排尿と排便

寝たきりであることで一番困るのが、排尿と排便。
今は、膀胱留置カテーテル(通称バルーン)を付けているので、排尿に関してはラクになった。溜まった尿を定期的に捨てに来て下さる看護師さんには感謝しかない。
あるとき、血尿が出るようになり、バルーンが一旦中止になった。尿意をもよおしたら看護師さんを呼ばなければならない。
膝を立てて、お尻の下に尿を集めるための便器のようなものをセッティングされ、そっと布団をかけてもらう。
「終わったら呼んでくださいねー」
トイレに行けない寝たきりの状況では、こうやって出すのは致し方ないのだと、心から納得している。ほんとに。にも関わらず、身体はガンとして拒否するのだ。
「ここはトイレではありません、ここは布団です。ここでは出せません、出すことは許されません!」と言わんばかりに。
パンパンに張った膀胱付近を押してみてもだめ。押せば押すほど尿道を閉じようとするのがわかる。待てど暮らせど出ない。ついに降参して、看護師さんに尿道カテーテルを通して抜いてもらった。
「同じ状況になったら、私でもきっと出ないと思うなー」と慰めてくれた。
200mlくらいで尿意を催すらしいが、700ml回収された。

排便も過酷。
入院して5日経ってもお通じが来ないので、夕食後下剤が処方された。出ない。また夕食後に同じ下剤。次の日、お腹はうごめくのだが、やはり出ない。ついに看護師さんが最終兵器とばかりに液体の下剤をもってきた。しかも「とりあえず10滴から」
10滴⁈子どもが使うような、シロップ薬を入れる小さな小さなカップに、入ってるかどうかわからない量の液体。飲むというよりすすった感じ。
次の日の朝食後、うごめく腸内。
「ヤバい!」
ナースコール後、腰の下に便器がセッティングされる。身体はまたも拒否反応するも、蓋になっていた硬い便が容赦なく押し出される。コロンっと音がした。そのあとは、まるで『千と千尋の神隠し』のカオナシである。千に「苦団子」を口に入れられた後のカオナシである。
「ドバドバ出ますよ」と言いながら薬を差し出した看護師さんの不敵な笑いが脳裏をよぎった。
今も便秘中。今日出なければ、またあの10滴というお約束になっている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?