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短編・中編・長編の分類

◉Twitterの方で復活された、とり・みき先生が、興味深い呟きをされていらっしゃいました。単巻と短編をゴッチャにする人がいるようで。

コレに対する、ゆうきまさみ先生のリプライがさらに興味深かったです。定義が混乱しているのは、大手出版社の編集者も。

そしてタケダケント先生のリプライも。ローカルな定義が、あれこれ流通してるようです。

この業界、実はけっこう出版社ごとに用字用語がバラバラで、下手すると同じ出版社でも編集部が異なると、概念が異なったりします。なので、ちょっと役に立つ概念の話を。漫画と小説の世界はまた違うので、あくまでも一般に言われる話として。

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■短編・中編小説とは原稿用紙何枚から?■

出版社ごとに、そもそも用語が違うことも多い業界ですから。大手出版社だと実務作業を編プロに丸投げして、基本的な用字用語や意味を知らない編集も。自分の狭い個人的な経験ではあるのですが、KADOKAWAはわりと独自の言い回しや、他社と違った用語や概念が社内共通語になっている傾向がある気がします(オブラートに包んだ表現)。一冊本の短編集を、この編集者はなんと呼んでいるのやら。ちなみに、大辞林の単行本の説明はコチラ。

たんこうぼん【単行本】
雑誌・全集・叢書などに対して、単独に一冊として刊行される本。

単著か共著かは、単行本の定義的には特に関係ないんですけどね。小説業界では意味が変容してるのか、単行本の単の字を単著の意味と誤解したのか。で、短編・中編・長編の分類ですが。Wikipedia先生の短編小説の説明が網羅的だったので、引用しますね。

短編小説
短篇小説(たんぺんしょうせつ)は、小説を長さで分類した呼称の一つで、比較的短い小説を指す。長編小説に対していわれるもので、具体的な長さは決まっていないが、一般に原稿用紙10枚から80枚程度の作品が該当する。また短編のうち特に短いものを掌編小説・ショートショート、短編と長編の間の200枚以上ほどの長さのものを中編小説、とそれぞれ呼び分けることもある。連続して短編小説を織り成して一つの大きなストーリーにしたものを連作短編 ともいう。 西洋では、Roman、Novel(長編小説)に対して、Novelette(短編よりやや長いもの)、Short story、Conte、という形式がある。

たぶん、一般的な四百字詰め原稿用紙で10〜80枚ぐらいが短編小説、200枚以上のモノが中編小説、ということに。

■長編・掌編小説とは原稿用紙何枚から?■

では、長編小説の定義はWikipedia先生によれば〝新潮社出版部文芸第二編集部編集長の新井久幸は、400字詰め原稿用紙250枚が長編として出版できる下限であるとしている。〟とあります。老舗出版社の編集部のローカル定義で、業界共通の明確な定義はなさそうですね。他にも掌編小説やショートショートもありますが、コチラもWikipedia先生の掌編小説の説明が、ショートショートも含めて網羅的だったので、以下に転載。

掌編小説
掌編小説(しょうへんしょうせつ、掌篇小説)は、短編小説よりもさらに短い作品を指す。「短い短編小説」であるショートショートよりも短い小説(story)とされるが、散文詩的なものもあり明確な基準はない。掌篇小説という名称は、中河与一が名付け親だとされ、それまでは、岡田三郎が「二十行小説」、武野藤介が「一枚小説」などと呼称していた。短編小説や中編小説にも、ごく短い小説が連続する体裁を持った作品はあるが、掌編小説は、より長い作品の要約や抜粋、一部分や小品文ではなく、それ自体が単独の物語として完結するものである。描く作品内容・ジャンルは多岐にわたる。

つまり、コチラも明確に定義されてるわけではない、と。とり先生のツイートに、小説は明確だが漫画は曖昧だという意味のコメントも見かけましたが、んなこたぁないようで。ちなみに〝明確な字数上の定義はないが、コンテストでは300字、400字、500字、600字、800字など応募規定に字数制限が科されていることが多い〟という説明もあります。四百字詰め原稿用紙でだいたい1〜2枚ぐらいですかね。個人的に四百字詰め原稿用紙半枚、200文字から掌編小説は書けないこともないかな、という認識です。

■ショートショートは原稿用紙何枚から?■

ちなみに、ショートショートも、本来の意味は「短い短編小説」ですから、掌編小説と短編小説の中間みたいな扱いなのでしょう。ライト級とミドル級の間のウェルター級のような? とするとミドル級とヘビー級の間のクルーザー級が、中編小説のようなものでしょうか? 相変わらず明確な枚数の定義はないですが、コチラもWikipedia先生の説明が便利でしたので、以下に転載します。

ショートショート
雑誌『小説現代』のコンテストでは400字詰め原稿用紙7枚まで、雑誌『SFマガジン』の読者投稿コーナーでは400字詰め原稿用紙5枚程度としている。都筑道夫と星新一とがショートショートのアンソロジーを編纂したときには400字詰め原稿用紙20枚までとした。エラリー・クイーンが編纂した『ミニ・ミステリ傑作選』に収録されたすべての作品は2,000語以下である。ショートショート大賞では、第1回目が原稿用紙20枚以下、第2回目と第3回目が原稿用紙15枚以下で募集した。

どっちかと言えば、ショートショートは枚数というよりも、形式やジャンルっぽい感じにはなっていますね。星新一・眉村卓・阿刀田高先生らが書く、アイデアやウィットに富んだ、長めの小噺というか。個人的なイメージですが。

■小説の長さによる分類■

ということで、長編小説・中編小説・短編小説・ショートショート・掌編小説の字数を、四百字詰め原稿用紙に換算して大雑把にまとめると、こんな感じですかね。

 ・長編小説:四百字詰め原稿用紙250枚以上
 ・中編小説:四百字詰め原稿用紙100〜200枚程度か?
 ・短編小説:四百字詰め原稿用紙10〜80枚程度
 ・ショートショート:四百字詰め原稿用紙5〜20枚程度
 ・掌編小説:四百字詰め原稿用紙1〜2枚前後

コレに10〜20%前後のプラマイはつく感じでしょうかね。個人的には以下の区分の方が、区切りは良さそうですけどね。

 ・掌編小説:四百字詰め原稿用紙5枚以下
 ・ショートショート:四百字詰め原稿用紙5〜20枚
 ・短編小説:四百字詰め原稿用紙20〜100枚
 ・中編小説:四百字詰め原稿用紙100〜200枚
 ・長編小説:四百字詰め原稿用紙200枚以上

1冊で完結しつつ、続き物も書けるという点で、小説と映画は似ていますね。山田洋次監督の映画『男はつらいよ』の本編49作とか、山岡荘八の『徳川家康』全26巻とか中里介山の『大菩薩峠』41巻(未完)にも近いですし。

■漫画の長さによる分類■

さて、漫画の区切りですが。明確な定義はないですけれど、文字の大きさによって1ページに入る文字量が異なる小説の場合、四百字詰め原稿用紙で換算されるのですが。漫画の場合は基本的に1ページ単位で作品が作られるため、雑誌の32ページ1台を基準とする部分があります。出版物は巨大な紙に複数のページを配置(面付け)し、これを折り畳んで三方を断裁して、本にします。

例えば、新聞紙は1枚の紙を二つ折りにすることで、合計4面(4ページ)になりますね。「三面記事」という言葉は、昔の新聞の社会面が三枚目にきていたことの名残です。2回折ると8ページに、3回折ると16ページになりますが、出版業界では四つ折(直角四つ折、十字折り、クロス折りとも)が8ページになる折り方、八つ折(クロス16頁折り)が16ページになる折り方なので、用字が混乱しがちですが。で、雑誌は4回折るクロス32頁折(十六折とも)が基本です。

昔の新人漫画賞の投稿規定が32ページだったのは、このためです。現在は雑誌掲載時の余裕(作品評や広告などを入れるため)を持たせるため、切りの良い30ページが多いですが。この、32ページワンブロックを台とか折と呼びます。故に、台をベースにするとと、漫画の短編や長編の分類はこんな感じになりますかね。

・長編:100ページ以上/3台=96ページ以上
・中編:60〜100ページ/2〜3台=64〜96ページ
・短編:16〜59ページ/半台〜2台=16〜64ページ
・掌編:1〜16ページ以下/四半台〜1台以下=8〜16ページ以下

あくまでも個人的な数字であって、コレが業界の基準ではありませんが、物理的な問題でだいたい、ここに収斂するでしょう。

■大長編はどの尺から?■

『大長編ドラえもん』はおおむね200ページ前後ですから、大長編というのは誇大でもなんでもないんです。手塚治虫先生以前は、漫画は4コマ漫画や『のらくろ』でも12ページとか、短いのが普通でしたから。ついでに言えば、単行本では八つ折16ページ1台が一般的なので、コチラを基準にするとこんな感じですかね。半台というのは、16ページが基準の本で8ページの台のことを、こう呼びます。

・長編:6台以上=96ページ以上
・中編:4〜6台=64〜96ページ
・短編:1〜3台=16〜64ページ
・掌編:半台〜1台=8〜16ページ以下

ちなみに、大長編ドラえもんは、おおむね192ページ(12台)から208ページ(13台)に収まる長さです。これは漫画の新書版の単行本が192・200・208ページの3種類が基本だからです。漫画の新書版のルーツである秋田書店サンデーコミックがこの体裁なので。もっとも近年は出版社によって、価格は同じだけれど176ページ(11台)とかもかなり増えていますね。A5判のサイズ大きめの単行本とかは、150ページ前後(9〜10台)が昔から主流ですが。

■漫画表現と映像表現との長さの相関関係■

ここでさらに脱線して。漫画のページ数を映像関係と照らしてみると、興味深いです。漫画の2ページは、映像表現にすると1分前後に相当します。もちろん、作品内容によりますが、内面描写系の作品はともかく、エンターテイメント作品は、多くにこの換算が当てはまります。そうすると、『大長編ドラえもん』は80分から120分が多い劇場版アニメや映画と、近い数字に収まっているのがわかりますね。

・大長編:200ページ前後=90〜120分前後の映画の尺
・長編:96ページ以上=48分以上で1〜2時間ドラマの尺
・中編:64〜96ページ=32〜48分前後でアニメやドラマの尺
・短編:16〜64ページ=8〜32分前後で30分アニメの尺
・掌編:8〜16ページ以下=4〜8分前後でショートフィルムの尺

今の30分アニメは正味で24分ぐらい、30分二本立てだとおおむね1本あたり10〜11分ぐらい、サザエさんの三本立てだと1本あたり7〜8分ですね。ピクサーのショートフィルムは5分ぐらいですから。こうやって見ると、元々は出版業界の台(折)という物理的な理由で生まれたページ数が、あんがい映像作品の尺と近いところに収斂されます。漫画は扉ページがあるので、30ページでも実質は28〜29ページですからね。

■余談雑談空談などなど■

さて、こういう部分が解ると、実質値上げを誤魔化すため、176ページで単行本化とか、個人的には良くないと思っています。もちろん、80分ぐらいの映画はよくありますし、黒澤明監督の『七人の侍』やピーター・ジャクソン監督の『キングコング』や庵野秀明監督の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のような3時間前後の作品も多数ありますから。作品ごとに、ベストの尺はあるはずです。

とはいえ、18〜20ページの週刊連載9〜10本で単行本1冊とか、読み切り30ページ6本で単行本1冊とか、月刊連載45ページ4本で単行本1冊とか、大増60ページ3本で単行本1冊になることを思えば、192〜208ページという単行本の基本形って、わりとよく考えられた形式なんですよね。本編以外に中扉・目次・奥付なども付きますし、登場人物紹介や後書きが入ることもあります。

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