『短篇で読むシチリア』(武谷なおみ編訳/みすず書房「大人の本棚」)

フランシス・フォード・コッポラ監督の映画『ゴッドファーザー』製作の裏側を描いたドラマ「ジ・オファー/ゴッドファーザーに賭けた男」から、マフィアの故郷シチリアへとやって来た。
ドラマの方は『ゴッドファーザー』にまつわる数々のトリビアが散りばめられていて、一瞬たりとも飽きさせることがなかった。/


「言語学」(レオナルド・ショーシャ):

【「(略)この言葉を記載した最初のシチリアの辞典は、一八六八年出版の、トライーナ辞典だ。(略)」
(略)
「(略)辞典によると、トスカーナ地方ではmaffiaという言葉は貧しさを意味している。『そして真の貧しさは、凶暴な力を持つだけで、自らを偉大な男だと信じ込むことである。そのことは逆にひどい残忍性を、つまり愚かな獣性を示しているのだが』。(略)」】/

紹介されていたいくつかの定義の中では、これが一番ドン・プーチンの横顔にピッタリだ。/


「幼年時代の場所」(ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーザ):

【実際にもう、モンテヴァーゴにさしかかっていた。四時間も走ってようやく目に入る最初の人里である。だが人里とは名ばかり!広くて殺風景な道、容赦なく照りつける太陽と貧しさにひとしく打ちのめされた家々。人っ子ひとり見当たらず、いたのは数匹の豚と、数匹の老いぼれた猫だけだ。】/

埃っぽい田舎の風景が連想の引き鉄を引いた。
映画『ゴッドファーザー PART Ⅲ』のラストで、老いさらばえたマイケル・コルレオーネが朽ち果てた広場は、あれはシチリアではなかったか?
一匹の痩せこけた犬だけに看取られて、土ぼこりの中へと崩れ落ちていった。
ドン・プーチンは、自らの「場所」をもう見つけただろうか?/

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