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 心電図も個性がある

  働いているときのお話 

 職場の検診で心電図が引っかかる。自覚症状もなかっただけにショックだった。検診結果の備考欄に、※要再検査とあった。それを見たとたんに心の中では命が消えていた。しかし、何か問題があるなら早いうちがいい。すぐにかかりつけのドクターのところに行き心電図を撮った。
「確かに波形が引っかかるところはあるね。念のため調べようか」
 やさしく穏やかな口調だったが、また私の心の中で命が消えた。
「近くの病院には、3Dで撮れるCTがあるから行ってみる? かなり待つと思うけど」(その病院は心臓の診察・手術で全国でも評価の高いところだ)
「立体的に細かいところまで診ることが出来るよ」
 細かいところまで診られる。命を取り返せるなら、待つことなど苦でない。自分を安心させたい。家族を安心させたい。何かあったら治療する、すればいいんだ。それに3Dの自分の心臓も見たい。
 三日と開けずその病院に行く。心臓外科で有名なドクターがいるため、心臓外来は大変な人だ。検査で来ている人もいるだろうが、治療で来ている人の方が多いのだろう。これだけ病んでいる人がいる。毎日の生活が、「生きる」ことへの挑戦なのだ。
 心の中とはいえ命を消してしまうなんて、恥ずかしいことだ。そう思って検査を待った。初めての3DCT。どんなふうに撮るのだろうか。大丈夫大丈夫と言い聞かせた。待ったぁ待ったぁ。寝ていた。やっと声がかかる。
「検査いきますよ~」
 ドームが私を待っていた。
「普通のCTのように静かに横になっていてくださいね。機械が中で回りますけど心配ありませんからね。あと、途中で造影剤をいれます。少しからだが熱くなりますけど、検査後それもなくなりますからね」
 熱くなる? どのくらい? いよいよ造影剤だ。じわじわからだが熱くなる。(あらっ。あらっ。大丈夫?)しかし、気持ちは悪くならない。が、からだの隅々まで、局部も熱くなる。検査結果のことなど頭からとんでいた。熱い。検査そのものは、そんなに長くは感じなかった。造影剤の熱さも消えていた。
「先程の待合室で待っていてくださいね」 すっと現実に戻される。
 心臓は大丈夫なのだろうか。検査のあとも待つ。どこが悪くて再検査になったのだろうか。頭の中を駆け巡る。
 
 診察室に入ると、レントゲン写真が数枚光に照らされていた。今にも動き出しそうなリアルな写真だ。実にきれいに、写真でよく見る心臓の形をしていた。これが私の心臓かぁ。
「はい、こんにちは。これがあなたの心臓です。冠動脈がこれね。細いところも詰まってないね。こっちが角度を変えて撮った写真ね。どこも詰まってないね。大丈夫だよ」(あっさりと終わってしまった)
「では、なぜ心電図は要再検査だったんでしょうか」
「たとえるなら、人に個性があるように心電図にも個性といえる範囲があるんだよ」
 集団検診ではここまでで再検査を出すという約束事があり、それに引っかかったのだとドクターは説明してくれた。そして、自覚症状がなくても検査を受けることは早期発見・早期治療につながるから、これからも受けてくださいねともおっしゃった。
 何事もなくほっとした。心電図の個性という新しい言葉も知った。その言葉や元気に働く自分の心臓を知ることが出来たのも、集団検診のお陰だ。これからも面倒くさがらずに受診し、未来を楽しもう。

 あれから何年たったかな。おかげさまで検診でひっかかることなく過ごしている。もうすぐ68になる。時折脈がとぶことはあるが、かかりつけで心電図を取ってもらっても大丈夫と言われる。
 心電図よりも、中性脂肪・コレステロール・血糖値が気になるお年頃となりました。仕事を辞めてからは、あんまり動かなくなったので、食べる量も減り、野菜を多くとるように頑張ってます。皆さんも、健康に気をつけて人生楽しんでください。私の今の楽しみは、このNOTEに他愛もないことを書くことです。筆文字も遊び心で書いて載せてみたいと思ってます。個性的な心臓とともに。

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