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映画業界の傲慢

◉X(旧Twitter)で、こんなポストが流れてきました。典型的な映画ドラマ業界(実写映像業界)の傲慢、というか元ポスト主はテレビ業界の人のようですが。どうしてこう、ナチュラルにアニメをバカに出来るんでしょうね。いや本人には、馬鹿にしているという自覚もないでしょう。選民思想というのは、得てしてそんなものですから。

「映画館はアニメのおかげで生き延びている」というのは、決して間違いではないが、もしアニメがなかったら、製作側も興行側も、アニメ以外の作品を企画し製作しヒットさせているだろうな…とも思う。

実際、過去の映画館を生き延びさせていたのは、出版社やテレビ局が製作してマルチメディア商法で売り込んだ実写大作だった。金田一シリーズ、『復活の日』『南極物語』『敦煌』『子猫物語』そして『踊る大捜査線』シリーズなど…

今は大きな流れとして、それがアニメになっているということで、アニメ自体が何か特別偉いわけでもクソなわけでもない。問題は「上映されているのがそればかりになり、一将功成りて万骨枯る状態になる」というただその一点。映画館は生き延びても、それと引き換えに実写映画の製作体制が死ぬ可能性はある。

とは言え、実写映画が減ってアニメ映画が増えるのは、これから避けられない全世界的傾向だろうとも思っている。

https://x.com/masato009/status/1782644672437043409

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、メイプル楓さんのイラストです。

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■典型的な選択肢の限定論?■

典型的な、「魚から水を奪ったら肺呼吸を始めるだろう」理論ですね。いやいや、鹿児島の片田舎でも30年以上前の時点で、邦画界に見切りを付けて、アメリカで映画を学ぼうと、南カリフォルニア大学の映画学科に行った人間がいます。日本の映画やドラマが、映像作家には厳しい状況だと自覚がなく、アニメがなければウチに才能が来たのにと言う、傲慢な意見です。ある意味で制作と発表を独占する、寡占業界の典型的な発想ですが。これに対する的確な引用ポストが、こちらでした。

「もしアニメがなかったら、製作側も興行側も、アニメ以外の作品を企画し製作しヒットさせているだろう」←コレはたぶんナイ。日本映画界が潰れる寸前まで行って角川の宣伝戦略とアニメ映画で盛り返したワケだから角川とアニメ映画がなかったらマジで日本映画界は壊滅に近い状況になった可能性がある。

https://x.com/hoshinoruri16/status/17826767719614

邦画業界派でも、業界はでも、角川映画を商業主義と馬鹿にし、アニメをジャリ向けと馬鹿にしていたわけで。その結果が、漫画やラノベ、ゲーム原作に頼った、現在のていたらくです。いちおう、テレビはまだしも予算の関係でオリジナルが創れるので、テレビ発のヒット作もありますが。それでも、他業界の才能に頼ってるのは、動かしがたいです。

■女性が活躍できない映画界■

藤子F先生が、手塚先生のせいで本来は映画界に行くべき才能が、漫画界に来てしまった…と語っておられました。さいとう・たかを先生も、手塚先生の作品を読んで「ペンと紙で映画が作れる」と、漫画家になられたわけで。実際、女性漫画家にも映画監督になりたかった人はいたのですけど、当時は女性監督は皆無。どうやったら監督になれるかもわからず。なれても三十路過ぎが当然。ところが、24年組とか中学・高校でデビューし、次々とヒット作を描いてたので、人材が流れた面があります。

アニメ界も、東映動画は学歴差別があったようですけれど。虫プロは実力主義で、アニメ業界の女性比率は、映画業界より高いんですよね。世界の映画界の平均より、さらに低い女性監督しかいない邦画界は、人口の半分の才能を、ないがしろにしてきたのです。その事実をまず認め、自分たちがドブ川のような環境を変えるために何をやってきたか、虚心坦懐に反省すべきでは?

その自覚もなく、アニメ業界を敵視し、漫画やラノベ原作に頼りながら、有名脚本家が原作付き作品をバカにする。まさに、今日の状況を招いた理由を、映画業界は解っていないようです。一斉を風靡した浪曲界が、次の才能を育てる努力を怠って、凋落したように。どんな業界もヒット作や名人を作るだけでは駄目で、次世代に繋いでいかないと、そのジャンル自体が衰退します。落語界は、落語界全体で弟子を育てるシステムが有ったので、生き残りましたが。若き才能を育てたり抜擢するシステムがないのですから、それは才能も集まりませんよね。

■昔は良かった・昔に戻そう■

そういえば、新日本プロレスがブシロードに買収される前、プロレス関係者が、「昔のようにゴールデンタイムにテレビ放送されれば、またプロレス人気が復活する」と語っていたとか。プチ鹿島氏が東京ポッド許可局内でも、批判されていましたが、深夜ですら視聴率が取れないのに、どうやってゴールデンタイムに復活するんだ、と。正に絵に描いた餅。最初のポストとも相通じる、脳天気さを感じますね。そして、時代の変化に対応できていない、周回遅れ感。

ブシロードは、そこを脱却するために、新しいメディアであるYouTubeに試合を流し、逆に海外のファンを獲得し、昭和の活字プロレスファンを切り捨て、会場に足を運ぶファンを大切にし、復活を遂げたわけで。自分が、dada氏の「昔は良かった」論法に与しないのは、そんな過去を懐かしんでも、全盛期は戻ってこないから、です。全共闘老人の学生運動自慢と同じ、非建設的な繰り言ですから。こんなこと言ってる上に、日本版CNCとか言ってる邦画界・テレビドラマ業界は、浮上の目はしばらくなさそうです。


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