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連載小説「戊辰鳥 後を濁さず」

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土木業界を離れることとなったため、今までの仕事の経験をもとに初めて小説を書きました。 全85話で完結。約55000字となりました。街から文学が生まれるのではなく、街づくり文学を目…
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#法律

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第1話

あらすじ 戊辰鳥 後を濁さず ―つちのえたつとり あとをにごさず― 第一部「釜場」 三月十五日(金)  農家であり地主であるトキ家の跡取り娘として生まれた私は、二十歳の時、祖父の養子となり、祖父からボロアパートを一棟譲り受けた。  表向きはトキ家の血を絶やさないためとなっているが、実際は広大な土地を持つ祖父から相続を受けるためである。  医師が祖父に宣告したおおよそ三年後までに私は相続税として多額のキャッシュを用意しなければならない。そのため、ボロアパートを解体し、そ

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第27話

四月十日(水)  市役所には何も言わないでいるつもりが、市役所の方からやってきてしまった。  カピバラ市のロゴマークが入った市役所の軽ワゴンが母屋の前に急に止まって、また何かトラブルかと思ったら、ラクダだった。  朝顔のタネとプランターとSDGsのロゴが四つも配置されたA4カラーのパンフレットを持ってやって来てくれた。緑のカーテン作戦といって、夏場に室内の冷気を保つことを目的に窓の外に蔓性の植物を繁茂させることで、日光の直射を防ぎ、葉の蒸散作用で冷気を保つことを目的とし

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第44話

四月二十八日(日)  お前は何もしていない。  お前がフラフラ何もしていない間、みんな自分のなすべきことをなしているんだ。  一生懸命なぁ!  この人は、カピバラ市の農業のことを思い、このまま田んぼができなくなったらまずいと、休日なのに、自分で調べてここまで来てくれたんだ。  条例だか包茎だかしらねぇがそれはお役所さんが決めたことだ。  それなのに何もしていないお前は、この人のなすべきこととはちがうお役所の話ってやつで、この人を否定しようとしてるんだ。  筋がちげぇし

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第45話

四月二十九日(祝)  条例 法律 行政法 検索  今は便利な時代で、私はまだ「条例 ほうr」までしか打っていない。  サジェストのまま検索すれば、トップにサマリーも出るし、その根拠となるエビデンスも出るし、法律、条例、規則、施行令、違いはよくわからないがたくさんの決め事が出てくる。こんなに決め事がある世界に生きていたとは知らなかった。  とあるpdfデータを開く。  読み解くと「条例が法律の目的と効果をなんら阻害することがないのかどうか」が肝心らしい。  私にはそん