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【7/5】チェンソーから連想

・2200字強。


・少年ジャンプ+で、チェンソーマンを全部読んだ。

・レンタル式だから48時間くらいしか読めないけど、3000円未満で読める。普通に新品の単行本を買ったら5000円弱くらいだと思う。

・私は漫画を読み返すということをしないので良いのだ。作画資料として読み返したくなることはあるけど、まあ手元にチェンソーマン1巻だけはあるからそれで事足りる。


・感想!ネタバレをバリバリ含む

・「倫理観のぶっ飛び方」の解像度が高いので、色んなバリエーションの「ゾッ」を体験できてよい。

・冒涜的な絵を描くのが上手い。闇の悪魔の登場シーンの絵がすごくて「あっ…我々はいま触れてはいけないものに触れているんだな…」感があった。あのシーンは攻撃が意味不明すぎて、ゲームのバグが発生しているような、SCP的な、クトゥルフ的な不気味さがあった。それまで全然死ななかった奴らが数ページでみんな死んだので唖然としてしまった。物語中盤だけどいいのか?作者ヤケになった?

・キャラデザ力が高いな…すげえ秀逸なデザインをポンポン生み出しては使い捨てするんだもんな…

・「銃の悪魔」がゴジラみたいだった。手の施しようがなく、ただただ甚大な被害が出ているのを観測して記録することしかできない感。

・複数の悪魔の能力が詰まったとある一コマ、画力の暴力に脳が処理落ちしたな。脳内のグラフィックの描画に時間がかかって、ゆっくり動いて見えた。

・終盤、「精神的に未熟なキャラ」から学べる精神論があったの良かったな。アンパンマンの「きらめけ! アイスの国のバニラ姫」という映画でも同じような描写があって号泣した記憶がある。

・手を抜くのが上手い。最終決戦の所とか、よくよく見たら手抜き背景なのに、よくよく見なければ脳内補完されて画力の高い背景に見える。これは私には真似のできない高等な手の抜き方だ。

・手を抜くというより単に見やすくしている意図もあるのかもしれない。ネットで「最近のワンピースは背景がごちゃごちゃしているので読んでいて疲れる」という意見が散見されたので、そういうことなのかな。

・よくよく観察したらこれアレだな。影を効果的に使いたいコマ以外のほぼ全てのコマにおいて、一切影を描画していないな。確かに、読者は会話シーンとかには画力は求めていないわけで、読みやすさのために意図して影を省くのは合理的だな。

・以前から、TwitterのTLでちょくちょく「ここのコマでこういう感情になった」という感想スクショツイが流れてきていた(著作権的にはダメである)。なのでチェンソーマン読んでるときちょくちょく知ってるコマが出てきたな。


・私が中学生の頃、「漫画家というのは脚本担当と作画担当が協力して作っているのだろう」と思っていたので、そうではないと知ったときにぶったまげたな。でも今は「画力が高い人間がお話を作るのも上手いのは必然だよな」と納得している。

・少年ジャンプ漫画賞に対して定期的に「文章での漫画原作の持ち込みは受け付けていますか?」という質問が寄せられて、回答者は毎回「受け付けておりません」という旨の回答をしている。偏見だけどそういう質問を投げる人間の書くシナリオはぜっっっっって~~~面白くないと思う


・以前の日記でも同じことを書いたのだけど、この作者は「キャラの利害関係」を「読者の感情」と紐づける能力が高い。主人公の動機は結局「女と仲良くなりたい」「普通の生活を手に入れたい」の二つに集約される。かといって単純ではなく、「女と仲良くなりたい」という欲にも色んな形があったし、「普通の生活を手に入れたい」という欲の定義も作中で揺れることはあった。そしてそれらはちゃんと読者が共感しやすい形で描かれていた。

・物語に感情移入できるかどうかって結局、共感できるかどうかだと思うのだよね。万人ウケする作品は共感性が高いのだろうな。

・アレでしょ、「か弱いヒロインを守るために身を犠牲にする主人公」とか出てきたら萎えない?私は萎える。これも共感性。

・私は「物語の主軸を邪魔してくる裏切り」の発生する漫画を読むとイライラしてしまうのだけど、チェンソーマンにはそれを感じなかったな。チェンソーマンの場合は、裏切り自体が物語の主軸だから、それはいいのである。

・作中で主人公くんが割と世界の命運を背負っているのだけど、別に主人公くんは世界を守ってやろうとか壊してやろうとかいう大義名分は持っていない。ただ普通の生活を求めて仕事をしたり、女に従ったり、現れた敵に反撃してたらいつの間にかそうなっていたのだよね。本当に途中から主人公くんは受動的なアクションしか起こしてない気がするのだけど、それでも勝手にお話の規模が大きくなってしまっていく。これって非常に共感しやすいのだよね。読者である私たちは別に世界を守ろうとか壊そうとか思っていないので、そういうお話には感情移入しづらい。でもチェンソーマンの場合、普通の欲を強く抱き続けてたらいつの間にか取り返しのつかないことになっていたお話なので感情移入しやすい。

・終盤に近付くにつれて考えないといけないことが増えてきたあたりで主人公くんが

俺…もう…自分で何も考えたくねーです… 昔は死なねえ為に必要な事だけ考えてりゃよかったんですけど 今は考えなきゃいけない事が一万個くらいある感じでダル…疲れます

と言っていて、読者のことをよくわかってんな…と思った。


・終わり

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