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日本アニメの熱狂と混沌

◉海外向けのコンテンツとして、日本のアニメはかなりの強みを見せていますね。『雀の戸締まり』とか、日本国内の興行収入よりも、中国国内のほうが上回ったり。アニメーターを志す中国人留学生と、数百人接した経験から言えば、映画館とかコロナ前はドンドン建設されていて、中国のコンテンツビジネスの状況は、かなり前から肌身で感じています。でもこの盛況も、時代の徒花にならないように、気をつけたいです。

【世界で荒稼ぎする「日本アニメ」熱狂と混沌の今 インドや中東にも商機、潜在市場は34兆?】東洋経済オンライン

 4月末、大ヒットアニメ映画『すずめの戸締まり』を手がけたコミックス・ウェーブ・フィルムの角南一城常務は、新海誠監督と韓国・金浦(キンポ)国際空港に降り立った。

 約2カ月にわたり、9カ国・13都市を巡った上映などのワールドツアーも最終盤。平日の昼間にもかかわらずボディーガードが必要なほどの新海監督への出待ちを見届け、ソウル市内に入った。

 新海監督のサイン会を開催するために訪れたのが、日本でもおなじみのアニメ専門店・アニメイト。10年ほど前に訪れた別のアニメイトの海外店舗のように、「オタク」なファンが集っている雰囲気を想像していた角南常務は、広がる景色に衝撃を受けた。

https://toyokeizai.net/articles/-/673641

ヘッダーはMANZEMIのロゴより、平田弘史先生の揮毫です。

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■体力軽視の日本?■

日本の場合、例えばバレーボールでは回転レシーブやクイック、時間差攻撃など、画期的な技術を開発して、世界のトップレベルになったんですが。相手に研究されると、基礎体力軽視・技術偏重の悪癖が出て、追い抜かれる。これはゼロ戦も同じで、その圧倒的な航続能力と旋回性能で、当初は恐怖されたんですが。防御軽視の人命軽視の機体構造と、エンジンパワーの徹底的な弱さ、燃料のレベルの低さがバレると、簡単に撃墜されるようになってしまったわけで。「日本は世界一~!」的な国粋主義を、自分が嫌う理由です。確かに、人種的な筋力の限界はありますが、でも頑張れは8割ぐらいには縮められるのに、6割で放置していますからね。

ピクサーのアニメーターたちが良い給料をもらってるのに、同じレベルの日本のアニメーターは、口を開けば貧乏自慢になっていますしね。でも、何が問題でどうやって改善するかの具体案はなかなか聞かれず、愚痴と犯人探しばかり。ロマンチストはいっぱいいても、経営のプロがほとんどいないから、そうなるわけで。これは、漫画業界も同じですけどね。新興のゲーム業界は、まだしも金が回っていますが。ここらへんは、御家大事の一所懸命(一生懸命の語源)の、村社会の論理なんですが。これに共産趣味がミックスされ、しわ寄せが末端に来るいつもの構造。

日本のアニメ産業の市場規模は2010年代の序盤まで1兆3000億円程度で停滞していた。
潮目を変えたのが動画配信の普及だ。米国のネットフリックスやアマゾン、アニメ専門のクランチロールなど、続々と日本アニメを買い付けるプレーヤーが台頭。全世界でタイムラグなく日本の人気アニメが伝播するようになった。

動画配信の神風が吹きましたが、Netflixはアメリカ方式で、権利を全部よこせですから、制作費が2倍3倍出ても、そりゃあ大ヒットの見込めるコンテンツは、渡しませんよね。スタジの運転資金という基礎体力がないから、自転車操業になるのですから。まずはそこから変えていくビジネスモデル構築が、日本では大事でしょう。

■世界の前に国内を■

日本とアメリカでは、映画の文化と伝統が違いますからね。2021年の世界の興行収入の合算が213億ドルで、1位は中国で73億ドルと巨大市場です。北米の映画市場は45億ドルと2位に甘んじていますが、コロナ前の2019年は114億ドルと、やはり巨大市場です。北米と中国でヒットすることが、国債戦力的には重要。ただ、日本の映画興行市場は前年の15億ドルで世界3位。4位と5位のイギリスとフランスが各8億ドルですから、日本国内はけして小さな市場ではないので。まずは富士山に登ってからエベレストやデナリ山を目指すべきでしょう。

続いて『劇場版 呪術廻戦 0』も海外興行収入が100億円を突破すると、海外の関係者も一層「次の日本アニメは何だ」と関心を強めていく。こうした連続ヒットのさなか、『すずめの戸締まり』ではソニー・ピクチャーズが共同配給の一員に加わり、念願の米メジャースタジオによる配給が実現。竹田氏は「営業を始めた頃には、米メジャースタジオと関係を築ける日は来ないと思っていた。アニメがその状況を覆した」と語る。

黒澤明監督や小津安二郎監督、溝口健二監督らが名作を作り。三隅研次監督や本多猪四郎監督らが傑作を作り。そんな時代に近づいてきましたね。ただ、海外はアニメを一段低く見る部分が、一般大衆レベルであるのも事実です。もちろんこれは、イスラエルのアリ・フォルマン監督の『戦場でワルツを』のようなドキュメンタリー作品をアニメで表現すると言ったような形で、表現のひとつとして偏見がない世代も育っているので。逆に、そういう監督が海外で増えると、日本は対抗できないかもしれませんね。

江戸時代、最高の脚本家であった近松門左衛門が、当時も最高の娯楽であった歌舞伎ではなく、人形浄瑠璃に拘ったのは、生身の人間では表現できない部分を、人形に求めたのでしょうし。役者の属人性から開放され、理想の容姿・理想の声・理想の仕草で表現できる人形浄瑠璃は、あの時代のアニメと煮たポジション。もし近松門左衛門が現代にいたら、アニメの脚本を書いた可能性が高いですね。

■映画界の構造問題■

製作委員会の問題点は、各方面が批判していますが。でも、リスクを回避したら利益も低いのは当然。ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンは世の常です。漫画やラノベやゲームのヒット作を映画化するのだって、リスク回避ですからね。けっきょく、構造的な問題を解決せず、「日本版CNCを!」とか、雨漏りを直さずバケツの数を増やそうって了見です。だいたい、そんな者設立してもどの作品にいくら配分するのか、絶対に利権化しますから。だいたい、そんな配分する金があるなら、漫画やラノベ原作作品の原作量を増やすのが、先だろうがと思います。

一方、長年にわたり解消されないのが、「製作委員会」などアニメの企画に出資する側と、その委託でアニメを制作するスタジオ側との不釣り合いな収益分配だ。
後者は実際の「作り手」だが、多くは潤沢といえない予算で仕事を請け負うだけの中小企業だ。著作権も、制作スタジオではなく製作委員会側が持つ。スタジオ側の市場規模は3000億円に満たず、業界への貢献度に見合った分配がなされているとは言いがたい。

2021年公開の邦画490本(前年506本)で、邦画の興行収入は1283億3900万円とのこと。興収10億円以上の作品はわずか32本(前年21本)で、32作品の興収総計は898億9000万円です。つまり邦画全体の93.4%が興収10億円以下の作品で、わずか上位6.6%の32作品で全興収の約70%を占めており、さらにトップの3作品で約19%を稼ぐ状況です。さらにその32本中19本が、アニメか漫画や小説原作作品です。今年はスーパーマリオの映画が世界的大ヒット中で、もう漫画やアニメやラノベやゲームに日本映画はかなりの部分を依存しているのは事実です。

■競争原理と仕掛け■

昨日のnoteでも書きましたが、3000万円のテレビアニメ1話の予算で、原作量はわずか20万円。小説や漫画は、筆一本でなんとかなるので、確かにリスクは低いです。でも、だったら映画界は日本版CNCなんて補助金チューチュースキームを構築するより、その金で映画原作に足り得る小説や脚本や漫画を募集して、1000万円の賞金を5本から10本用意するだけで、違うと思いますよ? そう、京都アニメーション大賞を、映画界全体でやればいいんですよ。ただし、審査委員はいていいですが、ちゃんと観客の淘汰という洗礼を、受けるべきでしょう。

それこそ、応募作は最終選考作20本なり30本は全部書籍化して、読者に人気投票で生存競争させればいいぐらいで。2億円もあれば、それぐらい出来るのに、興収10億円行かない監督や脚本に、日本版CNCとか何十億と回す気満々ですから。バカじゃねぇのとしか思いません。結果的に、映画化の権利を勝ち取るのは、現役の脚本家の可能性があります。でもいいんです。そうやって脚本家は才能に見合ったか評価を得られるという、可視化がされれば。そうやって選ばれた作品は、宣伝効果もあってヒットする可能性が高いですしね。何なら同じ作品を、競作させてもいいぐらいです。

なぁなぁとまぁまぁの共産趣味を捨て、シビアな観客の目の中で作品を競わせる。漫画界があたりまえにやっていることですから。京都アニメーション大賞は、たった一人の狂人のおかげで、2019年を最後に、止まっています。おかげで、漫画・小説・脚本の、世に出るべき才能が行き場を失った可能性が。ああいう狂人を出さないためにも、それこそ小説と脚本は短編部門に限定し、応募作は全部書籍化してもいいでしょう。その中で、人気投票で選ばれた上位10人が、長編用の小説や脚本を書くとか。どこかのテレビ局とタイアップしてもいいでしょうしね。日本版CNCよりよほど建設的では?

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