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京アニ放火事件から四年

◉もう4年と言うべきか、まだ4年と言うべきか。36人が亡くなり、32人が重軽傷を負った、大事件。単独犯による殺人事件としては、戦前の津山三十人殺しを大きく超え、あのオウム真理教の一連の殺人事件の、明確になった殺人の数よりも多いのですから、本当に酷い事件でした。今だから言えますが、昔の教え子がこの時期、京都アニメーションでアニメーターとして仕事をしており、当初は連絡が取れませんでしたからね。他人事ではない事件でした。創作の仕事に関わる身としても、本当に許せない事件でした。

【京アニ放火4年、現場のスタジオ跡地で追悼式…社長が犠牲者に「つくり続けることが『繋ぐ』こと、見守って」】読売新聞

 2019年7月に36人が死亡、32人が重軽傷を負った京都アニメーション放火殺人事件の発生から4年となる18日、現場の京都市伏見区の第1スタジオ跡地で追悼式が営まれた。遺族や社員ら約160人が参列し、志半ばで道を絶たれた犠牲者に祈りをささげた。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20230718-OYT1T50150/

ヘッダーは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のイラストより。

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■失われた才を惜しむ■

『小林さんちのメイドラゴン』で知られる武本康弘監督も、妻子を残して亡くなり。漫画もアニメもファンであった自分としては、ショックでしたね。アニメーターの総数は、4500人から6000人ぐらいとされます。多くは、動画万ですから、現場のトップである作画監督とか、監督にまでなるのは本当に一握りの、稀有な才能です。それが失われたのですから。全国に医師国家試験に合格して医師免許を持つ人は、約34万人います。上下優劣の話ではなく、クリエイターというのは本当に希少な才能なんです。それが、36人も失われた。日本の文化への損失です。

この県を取り上げると、犯人に同情してみせる 偽 善 者 が一定数、湧いてきます。ですが、そういう人の言葉の端々から見える人間的な薄っぺらさから、もし自分の家族や友人知人が同じ目にあっても、同じような博愛精神を発揮できるとは、とても思えませんね。おそらくは、まだPTSDに苦しむ方もいるでしょう。肥大化させた自己承認欲求をこじらせ、盗作されたと逆恨みして放火。本人は、ちょっと脅かすぐらいのつもりだったのでしょうけれど、動機のセコさは結果の重大さを免罪しません。

オウム真理教は、世界初の都市型大規模テロである地下鉄サリン事件など、日本を震撼させた一連の事件で、192人が起訴され13人の死刑が確定しました。坂本弁護士一家殺人事件では、まだ幼児だった息子さんさえ殺しています。でも犠牲者の総数は29人です。ひょっとしたら表に出ていない殺人が、もう数件あるのかもしれません。ですが、それでも本事件の犯人が殺した犠牲者の数には及ばないでしょう。犯人は、ただの愚か者だったと思います。ですが、やったことは戦後最大の凶悪事件の犠牲者より多い。この事実は、受け止めるべきでしょう。一人の愚者は狂信者集団より怖い。そして、自分もまた、その愚者の仲間入りするかもしれない、と。

■後世に残すべきこと■

弁護団としては、心神耗弱と不幸な家庭環境という、このふたつぐらいしか訴える方法はないでしょう。そこはお仕事ですから、出来うることを精一杯やってほしいと思います。ただ、犯人の死刑はよほどのことがない限り、逃れ得ないと思います。であるならば、今後彼のような自意識過剰をこじらせて暴走する人間が出ないために、こういう危ない行動に出た人間の背景を徹底的に洗い出し、それを明らかにすることで、再発予防の一助になるようにするしかないでしょうね。そして、犯人自身がこの事件にどう向き合っているかを、記録すること。でないと、意味がないです。

【京アニ放火事件4年、9月5日から被告の裁判 刑事責任能力が争点に】朝日新聞

 京都アニメーションのスタジオ(京都市伏見区)が放火され36人が亡くなった事件で、殺人や現住建造物等放火などの罪で起訴された青葉真司被告(45)の裁判員裁判は9月5日から京都地裁で始まり、来年1月25日に判決が言い渡される予定。刑事責任能力の程度が争点で、動機について被告が何を語るかが焦点になる。

 143日間に及ぶ裁判で、検察側は、被告は完全責任能力があったと主張し、弁護側は責任能力のない「心神喪失」か、著しく減退した「心神耗弱」だったと反論するとみられる。関係者によると、精神鑑定をした医師のほか、京都アニメーションの八田英明社長や、京都市消防局の職員らが証人として出廷する予定。被告人質問では、遺族らが直接質問する機会も設けられる。

https://www.asahi.com/articles/ASR7K6RSZR6XPLZB00R.html

有名なアニメスタジオとか、あるいは特撮の制作会社には、〝私の考えた素晴らしい設定〟を送り付けてくる人間がいます。ウルトラマンの制作会社とか、分厚い小包が届くそうです。で、そういうのは速攻で封も切らずに送り返すとか。絶対に、自分が送ったアイデアを盗作したとか言ってくるので。自分も、このタイプは編集者時代に何人か見ました。けして頭が悪いタイプではないのですが、何かこの現実に行きていないというか、放していても斜め上を見上げながら喋るタイプといいますか。

■盗作と騒ぐ凡庸な人■

そういう人間は自意識過剰なんですよね。自分には素晴らしい才能が隠れている、まだ発見されていないだけだと思っている。今回の犯人のようなタイプは珍しくて、実際は高学歴であったりします。でも、創作の能力はそういう5教科の優秀さでは担保されませんから。芥川龍之介や三島由紀夫のように、一校東大や学習院主席から東大のような人間が作家になるので、勘違いしやすいですが。漫画賞や小説の賞の一次審査の下読みをすればわかりますが、盗作したのかと思うぐらい似た設定やキャラクターやセリフの作品が、ゴロゴロしています。そういうのを見ると、自分がいかに凡庸な人間か、自覚できるんですが。

ある投稿者がもう典型的な、天使と死神が出てくるファンタジーを書いていて、なぜこんな作品を書いたかと聞いたら、「最終審査に残った作品に、似たアイデアの作品がなかったから」と。いや、そういう作品は全部一次審査で落とされているんだよ、という現実があるわけです。この事件の犯人も、たぶんどこかで呼んだ作品のツギハギのような、凡庸な作品を書いて京アニ大賞に応募したんでしょうね。あそこが似てるここが似てるってのは、素人がやりがちなこと。でも作品は、どんな要素が含まれるかではなく、各要素をどう組み合わせるかが大事なわけです。例えば、

・主人公は腕に武器が仕込まれている
・入れ墨の女が登場する
・敵は盗賊団
・雪原で戦う
・医者が主人公を整形
・財宝の秘密を追うロードムービー

……と書いて、どの作品を思い出しましたか? 手塚治虫先生の『どろろ』でも寺沢武一先生の『コブラ』でも、あるいは部分的には『ゴールデンカムイ』でも『無限の住人』でも通用しそうです。そう、大ヒット作でも、要素自体を取り出せば、いくらでも既存の作品と似た要素はあるのです。そういう部分を、少しでも投稿者に伝わればいいなと思い、自分も飯の種の創作の秘密を、このnoteで開陳しているんですけどね。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ


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