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「赤と青とエスキース」

読みました。
この間ふらーっと本屋さんに行った時に見かけ、表紙の美しさがどうしても忘れられなかった本。

本のパケ買い(ジャケ買い?)は初めてしたのだけれど、美しいのは表紙だけじゃなくて中身もでした。

元はと言えばnoteで書きたかったのはこういう本のレポなので(そうなの?)たまにはこうして感想でも書こうかな、と。
なのでもしこれから読みたいと思ってる方、ネタバレを踏みたくない方は遠慮なくブラウザバックしてくださいな。

しました?ブラウザバック。
ブラウザバックせず生き延びた皆々様、どうぞ私の拙いレポを読んでいってください。

「赤と青とエスキース」

まずこの本、短編集なのです。ある一枚の絵画を巡る、五つのそれぞれの物語。けれど、最後まで読んだ時、全てが繋がる。

これだけ聞いたら、サスペンス?ミステリー?って思うかもしれないけれど、決してそうではなく。

まず私が見て欲しいのは、短編それぞれのタイトル。

「金魚とカワセミ」

「東京タワーとアーツ・センター」

「トマトジュースとバタフライピー」

「赤鬼と青鬼」

なにか、気づきませんか?
さっきパケ買いと言ったけれど、私は表紙とこれらのタイトルを見て購入を決めました。(ちなみに最後の一話はエピローグなので、タイトルというタイトルはないみたい)

これ全部、「赤と青」の対比になってるんです。

それだけと言ってしまえばそれだけなんだけれど(笑)、私はこれにすごく惹かれてしまって。赤と青という二色で、これだけの物語が生み出されるんだって。表紙、タイトル、そして短編のそれぞれのタイトル。それぞれが全部、美しい。

でももちろん、それでは終わらないわけで。

正直、「金魚とカワセミ」を読んだ時は、「あー、買わんでも良かったかも」と思った。ブーとレイの関係は素敵だし、もちろん美しい話だし感動はする。けれど、わざわざ買って読むほどでもなかったかなー、なんて思ってしまった。
(私が運命とか奇跡とか、そういう話が好きすぎるからかもしれない。あまりそういう意味の感動は薄かった感触。)

けれど、二章にあたる「東京タワーとアーツ・センター」を読んだ時、「お?」と思った。
一章で登場した絵画が、もう一度登場したから。いやまあ、そういう話なのは知ってた。知ってたんですけど、いざ出てくるとテンションあがる。ちょろいので。この地点でちょろい私は、「え、じゃあ三章四章もこの絵が出てくるの?」と俄然興味が湧いて、この本の世界観に引きずり込まれてしまった。

そして、この本はその期待をゆうに超えてきた。

二章、三章、四章、と、それぞれ独立した物語が展開される。もちろん、それぞれにそれぞれのドラマがあって、どれも素敵な物語だ。けれど、これらは全てエピローグに繋がる序章でしかない。

エピローグを読みながら、すべてが繋がっていく感覚。読みながら鳥肌が止まらなくて、自然と口角が上がってしまうほど綺麗な伏線回収。一枚の絵画の周りで動いていく人々それぞれが、それぞれの人生を生きている、その、それぞれの人生をすべて絵画が繋いでいく。けれど、その絵画自身は変わらない。

時の流れに合わせて変わっていく世界と、変わらない絵画。その対比が、絵画を巡り動いていく人々の世界をより引き立たせる。

なんて美しい作品だろう。

多くを語りたいけど、何も語れなくなってしまうような、そんな本。感想を早く書きたくて仕方なかったし、今だって感想を書こうとしていたはずなのに、感想という感想が出てこない(笑)。「ああ、あのときの!」が連発するので、一回読み終えた後にすぐもう一度読みたくなる。
(実はあまり同じ話を何度も読むのが好きではないのだけれど、この本はすぐに読み直しちゃいました。)

四つのお話それぞれが独立したひとつの物語なのに、ひとつの絵画がそこに存在することで、大きなひとつの物語になる。とにかくその感覚が好き。

なーんか薄っぺらーーーーーーーーい読書感想文になっちゃいました。この本の良さは読んだ人にしか分からないのかなぁ。

伏線回収とか、運命とか、そーいうのが好きな人はぜひ、手に取ってみてくださいな。

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