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アンモニアの常温合成で二酸化炭素排出量も半減

◉出光興産と東京大学が、常温・常圧下で二酸化炭素の排出量を半減できる、アンモニアの新たな製造方法を確立と発表したとのこと。このnoteでは何度も言及していますがアンモニアは、火力発電の燃料として、混焼できるんですよね。さらに水素を安全な形で運搬する、水素キャリアとしても有能。言うまでもなく、化学肥料の材料としても有用。コレは大きなニュースです。

【出光と東大、アンモニア製造時のCO2半減 常温で合成】日経新聞

出光興産は4日、東京大学などと組んでアンモニアの新たな製造方法を確立したと発表した。常温・常圧下で水素と窒素を合成することで、現在の手法に比べて二酸化炭素(CO2)の排出量を半減できる。基礎研究を続け、2032年度に年間1000トンの生産量につなげる。

現在主流のハーバー・ボッシュ法は水素と窒素を高温・高圧下で反応させるため、製造時にCO2が出る。出光などは金属元素「モリブデン」を使った特殊な触媒を開発し、常温・常圧の環境でもアンモニアを生み出せるようにした。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC023ZT0S4A700C2000000/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、アンモナイトの写真です。なぜアンモナイトか? アンモニアもアンモナイトも語源が近いから、です。

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■常温・常圧の意味■

詳しくは、上記リンク先の全文を、ぜひお読みいただくとして。従来のハーバー・ボッシュ法も、アンモニアを合成する手法としては画期的で、1906年に発表されました。この技術が開発されたおかげで、化学肥料が安価に大量に生産できるようになり、人類の食料生産に与えた影響は大きいです。でも、鉄を主体とした触媒上で水素と窒素を 400〜600 °C、200〜1000atmの超臨界流体状態で、直接反応させアンモニアを生産する方法ですから。

ひとたび事故が起きると、その高温高圧の環境ゆえ、かなり危険なことに。日本ではあまり聞きませんが、海外の化学肥料工場での爆発事故とか、多くがアンモニアの製造工場だったりしますからね。なので今回の技術が、常温・常圧でも可能というのは、とんでもなく画期的な技術であると、自分のような素人でも理解できます。しかも、合成時の二酸化炭素の発生量が、半減するとのこと。こちらも科学的な仕組みは分かりませんが、二酸化炭素による地球温暖化が叫ばれる現在、環境にも優しい技術というのは大きいです。

■100万トン生産計画■

化学肥料や化学調味料という言葉に、過剰反応する人がいますが、両方とも危険なものではありません。むしろ それを使用することで農業では安定した作物の収穫が、料理では季節によって変化する素材の旨味成分の変化を補ってくれるわけですから。農業において、窒素リン酸カリウムは、非常に重要な養分。化学肥料の発達が人類の食料生産を増やし、寿命を延ばし、豊かな社会を作り上げたことは、動かしがたい事実ですから。安易に文明を否定する言説には、賛同できません。

徳山事業所(山口県周南市)で30年までにアンモニアを年間100万トン超供給する体制を整える。海外からの輸入のほか、この新技術を使った自前での生産も視野に入れる。

年間100万トンという数字が、どれぐらいの規模なのか、ピンときませんが。検索してみると、日本の2021 年度のアンモニア消費量(国内生産量+輸入量)は、約 106万トンとのこと。つまり国内消費量を全部、純国産で賄えるレベルの、大規模事業ということですね。山口県周南市の徳山事業所だけでそれを可能にするとしたら、これはもう日本はアンモニア輸入国から輸出国へ、転身できるレベルですね。こちらの方も日本の新しい事業として期待したいところです。

アンモニア自体は、燃えにくいですが可燃性があり、火力発電所の燃料としても有能。もちろん、混焼しての燃料で、補助的ですが。昔からある物質ですが、だからこそ安定していて、運用できるかな、と。期待したいですね。

■モリブデンと南鳥島■

ちょっと気になるのは、触媒にモリブデンを使うことですね。モリブデンはレアメタルで、算出する地域が偏っていて、世界最大の産出国は中国なのですが。それ以外の地域だと、アメリカやメキシコやチリなど、南北アメリカ大陸にかなり偏っているんですよね。こうなると、またその中国が輸出規制だなんだと、政治的な駆け引きに使ってきそうです。そういう意味では、岸田政権が南米との貿易などで、外交関係強化するのも、必然ではあるのですが。

ただ、南鳥島の排他的経済水域の海底にあるマンガンノジュールは、コバルトリッチクラストと共通の鉱物学的・化学的特徴を持っており、コバルトやニッケルなどに加えて、モリブデンも含まれているんですよね。そういう意味では、世界6位の広大な 排他的経済水域の、深海 開発 というのは日本に残された、大きな可能性でもあるんですよね。メタンハイドレートの回収技術なども含めて、海底開発技術の発展にも、期待したいです。


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