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元気のない日は、できたてケーキをひとつ。

…やる気が出ない。

毎日続く、炎天下のせいか、
最近あった、嫌なことのせいか。

アクティブに外に出て、何かしてみる。なんてことは
全然する気がしない。

自律神経が乱れているのか、ふと理由なく涙が出たり
終わりのない哲学的なことを考えてしまったり。

そんなときは、普段あまり求めない
甘いものが食べたくなる。
素朴でおいしい、できたて手作りのやつ。

とは言え、私はお菓子はあまり得意ではない。
できるだけ簡単で、洗い物も少ないそんなレシピはないものか…
ネットで検索してみた。

そこで出会った一冊。『眠れぬ夜ケーキを焼いて』。

コミックエッセイで、とても読みやすい。
悶々と考えてしまう夜に、作者はケーキを焼きながら自分と対話する。
作るものはシンプルで思考が散漫なときでも、出来るもの。

洗い物ものをしたり、計りをしまうタイミングまで書いてある。
こういうところが、地味に嬉しい。
作者の方の性格がにじみ出ていて、とても好き。

自分と重なる部分も多い、この本の中から
パウンドケーキを作ってみることにした。

まずは買い出し。重い腰を上げて出かける。
セリアに行って、型やクッキングシートなど諸々を買う。
初期投資、500円くらい。

つぎは、近所のスーパーでバター・卵・薄力粉・お砂糖を買う。
4つの材料でできるのがうれしい。1000円でお釣りが来た。

いよいよ、製作開始。
下準備が出来たら、すべての材料をよく混ぜる。
手作りするときに、毎回思うこと。
お菓子にはこんなにも油脂と糖分が入っているのかと驚く。
悪魔の食べ物だからこそ、こんなにも人は甘味に魅了されるのだろう。

そんなことを考えながら型に流し入れて、オーブンで数十分。
バターの香りでいっぱいな部屋で、スマホも見ず
只々ケーキの膨らむ瞬間を逃すまいとオーブンに張り付く。

暑いオーブンの前でその瞬間を待ちながら
じっと過ごす時間は、まるで瞑想をしているかのように
静かな流れていく。

「大丈夫、大丈夫。」

何も出来ない、気分が落ち込んでいる自分に
何者かがそう言ってくれている気がした。
ゆっくりゆっくり、心が落ち着いていった。

しっかり色づいてぷっくり膨らんだところでオーブンが止まる。
取り出して、熱々を試食してみる。

…そこそこうまく行った。
卵をしっかり感じる、素朴でしあわせな味。
暗かった私の顔は、自然と笑顔になっていた。

甘いものは人を幸せにするチカラがある、と改めて感じた。

お菓子づくりは、
自分と向き合う手助けをしてくれる。
ワクワクする時間をくれる。
自分を笑顔にしてあげることが出来る。

元気がない時、またやってみようと思った。
自分を幸せにするために。

…まずはこの、なにかが爆発したかのような
粉まみれのキッチンを掃除しなければならないけれど。

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