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エネルギー関連:核融合・潮流・バイオマス・グリーン水素

◉あまり需要はないでしょうけれど、個人的にとても重要と思っている、エネルギー問題について。日本が、事前シミュレーションで必敗と予想できた日米開戦に踏み切ったのも、エネルギー問題が原因ですからね。いくつか話題がたまったので、まとめて紹介です。まずは、核融合についての話題。

【米新興CFS、核融合で先陣 25年に小型炉稼働へ 商用発電、30年代初めに】日経新聞

核融合技術の実用化をめざす米コモンウェルス・フュージョン・システムズ(CFS)は、2025年に小型炉「SPARC」を稼働させるメドをつけた。ボブ・マンガード最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に、発電用の商用炉も「30年代初めに実現できる」と自信を見せた。

CFSは18年に米マサチューセッツ工科大学(MIT)からスピンアウトして発足した。20億ドル(約2800億円)以上の資金を集め、米ス...

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https://www.nikkei.com/article/DGKKZO71545420R00C23A6TEC000/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、風車と夕焼けと。

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■核融合とMITの底力■

コモンウェルス・フュージョン・システムズ(CFS)は、アメリカの会社ですが。元はアメリカ屈指の……というか、世界でもトップクラスの理系大学マサチューセッツ工科大学(MIT)の、大学発スタートアップです。日本の企業でも、三菱重工業・三菱電機・東芝エネルギーシステムズなどが、高温超電導線材を受注しているようで。NHKの科学番組サイエンス・ゼロが、自分のような文系人間にもわかりやすくて視聴しているのですが、核融合炉の円環状コイルの製造は、日本企業が進んでいるようで。

しかし、2025年に小型炉の稼働の目処って、凄いですね。もちろん、技術実証炉や商用実証炉なんでしょうけれど。核分裂炉の第四世代炉のひちつである高温ガス炉でさえ、アメリカとイギリスが2029年の商用炉稼働を目標としていて、中国の商用実証炉が一昨年稼働したレベルなのに。商用炉稼働が2030年代初めというのは、2034年とみても11年後ですから、にわかには信じられません。だって、核融合は自分が小学生の頃から、あと30年と言われ続けていますから。想定東海地震や石油の枯渇と同じで、来る来ると言われ続けて、ずっと先延ばしというか。

まぁ、石油の枯渇は100年200年レベルでないと思っていますし、東海地震は来るでしょうけれど、関東大震災の死者の100分の1もないでしょうね。あれは、火事による死者が膨大ですから。江戸の大火も、1657年の明暦の大火の10万7000人以上の死者を出しましたが、その後は防火対策が進んで、1万レベルの死者は1772年の明和の大火まで、120年ないんですよね。1923年の関東大震災から100年、なんだかんだいって、防火対策や耐震構造の研究は、ずっと進んでいますしね。おっと、脇道にそれましたね。

■九州電力と潮流発電■

続いて九州電力が、シンガポールで潮流発電の実証事業に参画するようです。潮流発電は海の潮の満ち引き(潮汐)によって起こる海流を利用して、発電するという方式です。干潮と満潮の間の、停潮の時間帯はともかく、基本的には1日2回の満干がありますから。ちなみに、潮が朝方の満干で汐が夕方の満干です。これとは別に、黒潮や親潮など、暖流や寒流などの海流の流れもあります。

【九電グループ、シンガポールで潮流発電 再エネ地産地消】日経新聞

九州電力グループが夏をめどにシンガポールの島で現地企業による潮流発電の実証事業に参画する。ディーゼル発電で電力を賄う島内で、二酸化炭素(CO2)を排出しない再生可能エネルギーによる電力を灯台に供給する。同グループによる海外での潮流発電は初めてで、長崎県内で培った遠隔監視ノウハウを活用する。今回の実証を足がかりに、適地の多い国内外の離島に再エネの地産地消を提案していく。

潮流発電は、海中に沈めた発...

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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC29B3K0Z20C23A5000000/

潮流発電は、発電機1個当たりの出力は低いのですが、エネルギー変換効率は比較的高い発電なんだそうで。ウィキペディア先生の記述を信じるなら、[黒潮に関しては、東経139度(伊豆半島沖)、北緯32.5~34度(約150km)、水深50mの断面におけるエネルギーポテンシャルは、2.1GWという見積もりがある。]とのこと。このため、ちょっとした原発並みの数値ですが、どれぐらいの規模でやる必要があるのか、ここが問題ですね。

ただ、黒潮などの海流からエネルギーを取り出せば、エネルギー保存の法則で黒潮の力は弱まってしまいます。さらに、地球という自然環境の中で生まれたものですから、蛇行もするんですよね。今年は大蛇行して発電量が大幅に落ちました、ではベース電源になり得ませんから。でも、日本は有明海など干満の差が激しい地域や、海峡で流れが早い地域などありますし。沖縄・鹿児島・小笠原など離島とか、エネルギーの地産地消には向いていそうですね。今後の研究に期待です。

■新潟のバイオマス発電所■

北陸からは 新潟のバイオマス発電所についての、ニュースがありました。新潟東港に、バイオマス発電大手のイーレックスと石油元売り大手のENEOSが協力し、世界最大級のバイオマス発電所を作るという計画。ただし、こちらはあまり良いニュースではなく、当初の予定よりも3年遅れるそうです。燃料も、木材とかのようですから、どうなるんだろうという心配はありますね。3年後には円高や円安で、国内の木材価格が大きく変わっているかもしれませんし。

【新潟東港の「世界最大級」バイオマス発電所事業、建設3年遅れに】新潟日報

 新潟県聖籠町の県営新潟東港工業地帯で計画されている出力「世界最大級」のバイオマス発電所の建設が、当初予定から3年遅れることが6月1日、分かった。着工は2026年度、運転開始は29年度に先送りとなる。環境アセスメントに必要な使用燃料を巡る資料が調わなかったことなどが要因。工期変更について事業主体のイーレックス(東京)は「発電所の建設を確実に進めるための対応」としている。

 イーレックスがENEOS(...

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https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/226580

木材は成長に時間もかかりますし、バイオマスの燃料としてはどうなんですかね? まだしも、トウモロコシとかサトウキビなどの植物の方が、可能性はあると思いますけれど。アメリカとか、日本の20倍以上の国土面積がある国は、トウモロコシの作付面積が日本の国土面積よりも大きいんだそうで。そういうのをアメリカの現地でアルコールに変えて、日本が輸入して燃料に使うなら、貿易摩擦の解消などにも役立ちそうではありますが。

バイオマス発電に関して言えば、前々からしつこく書いていますが 、世界第6位の排他的経済水域を利用して、ホンダワラを養殖してそれをバイオマスの燃料にするという方が、夢はありそうですけどね。でも、トウモロコシと違って、収穫量のコントロールは難しそうではありますが。洋上人工光合成の方が、まだしも現実的なのでしょうかね。石油生成細菌や生物にも期待です。

■グリーン水素と部材開発■

個人的にはかなり期待している、水素製造ですが。欧米はEV車に注力していますが、現実的にはTOYOTAが推す水素エンジンの方が、可能性はありそうです。その水素も、天然ガスから取り出したり、水を電気分解したり、エチルアルコールやアンモニア、蟻酸から取り出したり、いろんな方法があります。電気分解による水素生成手法も、酸化チタンなどの光触媒を用いた方法などがあります。こちらでも各社が、ユニークな素材研究をしているようです。

【グリーン水素製造、コスト減へ 東芝が希少金属10分の1】日経新聞

再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」を製造する装置の低コスト化に向けて日本勢が成果を上げている。東芝は水と電気から水素をつくる「水電解装置」の中核部品で高価な希少金属の使用量を10分の1に減らした。東レは水素の製造効率を高める部材を開発し、2020年代半ばの普及期に備える。

二酸化炭素(CO2)を排出しない脱炭素社会の実現に向けて、化石燃料と違って燃焼時にCO2を出さない水素をつくる装置への...

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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC154EX0V10C23A5000000/

日本という国は縄文時代の昔から、化学的な研究が得意な国民性がありますから。陶磁器とか、粘土やカオリンの配合、焼成温度や釉薬など、化学の塊ですし。薬の調合とかも、大好きですしね。それがセラミック系の高温超電導の物質発見 競争や、カーボンナノチューブなどの研究にも素地となるわけで。東芝や東レの素材の研究などは、やはりその範疇でしょう。前述の核融合炉も、いろんな部品の集合体で、その研究開発に日本が貢献できる部分は多々ありますから。

自分は核融合にも、第四世代核分裂炉にも、期待していますが。エネルギーの安定供給には一発逆転の施策はないと思っています。核融合が現実のものになっても、水力発電や火力発電は相変わらず、重要な発電方法として100年後も利用されているだろうなと思いますし。そういう、多様性のある発電方法の確保が、エネルギーの安全保障につながる面もあるでしょうから。核融合で潤沢なエネルギー供給が実現しても、予想もしなかったような問題が、未来では起こるでしょうし。

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