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[修行日記⑫] 修行二年目突入

 平成27年、上山から一年が過ぎ転役したのは「参禅係」でした。当時は3泊4日の参禅研修というものがあり参加者への作法の指導やお世話をする部署です。前回紹介した「参籠」と同じく永平寺に宿泊するのですが滞在中の過ごし方は全く異なります。まず携帯電話、時計、化粧品などはすべて袋に入れ預け、着物と袴に着替えます。起床から就寝まで修行僧とほぼ同じ行程で過ごしますので覚えなければいけない作法もたくさんあります。廊下の歩き方から食事に使う応量器の扱い方、食事の作法、トイレやお風呂に入る時の作法、法要に参加する際の経本の持ち方等きりがありません。一般の方に事細かな指導をする中で、自分の上山当時を思い出し、初心にかえる時期でもありました。二年目といえども初めての寮舎ですので失敗もあり、参加者への指導不足や他寮舎への連絡の行き違い等でスケジュール通りに行えなかった日の反省会では古参和尚さんから厳しい指導がありました。思いを伝えることの難しさを感じながら試行錯誤を繰り返す日々でした。参加の理由を事前にお聞きすることはありませんでしたが「永平寺の修行は日本一厳しい」という世間の噂を確かめにという方やある程度の覚悟をして申し込まれる方がほとんどでしたので私たちの指導も熱心に聞いてくださいました。一日目は緊張と不安で暗い表情だった方が最終日には笑顔でお帰りになります。非日常的なこの研修から解放され普段の生活に戻れる嬉しさかもしれませんが、「普段の生活が幸せだな」と感じるきっかけになってくれたのであれば嬉しいと思いながら見送っていました。
(第13回に続く)

※現在は「日帰り参禅体験(坐禅)」、又は「1泊2日参禅体験」に変更しています。
本山での規則、指導内容は当時のものです。

齊藤崇広
平成2年新庄市生まれ。曹洞宗大本山永平寺での修行を経て、現在は横浜の寳袋寺で納所中。


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