映画「岸辺露伴ルーヴルへ行く」雑感(ネタバレ有)

ドラマ「岸辺露伴は動かない」で見事に岸辺露伴の世界観にハマってしまったわたくしめ。

とうとう映画「岸辺露伴ルーヴルへ行く」も、鑑賞することができました。

映画館で撮ったやつ()

ジャン!(証拠)

ちょうど特典が、荒木飛呂彦先生描き下ろしの露伴先生ということで、大興奮しながら上映会場へ突入。

ここからはネタバレも含む雑な感想をつらつらと書いていこうと思います。

自己満な備忘録記事ですが、公開する以上一応、ネタバレ無理な方は回れ右お願いしますね。


1人で見に行ったのを、後悔、しました。


後悔先に立たず、とは言いますが、この映画を見ながらずっと後悔していました。私の後悔を映した黒い絵は一体何を映し出すのか...あなおそろし。

いや人生は後悔がつきものです。それを嫌というほど見せつけられるような内容だった、ある意味残酷な作品が本作なのですが

何故後悔したかって、...

1人で見に行ったことです...!だって

結構ホラー要素が強くなってませんこと...???

まあ、ドラマの話でいくと、六壁坂村の話もなかなか狂気じみていて、初めて見た時は良い意味での気持ち悪さと、緊迫した状況をこうやって演出するのか...という感動がありました。

そして「これ何を食べたら思いつくんだ...?」というストーリー展開。岸辺露伴は動かない全般に言えることですが

民俗学的な日本に於ける言い伝え(伝承)、特に禁忌にまつわる話を、現代に落とし込んだ上でここまで話を作り込めるんだ!ということに1番心を動かされています。

...と同時に、そういう言い伝えってバチが当たると言いますか、禁忌を冒したらこうなるよという恐怖体験も込みじゃないですか。(しかも露伴先生は禁忌を冒してその向こう側を知ろうとする...)

だから岸辺露伴シリーズって、個人的には怖めの描写が多いなって感じるんですよね。ものすごいホラーって訳でもないけど、日本独特のこう、ああ来るな...って分かるような、あの怖さです。
(※怖がり)

六壁坂村やホットサマー・マーサあたりで正直、1人で見ながら背後が気になったり、カーテンの隙間を凝視したりしてしまっていたのですが

ちょっと今回の映画は、映画というスケールの大きさが影響して、殊更怖く感じましたね...音の大きさと言い...

あの黒い絵の全貌の出方と言い...

ピンボケした状態で映されているなって感じた時、「あ、やばいな、なんか“真っ黒な絵”ではないじゃん、見えるじゃん...」

と思って、スクリーンを見るのに凄く勇気が要りました。笑


髪の毛フェチ、髪を見ておりました。

露伴先生の若き日の思い出に、美しい髪の女性、奈々瀬が登場しますね。

何よりこの奈々瀬、木村文乃さんが演じているのですが、

第一印象が「これ、江戸時代の幽霊画で描かれるような女性じゃん...」でした。(人物デザイン的にはモナリザを意識しているらしい...吉良吉影が喜びそう)

ひと目見ただけで、人ならざる者を思わせる木村文乃さん、とりあえず凄い。

それに加えて、意識されてたのかされていないのかは分からなかったのですが、美しい髪の女性ということで出てきた奈々瀬が、現代的なトゥルトゥルストレート黒髪ではなくて

全体的に毛量が多い、少し縮れた感じの真っ直ぐボワっとした長髪だったんですよね、奈々瀬。

これを見た時、これは現代的な髪の美しさではなく、せいぜい江戸時代ぐらいかな?なんて思っていました。

...作品を見進めていくにつれて、この考察は案外当たった感じになったので、ちょっと嬉しかったです。笑笑


えっ、そっちの子孫か!

奈々瀬はそう、露伴からすると数十代ほど前の血縁者ということだったのですが(ハイパーネタバレ)

ご結婚された相手が岸辺家に連なるのかと思いきや、なんと奈々瀬が元々岸辺家の人間だったようです...ご先祖が子孫の前に現れたという超常現象ですね。すごく羨ましい。

まさか、幽霊にもヘブンス・ドアーできるんだなと思って、そこが1番の衝撃だったんですけど

更にそこから祖先の情報を見られるとは...歴史を勉強している身としては、亡くなった本人の脳内を本感覚で見られる露伴先生が羨ましすぎました...

余談ですが、岸辺家の情報について、岸辺主税って書いてありましたね。主税は百官名の一つで由来は律令制時代の官職名ですから、それなりの武士階級のお家柄でしょうか。

奈々瀬の嫁いだ山村家も御用絵師の家柄で、屋敷の広さや着るもの的にかなり良い暮らしをしていたようですが、奈々瀬の岸辺家も物頭役と書いてあった気がしたので(ガチでここは曖昧なのですが)、武士であれば家老クラスぐらいはあるのかな...と思った次第です。

山村仁左衛門も奈々瀬も、良いところの坊ちゃんでお嬢さんだったことは間違い無いですね!

奈々瀬の理不尽で不安定な怒りは...

奈々瀬が露伴の絵を見たいと言ったから 5月26日は奈々瀬記念日

いいえ、公開日です(こんなことを書いて後悔しています)。

冗談はさておき、祖母宅の元旅館に逗留していた露伴は奈々瀬と出会い、美女を描く練習に奈々瀬をモデルとして、描き続けていましたね。

会心の出来となった奈々瀬モデルの美女が登場する絵を、露伴先生が奈々瀬の元へ持っていくと、奈々瀬は「私をモデルにした絵を描くなんて!」と怒って剪定鋏で絵をズタズタにします。

おそらく全絵描きが悲鳴をあげたであろうこのシーン。奈々瀬の理不尽さに頭の中がハテナだらけになるんですけどね()

この謎の怒りが後半の展開で回収されていくのがとても綺麗でしたね...

奈々瀬の生前、嫁いだ先の仁左衛門は、奈々瀬をモデルとして何枚も絵を描きます。彼は奈々瀬の黒髪を再現したいあまりに何もかも追い求める、研究者気質の絵師でしたが(さながら露伴先生のよう)

取ってはいけない御神木の樹液が、真っ黒な黒髪を描き表すのにちょうど良いことに気づき、その樹液を塗料として絵を描き続けたら...
お奉行にバレてしまいますよね。

奈々瀬の黒髪の美しさを再現すべく黒い樹液を求め続けた仁左衛門を、子孫の露伴先生にも見てしまったんでしょうか。

何事もリアルを突き詰めた絵を描こうとする姿勢は、仁左衛門も露伴先生も共通しています。

結局、祖先の後悔を絶って欲しい気持ちと、巻き込んでしまったらただでは済まないかもしれないという申し訳ない気持ちが奈々瀬を襲った結果

何もかも忘れて

という発言が生まれたんだろうな...と思いました。切ない。

おわりに

最近見た映画の中ではズバ抜けて1位です。それぐらい上質な作品を見られました、大満足です。

作中で逃れられないものの中に、自分自身の後悔と、祖先の後悔というのが入ってきているあたりが、とーってもジョジョっぽい。と言いつつジョジョを履修していないので履修せねば。

後悔を描きつつも、未来への踏ん切りをつけるための後悔というものもあると思うんですよね。そういう意味で、見たあとは不思議と前向きな気分になれました。

おすすめです。

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