EXTASY RECORDSに学ぶ個人出版の可能性
◉編集者時代の90年代、EXTASY RECORDSをちょっとだけ取材したことがあったんですが。インディーズレーベルでしたが、そのコンセプトや成り立ちなど、サラリーマンの自分には驚きの連続で、ある種の人達には馬鹿にされがちなビジュアル系バンドの、生き残り戦略の明確さと、その骨太さに驚いたモノですが。自分がお話を伺ったのは、事務所の方でしたが、TwitterでYOSHIKI氏本人が詳細に語ってるアーカイブの存在を知りました。
とにかく、行動力が素晴らしいし、解らないことを解決し、そこから新たな壁にぶつかったらまた解決しで、下手なビジネス書より実践的で、具体的で、簡潔で、わかりやすく、ためになるな、と。今はEXTASY RECORDSの活動は休眠状態ですが、このYOSHIKI氏の突破力と組織作りは参考になると、前々から講座などでは語っていましたが。ちょうど良い機会なので、あれこれ考察も含めて、雑文をば。
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■出版社は身ひとつで始める■
伺った話で面白かったのは、YOSHIKI氏の卓抜した目利きの能力を活かして、スカウトしたアマチュアや無名のバンドに、アルバム制作のチャンスを与え、彼らがメジャー進出してヒット曲を出すと、EXTASY RECORDS時代のアルバムも売れて、利益になるという話。音楽界には原盤権という、出版物の著作権とはちょっと違う、録音したアルバムの所有権みたいなモノがあるので、この収入は大きいようで。
実際、GLAYとかLUNA SEAとか、X以上にアルバムの枚数が売れたバンドも出ましたしね。そりゃあ、メジャーで仮に100万枚売れたら、インディーズ時代のアルバムを買おうって人間が、最低でも3万人ぐらいはいそうです。ヴィジュアル系のファンは熱心な人が多いので、もっと多いかもしれませんが。無名の新人にチャンスを与え、ビジネスとしても利益が出る。利益を出すために、スタッフもがんばる。
宣伝広告にもキチンと金をかけるし、その広告もYOSHIKI氏が目を通す。メジャーなレーベルではそこまでのコントロールは難しいでしょうけれど、インディーズだからこそできることは有る。これって、作家が自分で出版社を立ち上げて、自分の本を作るときも、参考になるんじゃないかと。出版社というと大袈裟に聞こえますが、本来は出版社って机ひとつ電話ひとつで始められる商売です。
■個人出版までの手順確認■
では、電子書籍に絞って個人で出版にはどうすればいいのか? YOSHIKI氏がレコードを出したいからEXTASY出版まで至った筋道といっしょで、何が必要でその時々に現れる壁について、出版社勤務10年と2ヶ月とフリーランスの編集者になって17年、学生時代の関わりからすれば30年以上出版業界に関わってきた人間ならではの、実践的な手順を。漫画家・小説家・写真家・歌人俳人・研究者・エッセイスト・ライターなど、途中までは同じです。
ここで第1の大きな壁が来ます。既にプロの漫画家で実績のある人なら、ナンバーナインや電書バトに紙原稿を渡すだけで、後は説明を受け契約の詳細など確認してお任せでも良いでしょう。でも、アマチュアや実績がないし、売上にも自信がない、あるいは自分でやれることをやって取り分を増やしたい人もいるでしょう。でも、小説家やライターなどが、文字オンリーの本を出す方が、実はハードルが高いんですよね。
漫画家の場合、CLIP STUDIO PAINTで漫画を描く・紙に描いたアナログ原稿をCLIP STUDIO PAINTで読み込んで補正すれば、そのまま電子書籍化する機能があります。ただ、CLIP STUDIO PAINTの機能を覚えるのはなかなか大変ですから、スキャンしてデジタルデータ化した原稿を、無料の画像編集ソフトGIMPでゴミ取りや補正を加えて、LeMEという電子書籍制作アプリで電子書籍化も可能です。
■簡単に電子書籍データ制作■
このLeMEというアプリ、自分も去年ようやく知ったのですが、コレがスゴい優れものでして。小説でも漫画コミックスでも写真集でも、簡単に電子書籍用のデータ(EPUBデータ)を制作できちゃいます。コレのおかげで、小説の方はよほど凝った作りにしない限り、かなり簡単に文字だけの電子書籍(リフロー型)を作れちゃいます。ただし、ちょっと凝った表紙デザインにするには、けっこうな知識が必要になります。
このnoteを読んでる人で、パソコンがまったく使えない人が、どれぐらいの比率かはわかりませんが。少なくとも、電子書籍だけで本を出すぶんには、リーズナブルなCLIP STUDIO PAINTや、無料のGIMPでも充分に創れます。GIMPは高性能で多機能なアプリですが、漫画のモノクロデータを作る上では、そこまで多様な機能は必要ありません。もちろん、細かく凝り出せばきりがないですけれども。
Photoshopで言えば、解像度変更・トリミング・トーンバランス・ペンツール・スタンプツールなどですかね、頻繁に使うのは。カメラマンなら、画像編集だけならAdobe Photoshop Lightroomのほうが便利でしょう。ただ、写真集に書籍としての文字情報を加えるなら、やはりPhotoshopのほうが便利でしょう。文字情報だけなら、MS.Wordなどのワープロアプリで作って、それを写真と写真の間に挟むことも、LeMEで可能です。
■三種の神器は難しいか?■
文字のレイアウトやレタリング、ロゴデザインを本格的にやるなら、AdobeのPhotoshopやinDesignが必要になります。Adobeの三種の神器、Photoshop・illustrator・inDesignは素晴らしいアプリが、特にinDesignはDTP(デスク・トップ・パブリシング=パソコン上での版下製作作業全般)に必須の高性能アプリですから。自分は独学で身に付けましたが、プロ用で気軽には購入できないアプリですしね。
なので、表紙のデザインだけ、あるいは表紙と中扉のデザインだけ、プロにデザイナーにお願いする、という手も有ります。デザイナーは、いろんな人がいますが、それこそピンキリ。雑誌などで見かけた腕の良いデザイナーとか、普通にン十万円のデザイン料が掛かりますので。なにしろ、売上に直結しますからね。自分で勉強して自分でデザインするという手も有ります。都内には社会人でも通えるinDesignやPhotoshopの講座もありますし。
ちなみに自分は、大学や専門学校ではillustratorとinDesignの操作方法とデザインを教えていました。1コマ90分で15コマあると、一通り教えられて、小冊子ぐらいは創れるようになります。元々は、紙の本を作るためのアプリですしね。全部の機能を覚えるには大変ですが、出版に絞れば、あんがい覚えるべき機能は絞れるのです。ここら辺、希望者がいれば講座を開きたいんですが。
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無料は以上です。以下は有料となりますが、大事なことは無料部分で語っていますし、大した内容ではありませんので、興味がある方だけどうぞm(_ _)m
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売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ