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朝日新聞『汚染水、浄化後も基準2万倍の放射性物質』の誘導

Twitterで次から次に湧いてくる人たちが、こちらが提示した資料を読まない・読んでも理解できていない、あるいは流れてきたRTの一部だけ読んで脊髄反射されているようなので、noteにまとめておきます。

【10行要約】
・朝日新聞の記事は巧妙な切り取り記事で誤誘導を誘発
・ストロンチウム90などの核種が2万倍なのは一次処理水の話
・一次処理ではRO濃縮塩水の早期処理・敷地境界1mSv/年未満の早期達成を優先
・そちらを優先したためストロンチウム90などの核種が多いのは当然
・海洋放出する場合はALPSや逆浸透膜で二次処理することは記事でも言及
・ALPSはフィルターなどに初期不具合があったが随時改善している
・朝日新聞の記事の数日後に東電が報告を出し説明している
・二次処理水の数値についても東電は細かい数字を出してしている
・朝日も同様の説明を受けた上で読者を誘導した可能性がある
・トリチウムは年間7.2京ベクレルも天然生成され海洋放出しても問題ない

 資料の不備や後で気づいた点は、随時更新します。noteも新機能が増えたので、目次など追加してみました。なお反論や疑義、記述ミスはコメント欄にお願いしますm(_ _)m

■発端は朝日新聞の記事■

 自分のツイートに対し、こんな記事のスクリーンショットを出してきた人がいました。

 念のため、スクリーンショットも添付しておきますかね。こっそりツイートを削除する人が多いので。

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 なぜスクリーンショットなのかは不明です。TLで回ってきたものをそのまま使いまわしているのか、リンクが切れたときのための安全策なのか、それもわかりません。
 しかし朝日新聞の記事だとわかったので、念の為に検索したら、元記事が見つかりました。それがコチラ。

1年近く前の記事を持ち出すのは、情報の更新がされていないことが多いですね、あくまでも一般論ですが。

■でも、ソースは東京電力の発表■

 この記事、朝日新聞の独自調査によるスクープ……ではなく、冒頭に東京電力の発表がソースだと、明言しています。ここ、重要。見出しはセンセーショナルですが、東電が正直に発表したデータがネタ元なのです。

 加えて、東電はこの朝日新聞の記事が出たあとに、説明を発表しています。それがコチラ、2018年10月1日に出た『多核種除去設備等処理水の性状について』です。下記にリンクしたPDFです。ぜひ読んでください、重要な内容が含まれます。

 リンク先をろくすっぽ読まない人ばかりなので、念のため重要な部分をスクリーンショットしておきます。

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 さらに、こちらの2018年11月13日の資料『多核種除去設備(ALPS)処理水タンクの放射能濃度について』も参照を。これもPDFです。

 さらに念の為、『多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第11回)‐配布資料』のリンクも下記に。

 この朝日新聞の記事のおかしさに気づいた人は、掲載当時もいて、こんな検証のまとめ『ALPS等処理済み水の多くから、基準値を超えるSr-90。どうしてこうなった?』がありました。このまとめでも、ずばり朝日新聞の問題点は指摘されています。これだけでも十分っちゃあ十分ですが。


 朝日新聞は東電の説明を巧妙に切り取り、読者を誤誘導していた疑惑が濃厚ですね。では、その手口を次に検証しましょう。

■必要な情報を省いて、置き順を変える■

 まず、朝日新聞は「東電は今後、汚染水の海洋放出などの処分法を決めた場合は、再びALPSに通して処理する方針も示した。」と書いています。
 つまり2万倍云々の数値とは、とにかくまずは汚染水を、《RO濃縮塩水の早期処理・敷地境界1mSv/年未満の早期達成を目標とし、稼働率を上げて処理を実施(東電資料11ページより引用)》するための運用重視の一次処理の結果であり、これをそのまま海洋放出するとは、東電は言っていません。
 それどころか海洋放出の際は再びALPSや逆浸透膜を通した処理、つまり二次処理をすることを明言しています。

 先の東電のリンク先の報告を読めば24ページに、ALPSに加えて逆浸透膜を用いた二次処理によって、処理することを図説付きで明言しています。リンク先の資料を読まないズボラな人のために、こちらもスクリーンショットを追加しておきます。

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 先に引用した朝日新聞の記事該当部分「東電は今後、汚染水の海洋放出などの処分法を決めた場合は、再びALPSに通して処理する方針も示した。」は、二次処理についての説明を受けていなければ、書けない内容です。こんな資料、泥縄では作れませんから。
 でも、そういう知識なしに朝日新聞の記事を読むと、東電は2万倍の核種が残留した処理水を海洋放出するつもりだったが、問題点を指摘されて慌てて再度のALPSの処理を言い出したように感じるでしょう。

 ところが朝日新聞はさらに、この引用部分の直前に「東電はこれまで、ALPSで処理すれば、トリチウム以外の62種類の放射性物質を除去できると説明していた。」という一文を置いています。こうすることで、続けて読むといかにも東電が汚染水処理について嘘をついていたような印象を、読者に与えます。

 この朝日新聞の記事を読んで、「ALPSでは核種は除去できないんだ」と、そう思った人は多いはず。これはただの個人的な推測ではなく、リプライを飛ばしてきた反原発派の方々が、実際にけっこうな数いて、それにいいねを付けたりRTしている人の数が、間接的に証明しています(これらの人々のリプライを、文末にいくつかリンクしておきます)。
 首都圏反原連もカンニング竹山さんへの反論で、この朝日新聞の記事を持ち出していました。

■朝日新聞は東電の説明を省いた?■

 ALPSがなぜ思ったほど核種を除去できていなかったかについては、東京電力廃炉推進室の松本純一室長は、敷地境界線量の低減を急ぎトリチウム除去を優先した運用重視であったことで、他の核種について世間との認識にズレがあったこと、フィルターの能力不足や設備の能力不足を挙げ、説明不足を陳謝しているようですが、それを報じたNHKの記事は削除されています。残念。
 これが東電の報告にある《RO濃縮塩水の早期処理・敷地境界1mSv/年未満の早期達成を目標とし、稼働率を上げて処理を実施》ということですね。

東電の報告では16ページに、ALPS処理水の放射能濃度の主な変動要因は、
 『①処理前の水の放射能濃度の変動』
 『②吸着材性能の低下』
 『③設備不具合・除去性能不足』

と説明してあります。こちらも、リンク先の資料を読まないズボラな人のためにスクリーンショットを以下に添付しますね。

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 Togetterのまとめを読むと、東電の説明不足や傲慢に思える態度も、見て取れます。会社の体質の問題でしょう。でも、説明不足は朝日新聞も同じでしょ? 有料記事なので、アリバイ作りのために続きに重要なことが書いてあるのかもしれませんが、読んでも有料記事の引用はできないので無意味ですし、読みませんけどね。

 ちなみに、東電の報告では、ALPSには既設・増設・高性能タイプがあり、高性能タイプは当初はトラブル続きで、処理能力は高いが稼働率が低いという状況が続いていたようですが。東芝と日立の戦いも。でも、その後の状況を反原発派のマスコミは報じない。他人からもらった情報でセンセーショナルに報じる、警察廻りの社会面記事と同じ。
 こういう、自社の主義主張に都合の悪い情報を地道に、継続的に報じてほしいもんです。何か問題があったら、反原発派にも有利なのに。

■二次処理後の処理水はどうなる?■

 これも、上記の東電の資料の24ページ以降に二次処理については言及されており、それによるタンクの処理水については28ページに記されています。こちらもリンク先の資料を読まないズボラな人のために、スクリーンショットを追加しておきます。

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 右のグラフの右端のトリチウム以外は、告示濃度比1(赤いライン)以下になっています。Sr-90とあるのがストロンチウム90のこと。この当時より、ALPSの運用もフィルター性能も上がっているようで。トリチウムは海洋放出して問題無しは、世界各国の共通認識。

 なお、基準については『多核種除去設備等は、汚染水に含まれる放射性核種(トリチウムを除く)を『実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則の規定に基づく線量限度等を定める告示』に定める周辺監視区域外の水中の濃度限度(以下、「告示濃度」という。)より低いレベルまで低減できる能力を有している。』とのこと。この基準に沿ってますよと、根拠も示していますね。

 スクリーンショットの右のグラフの告示濃度比では、ストロンチウム90(Sr-90)は100分の1以下になっています。これが嘘なら、東電の社長の首が飛ぶ……どころか、東電解体レベルの大騒ぎになるでしょうね。
 東電は嘘つきで信用できないと言うなら、そもそも発端の朝日新聞の記事も、東電の発表を元にしてるんですが……そこに矛盾は感じないのかな? Twitterの方では自己矛盾を突っ込まれて、スルーするか居直る人続出でしたが。

 朝日新聞の間接報道は鵜呑みにして、でも東電の発表は信じられないというのは、もう科学ではなく信仰告白の話です。こんなの、疑わしい部分があれば第三者の査察が入りますし、なんなら放射能五輪呼ばわりして福島ヘイトを撒き散らす韓国の科学者も加わって、検査すればいいでしょう。
 学者の良心があれば、結論は「韓国の処理水と同じレベルで放出に問題ない」となるのですが。でもそれをやったら、韓国の大衆に吊るしあげられ、青瓦台からは別の罪で逮捕拘束されるかもしれませんから、韓国の科学者は誰もやりたがらないかも。

 ということで、基本的な部分については以上ですm(_ _)m


■追記として:生物濃縮について■

 何やら、「有機化が〜生物濃縮が〜」と騒ぐのが、最近のTwitter放射脳トレンドのようですが、トリチウムは有機化され有機結合トリチウムになっても、普通に代謝されて問題ないです。
 生物濃縮についても、水俣病の有機水銀じゃないんだから……って話です。例えばフグの毒のテトロドトキシンは、微生物由来の毒です。普通は代謝されるのですが、フグはこの毒の耐性があって、肝臓を中心に溜め込みます(種類によっては皮や筋肉にも)。結果、人間が食べると死ぬこともあるぐらいレベルまで蓄積される訳です。
 テトロドトキシンはヒトデ類や貝類を経由して、フグの体内で生物濃縮されます。でも、耐性がない生物が一定量蓄積すれば死にますから、生物濃縮がそうそう起きない。というか、フグだって外部からテトロドトキシンを多量に注入されれば、耐えられる閾値を超えれば死にます。

 要は、水だって一度に大量に飲んだら、人間は死ぬわけです。醤油は1リットル飲んだら死ぬと聞いた記憶がありますが、塩分が原因。塩の致死量は体重1キログラムあたり3グラムだそうですから、60キロの人なら180グラム。醤油1リットルがだいたいそれぐらい(メーカーや種類によって変わりますが)です。
 でも、刺し身や煮物に使う量ぐらいなら、毎日摂取しても死なないでしょ? 食塩や海水を見て、食塩で死ぬとか海水の海洋放出反対とは言わない。
 醤油を1日3ミリリットル摂取しても一年で1.095リットル。致死量です。でも、死にはしないし生物濃縮も起きませんよね。醤油は有機水銀やテトロドトキシンではないですから、同じ事です。80年90年でも、生きる人は生きます。生物濃縮とか言葉に安易に騙されず、義務教育レベルの常識を働かせましょうよ。

 だいたい、トリチウムは宇宙線と大気の反応で年間7.2京ベクレルも天然に生成されるほど、ありふれた存在。CTスキャンのほうがよほど身体にダメージがあります。トリチウムが生物濃縮されるなら、核融合研究が捗りますって。

■その他の罵倒リプライについて■

 本論とは別に、今回思った以上に多かったのが、「ならオマエが汚染水を飲んでみろ!」系の罵倒や捨て台詞、揶揄の金太郎飴リプライ。そう言えばこっちが「グヌヌ……反論できねぇぜ」となるとでも思ってるんですかね? 二次処理した処理水なら、あとは煮沸してくれたら飲みますよ。
 放射性物質についてただ怖がるだけの、ある種の穢れとして捉えている呪術的な反原発派と違って、自分にはプラシーボ効果も出ないですし。東電のお問い合わせフォームを使って、二次処理水を飲ませてくれと、請願しておきました。あとは返事待ち。 ※追記:返事が来て断られました。

 自分では「どうだ反論できまい、俺って凄いツッコミ入れてる〜!!」とか思ってるのでしょうが、残念。こうやって並べると凡庸な金太郎飴っぷりが、明確ですね。特に、剛田仁志さん、各方面からボッコボコにツッコミが入れられまくってて、可哀想なぐらい。雉も鳴かずば射たれまいに(削除して逃亡された模様。そういう行動って、さらに人間的なセコさを浮き立たせるだけなんだけどなぁ……)。
 noteは元ツイを消しても、内容が残るのが良いですね。なお、内容が不適切なので消した、申し訳ないの一言があれば、消したツイをコチラも削除しますので、コメント欄にお申し出ください。そういう誠実さがあるのなら、ですが。

■東電へのメールとお返事■

 それでは、予告していた東電のお断りメールを、追加でアップしておきます。

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ついでに、自分が出したメールの文面も。

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 この件に関しては、重要な情報をいただきましたので、それもリンクしておきますね。みんな大好き朝日新聞の2011年10月31日の記事です。政務官がとっくに処理水を飲んでいました……アリャリャ。

 けっきょく、「おまえ飲んでみろ!」と威丈高に言い募る金太郎飴の皆様は、こうやってとっくに飲んだ方がいることも知らない。それ自体は責めません、自分も知りませんでしたから。
 しかし、こういう事実を提示されても、自分の無知を恥じる誠実さとか、非を認める潔さとか、ないんでしょう? 自分は正義の側に居るつもりだから、滑稽です。

■前後の文脈が読めない修羅の群れ■

 さて、もうひとつが、前後の文脈を読まず、「ストロンチウム90の怖さを知らんのかこの無知め」系のリプライ。んまぁ、東電の報告を当人のツイートに直接、何度も貼っても読もうとしない人がいましたから、RTで回ってきたツイートだけ読んだら、そうなるだろうな、と。

 でも、聞いてるのは一次処理水の影響ではなく二次処理水の人体への影響ですから。

 二次処理されて、告知濃度以下になったストロンチウム90が人体に影響を与えるなら、それこそ安全基準を定めた学会と科学者の問題です。まぁ、論点がわかっていないでしょうねぇ(ため息)。

 まぁ、前後のツイートや流れをちゃんと読まないのは、自分もやらかしますけどね。そして、さらに苦笑したのが、一次処理水のデータ(それも東電発表のデータ)を以て二次処理水を同一視することのおかしさを、日本酒の火入れによる火落菌の滅菌前の日本酒を見て菌がうようよいるようなもんだ言うようなもんだとか、加水前の原酒を見てアルコール度数が高すぎる法律違反だと騒ぐようなもんだと例え話にしたら、トンチンカンなリプライが来たこと。

 これも、文脈を読まずに部分だけ見て脊髄反射したのか? それなら、このリンクなど説明を貼られて経緯がわかったら、「前後の流れがわかりませんでした」と一言添えればいいのに。そうすればこっちも、いえいえ気にしないでと返すのに。ほぼいなかったなぁ、そんな是々非々の人は。……あ、一人いたか。そういう人とは主義思想が違っても、友達になれるんですけどね。
 そういえば、金を貰ってるだろう系の罵倒もいただきました。

 くれるなら、いただきたいぐらいだわい(*`皿´*)ノ 安倍政権のネット工作員は時給2000円とか5000円とか、まことしやかな噂を流している人がいますが。こういうリプライって、自分は金で動く人間だから、コイツもそうに違いないって投影、告白に見えるんですが(個人の感想です)。
 この記事も本当は有料にして、7000文字近い労力をかけたぶん、少しは元を取りたいぐらい( ´ ▽ ` )ノ
 noteはサポート制度があるので、このムダな労力を哀れと思うなら、投げ銭をクレクレタコラ〜🎵

売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ