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【6/25】チェンソーの感想

・チェンソーマンの1巻を読んだ。その感想を綴っていたら2300字強になってしまっていた。

・もともと特に期待せず「流行りものだから一巻目だけ読んどくか」という単純な理由で読んだだけなのだが…


・一次創作においては、序盤は世界観とかキャラの説明が多くて退屈になりがちだと思うのだけど、チェンソーマンは序盤からアクセル全開で描きたいものを詰め込んでていいね。ぶっ飛ばしてる。第一巻だけでも大きな裏切りシーンが3回くらいあった。この作者が主に書きたいものって「裏切り」なのかな…

・Twitterで「チェンソーマン読んで毎回絶望してる読者」が散見されたので、「主人公は幸福の絶頂である状態から始まって落ちていく話なのかな」と予想していた。読んでみたら実際はそうではなくて、主人公は作者が思いつく限りの「人生が終わっているも同然のドン底生活」シチュからスタートして、一巻目の終わりではそれなりに人間らしい生活を手にしているのだよね。ははぁ~~なるほどね。ははぁ~~


・自分、チェンソーマン冒頭川柳いいすか?

「腎臓を 売るも借金 無腎臓」



・嬉しいシーンを強調したいとき、その嬉しいシーン自体よりも、その直前に訪れる不安さや悲しさの描写に力を入れると、その落差というかギャップで嬉しいシーンが強調されるのだよね。これは逆もまた然りで、チェンソーマンの場合、つらいシーンを強調する直前は読者を極力油断させるように毎回工夫されていて、ハァ~~なるほど、この調子で11巻分やるのか~と思うなど

・漫画「デュエルマスターズ」作者の松本しげのぶ先生は、コロコロ紙面上で具体的例を挙げながら「攻撃を描くときは攻撃する側よりも、攻撃されている側の被害の描写に力を入れた方が攻撃の凄さが伝わる」と説明しており、目から鱗が落ちた。

・おれも松本しげのぶ先生になりてぇ…


・作者は読者より情報的に有利な立場にある。読者は物語を読んだ順番にしか想像することができないが、作者は物語を後ろから順番に想像することもできるからだ。駆け出しの小説家とかはよく物語を冒頭から順番に書いてしまうことがあるが、それでは伏線が貼れず、読者の想像を大きく超えるオチにはできないと思う。

・チェンソーマンの場合も、まずオチの一番ヤバい感情になれる所を決めてから「そのオチが訪れるまでに読者にどれだけオチとは違うことを考えさせて油断させられるか」という道筋を組み立ててのだろうなと思っている。人気を博すのも必然だなァ…


・他人の心を動かすのって「共感」だと思っている。本来、動物は黒インクが乗っているだけの紙を見て泣いたり笑ったりすることはしないはずなのだけど、人間はその黒インクの集合を見て情景を想像し、共感することで泣いたり笑ったりするのだよね。

・「降ってきた隕石を主人公が止めて地球を救った」というシンプルな内容の漫画があった場合、作中で「超怖いこと」と「超嬉しいこと」は発生しているのだけど、あまりにも突拍子がないので「あくまでフィクションだしな」と一歩引いた所から冷静に見れてしまい、あまり怖がったり嬉しんだりできないと思う。読者を作品にのめり込ませなければ、どんなに作中で悲しい出来事が発生したりしても読者の心は動かない。

・最近のジョジョリオンはそんな感じであるという印象。すげえ凄惨な頭脳戦が繰り広げられてはいるけど、よくわからないキャラがよくわからない目的でバトっているので、勝ったり負けたりしても嬉しいとか悔しいとかあんまり思わない

・その点チェンソーマンはすごい。なんでだろうな。主人公の感情がそのまま、読者である私の感情になってくる。

・思ったが、作中でモノが動いてることってそこまで読者の心を動かさないんじゃないか。例えば「主人公の家に泥棒が入り通帳を盗まれたが、その泥棒を殺すことに成功した」というだけでは、まあフィクションの中のお話だし、別にそこまで悲しかったり嬉しかったりはしない。ところが「怪我人を装って主人公の家に泊めて貰った人間が実は泥棒で、主人公に痺れ薬を盛った上で通帳を盗み、動けない主人公を挑発しながら去ったが、なんやかんやで殺せた」だったらどうだろうか。これは悔しかったり嬉しかったりと、心が動くなあ。読者はその「泥棒の態度」に対するムカつきを「通帳を盗まれたこと」に対するムカつきと錯覚して物語に感情移入しているのではないか。

・物語が進んでいく上での通貨になるものというか、みんなの利害関係を左右していくファクターって、人命、財産、組織、仇、食べ物、土地、地位、身の安全、とか色々あると思うのだけど、本来物語の外側にいる読者からするとそれらのファクター自体には価値はなくて、そのファクターが登場したときに紐づいた感情の価値とファクターが紐づけられているだけなのかもね。

・思えば自分の中で名作だと思っている作品って大体そうだな。特にトイ ストーリー。あーーー上記のようなことを意識しながらトイストーリーを見返したら多くの発見が得られそうな気持ちだな。アレは本当にファクターがそのまま視聴者の感情に結びつくような工夫が詰まっているので…

・本当に勉強になったのでありがとうチェーンソーマン(一巻しか読んでねえのにな笑)


・絵がよいね。久しくジャンプを読んでいないので、「ジャンプと言うのは日本を代表する漫画の最高峰だし、全員がワンピースくらい整った画力を求められているのだろうな」という偏見を持ち始めていたのだけど、その偏見がなくなった。チェンソーマンは手の抜き方が上手いというか、よくよく見ると手は抜いているのに、よくよく見なければ普通に美しい絵なのだよな。何を意識したらこうなんだべか… 


・おわり


・トイレを擬人化したキャラってどこで排便するのかな

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