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ショートショート14 クラスメートって⁉

  クラスメートって⁉
「ねぇ、京都のどこをまわる?」
 和美たちはやっと決まった班で、修学旅行の班別コースを決めていた。計画書の提出ぎりぎりになっても、学級の時間に決められず、放課後残って決めることになった。そもそも、班を決めるときからもめてばかりいたのだ。
 
 和美のクラスは、男女三人ずつで六班できる。中学生活最後なのだから、好きなもの同士がいいとか。それだと組めない人がでると悪いから、ちゃんと話し合った方がいいとか。くじ引きでいいとか。いろんな思いが渦巻いて、なかなか班を決める方法が決まらなかった。クラスの空気がだんだん沈み、ぎすぎすした雰囲気まで流れてきた。和美は学級委員だったが、司会をしながら内心は、好きなもの同士で行きたいなぁと思っていた。男子の学級委員の壮太は、同じクラスなんだから誰と行ったっていいじゃないか、と思っているので話し合いの方向が定まらない。和美は自分と仲良しの愛に意見を求めた。愛はきっと好きなもの同士でと言うと思ったから。
「最後の学年だから、わたしは今まであまり話をしてこなかった人と一緒になってもかまわない。」
「えぇー。やだぁそんなの」
 すかさず、クラスの女子からブーイングがでた。和美も愛の意見は意外だった。意外というより、わたしと行きたくないのかと思ってしまった。話し合いは一時間では結論がでず、次の日に持ち越された。
 和美は愛の意見が気になって仕方がなかった。わたしと行きたくないから、あぁ言ったのか。聞きたいがなかなか聞けずにいた。
「和美、京都って行ったことある?」
 と愛が聞いてきた。愛は何も気にしている様子はなく、いつもどおりだった。
「えっ?ないよ。愛は?」
「ないんだなぁ」
「じゃぁ、気の合ったもの同士で行こうよ」 和美は自分の思っていることを言ってみた。
「うーん。それもいいかなとは思うよ。でもねぇ・・・」
「でも、なぁに?」
「和美、このクラスで去年一年間過ごしたでしょ。そして今年は卒業の年なんだよね」
「そんなこと分かりきってることじゃない」 
和美は愛の考えていることがよく分からなかった。
「和美さぁ、三十五人同級生がいて何人の人とお話しできた?あたし、女子でもじっくりと話したことある人少ないよう気がするんだ。来年の三月でばらばらになっちゃうんだよね。なんか、去年と同じことしてていいのかなぁって時々思うんだ」
 和美はどきっとした。確かにそうだけど、愛みたいな気持ちに賛成してくれる人いないんじゃないかな。そんなすごいこと考えてる人いないよ。立派すぎる。どうやってまとめよう・・・・・・。
それに、みんなと話すなんて小学校の時のこと考えても無理だし。
 
「愛の考えは理想的だよ、でも、今までのことを考えたら無理だよ」っていいたいが、言えなかった。無理って決めつけていいのか。でも、人って合う人合わない人ってあるじゃん。修学旅行を機会に中学校生活の思い出
に・・・ なんて言ったって、賛成する人少ないよね。
 
「ほんとグループ決めってめんどくさ」と心の中でつぶやいた。
 
 次の学級会の時間に、愛の考えをみんなに言ってみた。
え~! 無理無理。楽しくないよ。できっこない。案の定の反応だった。その声を聞いた愛は、
「人には合う合わないってあるけど、そんなに一緒にいて嫌な人ばかりなの、このクラスは! 二泊三日も過ごせないほどなの! 卒業まで何ヶ月あると思ってんの」
と珍しく大きな声を出して言った。一瞬クラスが静まりかえった。

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