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IT系のお兄さんと書き物

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読んだ小説、観た映画などについて、ふと考えたこと、あとたまに創作をまとめています。ここだけは特にテーマを設けずに自由に書いています。書いている本人が実は一番楽しいのかもしれません。
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2020年1月の記事一覧

哲学な日々 野矢茂樹

哲学な日々 考えさせない時代に抗して 野矢茂樹 2015年 講談社 哲学は体育に似ているという言葉で哲学を語ってしまうのだから、哲学の本を読むぞという肩肘を張って本を開いた人にとっては肩透かしもいいところかもしれない。 野矢先生はとても平易な言葉で、しかし本質的な問いに対してあれこれ言いながら解き明かす、その過程を見せてくれる。それを読んでいると哲学というのは確かに体育というか実技科目であるなぁと納得してしまう。 この本のそれぞれの章は新聞に連載したエッセイということも

渚にて ネビルシュート

渚にて 1957年 ネビルシュート 終わりが確定した世界で出会う平穏 未来は基本的に不確定だから人は不安になるし、またその不確定を少しでも確定したものにするために努力するものだと思う。でも仮に必ず人間の世界が数ヶ月後に終わるという未来が確定した世界では何が起こるか。 この壮大な仮定に対してこの本が描く世界は決してパニック映画さながらの混乱ではなくて、多少の混乱はありながらも驚くほど平穏に生活する人々の姿で、それはパニック映画よりもずっとリアルな世界観だった。未来への期待や