一枚のコインの裏と表

大谷選手の活躍が連日テレビニュースで取り上げられている。
僕は特に野球ファンというわけではないので、普段大リーグ中継は観ない。
どちらかと言えば、その時間があるならもっと海外や国内のドキュメンタリーを放送してほしいと思っているほうだ。
僕が気になるのは彼の年俸の方だ。
大谷の年俸は約100億円だそうだ。
僕が好きなサッカー界にはメッシがいる。
彼の最高年俸は、四年間で約858億円というのがあった。
大谷選手が、元通訳の男に24億円をかすめ取られた事件があった。
庶民にとっては人生が破綻してしまうような大損害だが、ドジャースと10年で1000億円の契約をした大谷選手にとっては、ひょっとしたらさほど深刻ではないのかもしれない。/


大谷選手やメッシが巨額の契約金を獲得する陰には、日々の生活に追われる多くの選手がいるのではないか?
アメリカメジャーリーグのマイナー選手の最低年俸は、3Aは3万5800ドル(約483万円)、2Aは3万250ドルである。
現在の為替レート(1ドル=154円)で計算すると、3Aは540万円、2Aは465万円となる。
ちなみに、日本のJリーグのJ3の平均年収は240万円~300万円と推定されている。
つまり、大谷の年俸は3Aの選手の1851倍、2Aの選手の2150倍である。
同様に、メッシの契約金(年214.5億円)は日本のJ3の選手の7150倍である。
もしも、大谷やメッシのようなスター選手たちに支払う年俸を半分に抑えることができれば、底辺の選手たちの暮らしがもっとずっと楽になるのではないだろうか。/


もちろん、この現象は社会全体に蔓延している。
大企業の役員報酬を見てみよう。
2021年の東洋経済オンラインを見ると、
2年連続で1位となったのは、セブン&アイ・ホールディングス取締役で、アメリカのセブン-イレブンのトップであるジョセフ・マイケル・デピント氏。報酬は27億5500万円だ。
2位は、ソフトバンクグループの取締役を務めていたサイモン・シガース氏が18億8200万円。
日本の大企業の役員報酬を調べたはずなのに、出てきた名前が外国人ばかりなので、びっくりして二度見してしまった。/

一方で、厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、令和4年の非正規雇用の年収は306万円である。
上記のセブン&アイ・ホールディングス取締役氏の報酬は、彼らの年収の900倍、ソフトバンクグループの取締役氏は615倍だ。
いったい、一人の人間や一家族が生活していくのにそれほどの金が必要だろうか?
まるで、「勝者総取り方式」だ。
最低賃金を規制する法はあっても、最高報酬を規制する法はない。
たとえそれが多くの非正規雇用労働者の生活困窮とコインの裏表になっていたとしてもだ。/

僕のつぶやきをいつも読んでくれている人には、もう耳にタコができてしまっている言葉だとは思うが、どうしてもケインズの言葉を思い出してしまう。


【大戦後にわれわれ自身がその中にいる,退廃した国際的で,個人主義的資本主義は成功ではな い。それは知的でもなく,美しくもなく,公正でもなく,道徳的でもない― そして,善をもた らさない。要するに,われわれはそれを好まないし,われわれはそれを軽蔑し始めている。われわれはそれの代わりに何を据えるのかしらと思うとき,非常に困惑する。】( ジョン・メイナード・ケインズ「国家的自給」)

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