ショートショート10 伝統芸能 しきたり
伝統芸能 しきたり
慎太郎の住む町には、郷土芸能として有名な海神和太鼓がある。海の近くで昔は漁師町だった。大漁と漁の安全を祈願して、海のかなたへ届くようにと、一人の漁師が打ち始めたのがきっかけだそうだ。今は、漁師は減ってしまったが、その勇壮な姿と太鼓の音の迫力が魅力で、伝統芸能として残ったのだ。
慎太郎の住む町のしきたりとして、十五歳になる少年少女は、必ず海神和太鼓を会得しなければならなかった。海神和太鼓は、大きいものは直径二メートルくらいある。しかし、慎太郎たちが習