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社会派映画製作会社、20年の歴史に幕|今日の映画ニュース

21世紀の社会派映画の雄とも言える製作会社 Participant が、20年の歴史幕を閉じる。

2004年に設立されて以降、『不都合な真実』(2006)や『ザ・コーブ』(2009)、『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』(2011)、もっとも最近では『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)、『ワンダー 君は太陽』(2017)、『グリーン・ブック』(2018)『ROMA/ローマ』(2018)など、クオリティの高いストーリーテリングを誇る社会派映画を数多く手掛け、21ものアカデミー賞を受賞するなど(ノミネート数は86)常連とも言えるくらいの存在感ある会社であっただけに、諸行無常の感がある。

しかし、Ebay の初代社長でParticipantの創業者兼会長である Jeff Skoll 氏が、このたび会社の継続を止めることを決定。創業以降、何億ドルもの資金を注ぎ込んできただけに、その決定もひときわ重いものだったと言えよう。

参考まで、Participantのこれまでの作品で最も興行的に成功した作品をリストにて表示する(Imdb Pro より)

公開映画作品141のうち、全世界興収が1億ドル($100M)を超えたのはわずか10本程度であった。

継続的な収益性について、どうしても課題があったようだ。ヒット作品は最高で全世界3億ドルの興行収入を挙げてはいるが、そうでない作品のほうが多く、赤字分はSkoll氏が被ってきたのだろう。しかし、社会に与えるインパクトという観点から、お金には換算されない付加価値を生み出してきたという。その影響は、社会的なメッセージ性をもった製作会社、具体的にはバラク・オバマ元大統領の Higher Ground、『グローリー/明日への行進』で知られるエイヴァ・デュヴァーネイの Arrayなどの成立に及んでいると記事は指摘する。あながち間違っていないだろう。

インパクト投資と言われて久しいが、社会的インパクトを実行するうえでの資本主義の基盤の必要性、芸術性との両立の難しさを痛感する出来事だ。

文責:三谷匠衡 - noteXInstagramPodcast

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(具体的にどのような社会的インパクトがあったかについての言及があるのはDeadlineの記事。余裕があればご参照いただきたい)

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