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エネルギー関連:核融合とアンモニア

◉エネルギー関連で、新しい話題が出てきたので、二つほどまとめて。アメリカのローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の研究チームが昨年、核融合炉の燃料から投入を上回るエネルギーが出力される状態を初めて達成したと発表したように。核融合に関しては大きなマイルストーンが達成されましたから。それとは真逆に、昔からあるアンモニアを燃焼させる発電についても。

【筑波大に核融合研究の新装置。主要部品の開発に挑む】ニュースイッチ

 筑波大学プラズマ研究センターは夢のエネルギー「核融合発電」の実現に貢献する世界最大のタンデムミラー型プラズマ閉じ込め装置「GAMMA 10/PDX」(ガンマ10)を運用する。核融合反応に不可欠な超高温のプラズマの持続方法などを検証する装置だ。核融合発電を実証する原型炉は経済性の観点からトカマク型という、ドーナツ状にプラズマを生成する装置の採用が有力視されているが、ガンマ10が採用し、強い磁場の対によってプラズマを閉じ込める「ミラー型」は構造が簡単なため、各国で研究に用いられてきた。主要部品の一つ「ダイバータ」開発への応用も期待される。同研究センターはダイバータ開発に向けて、このほど新装置の運転を始めた。

https://newswitch.jp/p/35445

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、筑波大学の嘉納治五郎先生像だそうです。

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■核融合発電の概要■

Twitterではよく、地震兵器関連でネタにされる筑波大学ですが。それだけ国内では最先端の研究をしている大学でもあります。日本原子力研究開発機構が茨城県の東海村にあり、高温工学試験研究炉(HTTR)もガールズ&パンツァーで知られるようになった茨城県大洗町にあり、一時的な関係もあって共同研究や調査もよくやっています。核融合の話題が盛り上がれば、名前が出てくるのは必然的ではあります。

ミラー型はコイルを二つ並べ、閉じ込め磁場を作る単純な構造のため、核融合研究では古くから利用されてきた。ただ、端部からプラズマが損失する点とプラズマが不安定になる点が課題だ。これを解消したタンデムミラー型はコイル形状を工夫してプラズマを安定させ、両端の電位を高くし損失を少なくする。鏡のように端部の電位の壁によって、損失を中央に跳ね返し、プラズマの閉じ込め性能を高める。

ううむ、文系人間にはヨウワカランです。核融合では、燃料となる水素(三重水素)の温度を上げて1万度以上の超高温にすると、原子の中の原子核と電子が分離して勝手に動くようになります。この状態をプラズマと呼びます。核融合反応が起きるよう原子核同士を近づけるためには、1億度以上の温度が必要です。しかし、こんな超高温を閉じ込める容器は存在しません。そこで、プラズマを利用して閉じ込めて、熱を得ます。

■残り物には福がある?■

現在の研究では、この核融合炉にレーザー光線を照射することで、なかなか達成できなかった1億度以上の温度を達成。自分が小学生の頃は1秒以上を閉じ込めることができれば核融合ができる、なんて科学雑誌に書かれていた記憶がありますが。その当時は0.1秒ぐらいしか閉じ込められなかったようで。プラズマが約1億度以上の温度になり、1立方センチメートル中に分離した原子核の数が100兆個以上あり、さらに閉じこめ時間が1秒以上あると、核融合反応が起きるとされます。

ローレンス・リバモア国立研究所の成果は素晴らしいのですが、どうもレーザーを使っての核融合は、再現度にばらつきがあるようで。ここの安定性を高める研究を大阪大学が進めており、筑波大学はそのための容器の研究の方を進めている。最新型のトカマク型核融合炉よりも構造が単純なミラー型核融合炉ですが、意外と古いタイプの核融合炉に、新たな可能性が生まれるとしたら興味深いですね。残り物には福がある、となればいいのですが。

■アンモニアは次世代燃料■

次はアンモニアの話題。IHIは昔は石川島播磨重工の名前で知られた、戦前からある日本を代表する企業。三菱重工業や川崎重工業と並ぶ、伝統のある企業ですが。元々は船舶の製造で知られた会社ですが。近年だと、戦闘機のエンジン開発でも名を馳せていますが。イギリスのロールスロイス社が、高級車の代名詞の会社であると同時に、ジェットエンジンや原子力発電所などの企業としても有名なように。それに近い部分はありますね。

アメリカのゼネラルエレクトリック社も、トーマス・エジソンが作った電気事業関連の会社として有名ですが。日本のホンダと提携して、ホンダジェットのエンジン開発に協力するなど、航空機のエンジン開発やタービンなど発電関係でも有名な、世界屈指のコングロマリットです。ジェットエンジンの開発特化発電用のタービン、原子炉夢発電の研究となると、それぐらい伝統と蓄積がある、大きな会社じゃないと難しいのでしょう。

【IHIとGE提携 次世代燃料アンモニア、アジアに照準】日経新聞

IHIと米ゼネラル・エレクトリック(GE)は18日、二酸化炭素を燃焼時に出さないアンモニアを燃料に発電するガスタービン開発で提携すると発表した。IHIのアンモニア燃料のノウハウとタービン世界大手GEの技術を持ち寄り、火力発電所などでアンモニアだけで発電できる技術を開発する。火力発電所が多く代替需要が大きいアジアで、火力発電の燃料転換を図るという脱炭素「移行期」の需要を取り込む。

「日本企業とのパ...

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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC17BDM0X10C23A1000000/

■アンモニアの利点■

アンモニアと言うと、オシッコの臭いがアンモニア臭と言われますが。実際には哺乳類のオシッコは、尿素なんですけれどね。生物は体内で生まれたアンモニアを、尿酸か尿素で体外に排出する事が多いです。爬虫類と鳥類は尿酸で排出し、両生類と哺乳類は尿素で排出します。ちなみに魚類は、サメなどの軟骨魚類は尿素で排出し、マグロなどの硬骨魚類はアンモニアで排出するそうです。進化の歴史を考えるとなかなか興味深いですね。

アンモニアの語源は、古代エジプトのアモン神殿の近くで、アンモニア塩が産出していたからとか。それぐらい、人類とは古くからの付き合い。農業での化学肥料の原料にもなったりして、人類にとっては非常に重要な存在ですが。化学式だとNH3で、水のH2Oよりも多くの水素分子があります。水素は液体にするためにはかなりの低温(−252.87 °C以下)にしないといけませんから、アンモニアは常温の水素キャリアーとしても、優秀です。

もちろんもやしば燃焼しますが、温度が思ったより低いのと不安定な弱点がありますので。他の燃料と混ぜて混焼するのが一般的。日本はそちらの研究も意外と進んでおり、今回のGEとの提携もその流れ。何度も書いていますが、たとえ核融合発電が現実のものになったとしても、火力発電や水力発電は今後も重要な発電方法として生き残るでしょう。まだ実現の目処が立たない核融合発電よりも、現実的なアンモニアを使った火力発電を研究するのは、理にかなっていますからね。

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