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石炭火力発電:非科学度深める朝日新聞の独善

◉朝日新聞の社説で、石炭火力発電を批判しています。最も内容は、典型的なバスに乗り遅れるな論ですが。そもそも欧州とか、エネルギー問題では偽善や建前論がまかり通り、イザとなればルール変更や手のひら返しをするのが、目に見えていますからね。これはドイツの、迷走するエネルギー政策などが典型例なんですが。脱原発とか、理念だけが先走り、国内の原子力発電所は運転停止したけれど、お隣のフランスから主に原子力発電所で発電した電力を買うとか、羊頭狗肉ですし。

【(社説)石炭火力発電 孤立深める日本の独善】朝日新聞

 主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合が、石炭火力発電の廃止年限を盛り込んだ共同声明を出した。だが、日本はアンモニアを混ぜて燃やす石炭火力などは対象外と主張し、世界の流れから孤立を深めている。政策転換を急がなければ、将来の傷口を広げかねない。

 G7は、温室効果ガスの削減対策がない石炭火力を、2030年代前半あるいは産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えられる時間軸で廃止すると合意した。温暖化の影響は深刻化しており、評価できる内容だ。

https://www.asahi.com/articles/DA3S15931127.html

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。

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■エビデンス? ねーよ■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。朝日新聞は一貫して、火力発電所と二酸化炭素を排出を過剰に批判し続けてきました。残念ながら、その批判自体は、これがかつて科学朝日を発行していた出版社の親会社かと、呆れるほど非科学的です。毎回、日本が化石賞をもらったと記事にして騒ぎますが、これなども、国境なき記者団の報道の自由度ランキングなるものと同じで、客観性が疑わしいものを針小棒大に騒ぐ、いつものパターンです。

二酸化炭素の排出量を減らすこと自体には、自分も反対しませんが、それは科学的な根拠に基づいた・現実的な手段であるべきです。二酸化炭素を減らせ・火力発電所を減らせ・原子力発電所も減らせ、いやなくせ、代替電源については知らない・再生可能エネルギーでなんとかなるはず・科学的エビデンスはない、ではお話になりません。なお、化石賞に関する批判は、こちらのnoteを参照してください。

■日本の石炭火力発電■

日本は石炭火力発電の研究はかなり進んでいて、世界でもトップクラス。二酸化炭素の回収技術や、硫化 化合物など有害な物質を減らす技術など、かなり研究が進んでいます。ガスタービン・コンバインドサイクル発電(GTCC:Gas Turbine Combined Cycle)では、ガスタービンを回して生まれた排気熱を利用して、蒸気タービンも回すという、一粒で二度美味しいシステムもあります。近年はアンモニア混焼などの研究も進んでいます。

日本が、アンモニアを混ぜて燃やす石炭火力などは対象外と主張するのは当然で、日本の優れた技術による火力発電所の輸出を、環境保護の名目で妨害しようとする口実とさえ、疑いでしまいます。極端な話、世界最大の二酸化炭素を排出国である中国の火力発電所を、日本の最新型の火力発電技術を導入したものに変えれば、二酸化炭素の排出量は激減するとさえ言われています。むしろ 世界の方が、日本に追いつくべき事案でしょうに。

動物愛護運動などもそうですが、欧米がヒステリックなことを言い出したら、非科学的な感情論である可能性が高いので、安易に賛同しない・距離を置くのは、経験からくる知恵と言っていいでしょう。いわんや、朝日新聞がバスに乗り遅れるな……などと言い出したら、いったん立ち止まって、周囲を見回し、物事を俯瞰し、そこに政治的な意図がないかを疑い、科学的な根拠を求めるのが、むしろ推奨される態度ではないでしょうかね? 振り込め詐欺対策と似ていますが。

■立ち止まる良識を■

石炭に関して言えば、世界中で採掘され、石油のように 算出地域が偏ってもおらず。確認埋蔵量も豊富で、個人的にはむしろ有望な化石燃料だと思っています。より安全性が高い第四世代原子炉のひとつである高温ガス炉の、高熱を利用した石炭液化の研究も進んでいますし。火力発電所の燃料をも、石油・石炭・天然ガス・水素・アンモニアなど、多様性があるべきです。エネルギーの安全保障の面から言っても。

一口に石炭と言っても、実際は無煙炭から泥炭まで、品質によって色々なランクに分けられます。

 ・無煙炭(anthracite)
 ・半無煙炭(semianthracite)
 ・瀝青炭(bituminous coal)
 ・亜瀝青炭(subbituminous coal)
 ・褐炭(brown coal)
 ・亜炭(lignite)
 ・泥炭(peat)

年代の呼び名にもなっている石炭紀の昔から、地球が何億年もかけて蓄積してきた、重要な化石燃料です。日本では一般に、無煙炭から褐炭までを、石炭と呼びます。世界の石炭の、可採埋蔵量1万0350億トンの内、低品質石炭は約3分も1を占めるので、これらから水素を取り出して利用する、という研究もあります。科学は日進月歩で、技術も更新されています。どうにもリベラルな方々は、現在の科学技術が永遠に更新されないかのような前提で、エネルギー問題を語りがちですが。興味がある方はこちらのnoteも参照してください。

日本のエネルギー資源は、ごくわずかな量の石油と、品質がそれほど良くない上に採掘のコストがかかる石炭、本格的な採掘には至っていない天然ガス、将来的にはともかく現時点では利用できないメタンハイドレートなど。なのでエネルギーの多くを、外国からの輸入に頼っています。このnoteでは、エネルギー問題について、色々な情報を紹介しています。戦前の日本が無謀な対米開戦に踏み切ったのも、エネルギー問題が根本にありましたから。あまり人気はありませんが、軽視していい問題ではありません。しかし、語るなら科学的に。その意味で朝日新聞の態度は、是認できません。


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