kadokawa_PR
https://twitter.com/kadokawahonyaku/status/1731097324615860583

https://x.com/koba_editor/status/1731563521719337035?s=20

添付画像も、評論のために転載しておきます。何が問題なのか具体性がなく、さっぱり解りませんが。

https://x.com/koba_editor/status/1731563521719337035?s=20

執筆時点で、134万閲覧で1885イイネ。イイネ率は0.140%と、完全な炎上状態です。草津町をセカンドレイプの町と侮辱した一般社団法人Springや、そんな団体に人権賞を授与した東京弁護士会と、同じレベルの炎上です。
なのにKADOKAWA側の判断はあまりに拙速で、とても公論を反映したモノとは言いがたいです。ツイフェミが『宇崎ちゃんは遊びたい!』を燃やそうとしたときは、とても的確な対応をしていただけに、残念です。役員クラスで、この動きに内部から迎合した人間がいた可能性を、自分は感じます。

■原著者も批判へ■

ハイネの著作は、実際にナチスに焚書されるのですが。恐ろしいのは、それをやってる人たちの多くが「私はアンチファシズムです」と言ってることなんですよね。ブルガリア建国の父で、反ファシズムの闘士でもあったゲオルギ・ディミトロフは「次にファシズムがやってくるとき、彼らは反ファシズムを掲げてやってくるだろう。」と予言しましたが。 まさにそのとおりになった感じです。気に食わない研究者はオープンレターで追放を画策し、気に入らない政治家の暗殺に拍手喝采、気に食わないDVDは発売中止に、そして気に食わない本は出版中止に。

原著者のアビゲイル・シュライアーさんも、X(旧Twitter)で苦言を呈しています。

Kadokawa, my Japanese publisher, are very nice people. But by caving to an activist-led campaign against IRREVERSIBLE DAMAGE, they embolden the forces of censorship. America has much to learn from Japan, but we can teach them how to deal with censorious cry-bullies.

【Google翻訳】
私の日本の出版社であるKADOKAWAはとても良い人たちです。しかし、彼らは回復不能な被害に反対する活動家主導のキャンペーンに屈することで、検閲勢力を勇気づけている。
アメリカは日本から学ぶべきことがたくさんありますが、検閲による泣き言いじめへの対処方法を日本に教えることはできます。

https://x.com/AbigailShrier/status/1732091563331944641?s=20

子宮頸癌ワクチンや、コロナ禍でのワクチンで、医療的なデタラメな本が堂々と発売され、朝日新聞などの一流紙に広告も載る。あるいは、元国際テロリストの最高幹部も、出所後は何冊も本を出しています。それも言論の自由。なのに、タイトルが気に食わないとか、煽り文句が気に食わないで抗議され、出版中止。延期や、タイトルの見直しならともかく。具体的に原著のここが問題という指摘は、見かけませんね。ヘイトのなんのと、フンワリした批判は多いのですが。

■先鋭化する左派■

ある意味で、ロシア連邦軍のウクライナ侵攻によって、すっかり権威が失墜した和製リベラルが、その失墜ゆえにより過激化・先鋭化しているのでしょう。昨年は、WBPCグループの問題が指摘され、奇跡のタイミングでイーロン・マスクのTwitter買収と数々の改革で、まるでドミノ倒しのように左派の権威が失墜していきましたから。それだけに、今秋のKADOKAWAの弱腰ぶりは、残念ですね。経営陣に物議を醸してなんぼという、覚悟がなかった、ということでしょう。今回の件に対する、識者の意見を、転載しておきます。

KADOKAWAの書籍発刊中止について、まずは書籍の内容が全く分からないから評価のしようがなかった。
Irreversible Damageという原題からすると、未成年に不可逆的な措置をするのは慎重にするべきだよなとは思う。

私がおかしいと感じたのは、出版中止要求に、具体的な理由がほぼ書いていないことだ。

https://x.com/kyoshimine/status/1732272978472366281?s=20

KADOKAWAの新刊書籍をLGBTQ+思想活動家が出版中止に追い込んだ件。

SNSでの炎上、左巻き書店員の抗議、左巻き作家が作品を引き上げると脅し、本社前での抗議行動。

これ、杉田水脈氏の生産性問題でオピニオン誌「新潮45」を休刊にさせた成功体験の完全な再現。

今週土曜のスペースで取り上げる。

https://x.com/itaru1964/status/1732173745043943735?s=20

まさに、過去の成功体験にすがったのでしょう。そこにKADOKAWAが安易に屈してしまった。悪手でしたね。タブー無き言論で知られる示現舎さんが、自社で出せないかと呟いていましたが。逆にKADOKAWAがヘタれるなら、ウチで出しますよという気骨のある出版社が出る可能性もあるでしょうし。鹿砦社とか、いくつか名乗りを上げるかも知れませんし。ひょっとしたらですが、KADOKAWAが再度考え直す可能性も、ゼロではないでしょうし。そこはもうちょっと、見守りたいですけどね。

■角川の理念今昔■

KADOKAWAのルーツである角川書店を興した角川源義は、こんな言葉を残しています。角川文庫などには必ず掲載されていて、自分らの世代は中学高校の頃、作品を読み終わった後、何度も目にした文章です。角川源義自体は、愛人を作り妻妾同居の困った御仁でしたが、それはそれとして。ここには、出版文化というものに対する、角川源義の志(こころざし)が述べられています。1945年に創業した角川書店は、敗戦という日本史に残る重大な事態に向き合い、こんな言葉を残したわけです。

角川文庫発刊に際して 角川源義

 第二次世界大戦の敗北は、軍事力の敗北であった以上に、私たちの若い文化力の敗退であった。私たちの文化が戦争に対して如何(いか)に無力であり、単なるあだ花にすぎなかったかを、私たちは身を以て体験し痛感した。西洋近代文化の摂取にとって、明治以降八十年の歳月は決して短かすぎたとは言えない。にもかかわらず、近代文化の伝統を確立し、自由な批判と柔軟な良識に富む文化層として自らを形成することに私たちは失敗して来た。そしてこれは、各層への文化の普及滲透(しんとう)を任務とする出版人の責任でもあった。
 一九四五年以来、私たちは再び振出しに戻り、第一歩から踏み出すことを余儀なくされた。これは大きな不幸ではあるが、反面、これまでの混沌・未熟・歪曲の中にあった我が国の文化に秩序と確たる基礎を齎す(もたらす)ためには絶好の機会でもある。角川書店は、このような祖国の文化的危機にあたり、微力をも顧みず再建の礎石(そせき)たるべき抱負と決意とをもって出発したが、ここに創立以来の念願を果すべく角川文庫を発刊する。これまで刊行されたあらゆる全集叢書文庫類の長所と短所とを検討し、古今東西の不朽の典籍(てんせき)を、良心的編集のもとに、廉価(れんか)に、そして書架にふさわしい美本として、多くのひとびとに提供しようとする。しかし私たちは徒ら(いたずら)に百科全書的な知識のジレッタントを作ることを目的とせず、あくまで祖国の文化に秩序と再建への道を示し、この文庫を角川書店の栄ある事業として、今後永久に継続発展せしめ、学芸と教養との殿堂として大成せんことを期したい。多くの読書子(どくしょし)の愛情ある忠言と支持とによって、この希望と抱負とを完遂せしめられんことを願う。

一九四九年五月三日

そして、夏野剛社長による、現在のグループ理念。

「不易流行」は芭蕉が到達した俳句の理念ですが、角川書店の創業者・角川源義は、
その精神を自らの出版事業の根源に据え、実践しました。
新しさを極め続ければ変わらないものが見えてくる。
変化を恐れずに挑戦し続ける心がKADOKAWAスピリットです。
KADOKAWAの経営理念を「不易流行」とし、その志を未来につなげます。

https://group.kadokawa.co.jp/company/philosophy.html

どうやら、KADOKAWAには流行はあっても不易はなくなってしまったようです。出版社は世襲のところが多いんですけど。世襲議員批判もありますが、出版業を家業として受け継ぐので、目先の利益ではない50年100年のスパンの文化事業として、受け継がれるモノがあるんですよね。これが世襲の良い面。電子書籍に反対する役員を抑え込んで、舵を切った講談社野間家の若旦那とか。でも、角川書店は巨大化しKADOKAWAになり、結果的に角川源義の孫の世代には継承されず、名前だけが残った感じに。残念です。信念や理念がないとこうなる、という例として、記憶しましょう。

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