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脱原発・脱石炭を急いだ欧州が直面する危機

◉環境保護は大事。ここは自分も動きません。それは、自分たちの世代だけでなく、未来にも繋がる部分で、責任が生じると思います。しかし、そこに非科学的なイデオロギーが入ってくると、それはむしろ自然環境に対して有害になるのではないか、という思いがあります。実際、欧米の環境保護は目先の現象に対処しようとして、かえって全体のバランスを損なうものが少なくない印象。脱石炭・脱原発にも、政治的イデオロギーがつきまといます。

【電気代がどんどん高く…「脱原発・脱石炭」を急いだ欧州が直面している“重大危機”】SankeiBiz

■高騰するエネルギー価格
 ヨーロッパで今、エネルギー危機が起きている。欧州連合(EU)27カ国のエネルギー価格は8月、消費者物価ベースで前年比+11.0%まで上昇が加速した(図表1)。先行指標となる卸売物価ベースのエネルギー価格はさらに強いピッチで上昇が加速しており、歯止めは一向にかかりそうにない。一体なぜ、こうした状況に陥ったのだろうか。
 まずは急速な景気の回復に伴い、エネルギー需要が急増したことがある。4-6月期の実質GDP(国内総生産)は前期比+2.1%と、いわゆる「行動制限」が緩和されたことに伴って力強い成長を記録した。7-9月期以降、景気の回復テンポは鈍化すると予想されるが、こうした景気の急回復がエネルギー需要の急増につながった側面は大きい。

ヘッダーのイラストはnoteのフォトギャラリーより、福島第二原発だそうです。

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■ガスタービン・コンバインドサイクル発電■

例えば、ガスタービン・コンバインドサイクル発電(GTCC:Gas Turbine Combined Cycle)。日本はこの方面での研究が進んでいて、火力発電でもかなりの高効率が期待できます。ガスタービンを回して生まれた排気熱を利用して、蒸気タービンも回すという、一粒で二度美味しいシステム。日本のウィキペディア先生によれば、天然ガスを用いた西名古屋火力発電所について、こんな形で説明されています。燃料を無駄なく使えるんですから、これは地球温暖化に対しても有効です。

ガスタービンを回した後の排気は500~600℃程度と高温であることから、ガスタービン排気の熱を回収する排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)を下流に設置し、蒸気を作って蒸気タービンを駆動させる。ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせることにより、発電端熱効率を50-60%程度(LHV)にまで高めており、日本の西名古屋火力発電所で世界最高効率である63%(LHV)を達成している。

で、ガスタービン・コンバインドサイクル発電は石炭を燃料とした、石炭ガス化複合発電(IGCC)についても、有効なようで。こちらも、ウィキペディア先生の説明がわかりやすいです。こういう優れた研究があり、これを二酸化炭素を多く生み出す中国(全世界の28.4%)やアメリカ(同14.7%)やインド(同9.6%)が採用すれば、二酸化炭素排出量はグッと減らせるわけで。日本(同3.2%)やドイツ(同2.1%)が二酸化炭素排出ゼロにしても、微々たるものです。

燃料のガス化とコンバインドサイクル発電を組み合わせた発電形式を石炭ガス化複合発電 (IGCC[13]) と呼ぶ。低質な石炭や重質油、廃棄物などは硫黄や塩素、重金属を含むことがあり、そのまま燃焼させて発電を行うとその環境負荷物質が大気中に排出されて問題となる。ガス化複合発電では、燃料をガス化したときにそれらの不純物を除去することができ、そうして生成したクリーンなガスを用いて発電を行うことで、環境負荷物質の少ない発電を行うことができる。また、従来の方式に比べて二酸化炭素排出量を削減することができ、石炭を燃料とした発電で石油発電並の二酸化炭素排出量を達成することができる。

■第四世代原子炉■

現実には、石炭は無煙炭から褐炭や亜炭、泥炭までいろんな種類がありますが。比較的安定した埋蔵量がある化石燃料のひとつなのは確か。であるならば、これの仕様を頭ごなしにやめろというのは、理念先行で現実を見ていませんね。なのに、脱石炭火力発電などとなると、現実にとって有効な研究や技術まで適しされるわけです。これって、大洗町のHTTR(高温工学試験研究炉)を止めてしまった、有能でない方の菅総理と同じですよね?

HTTRはメルトダウンしづらい構造の第四世代の原子炉で、冷却材としてヘリウムを利用した黒鉛減速ガス冷却炉です。高温ガス炉のひとつで、950℃のガスを生み出し、これを利用した原子力製鉄に加え、熱化学水素製造や石炭の液化も期待されていたのですが……10年も研究が止まってしまいました。結果、日本より低い温度しか達成できていなかった中国は今年、商用実証炉が臨界に達しました。アメリカは2029年に商用路が稼働予定。自然破壊に貢献したのは誰ですか?

■理想に殉じられないのが大衆■

そもそも、メルケル首相のドイツの脱原発というのが、隣国のフランスの原子力発電に支えられた、偽善的なものですからね。地図を見ればわかりますが、ドイツって思った以上に北の方にあって、だいたい樺太ぐらいの地理だと思えば近いです。実際は、樺太よりもさらに北に最北端があります。こういう高緯度地域はめったに台風も来ず、偏西風が安定して吹いている地域ですから、風力発電に向くんですよね。それでもなお、原発由来の電力に頼らねばならない。

欧米でも、まともな環境保護活動家は原子力発電推進なんですが、ある種の人達にはそれが通用しない現状があります。日本では、名作『はだしのゲン』が原子爆弾と放射線障害の恐ろしさを植え付けたため、ある種の穢れとして放射性物質を理解してしまってる人たちが、呪術的・宗教的に忌避していますが。けっきょく、コストというのは現実についてまわるわけです。苛政は虎より猛し。コストは理想より重し。そろそろ、現実的な議論が必要でしょう。

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