パン屋の　おはなし　あのね　”カリカリ・・・”

カリカリ・・・・
「ん？・・・」
開店前のお掃除は、お店の前を掃いておしまい。
奥さん今店の中へ戻ってきたとこ。
振り返って見ると、ドアの外には一匹の犬が・・・・
中へ入りたいのでしょうか、前足で『カリカリ』しています。
そこそこ大きな犬です。シェパードのような風貌ですが、それにしちゃあ小柄かしら。
・・・おおかみ・・・・・まさかねえ・・・

「あらっ　おはよ　お腹へっちゃった？」
「ちょっとまっててね」
奥さんはドッグパンにウインナーをはさんだぱんをひとつ・・・・とろうとしてやめました。
そしてまだはさんでいないパンをひとつとり、真ん中に切れ目を入れてウインナーをはさみました
二本も
「さあ　どうぞ。マスタードは入ってないから平気よ」
ほんとになっつこいですねえ。
いや、奥さんのほうよ。
その犬は、あっという間に平らげて、尻尾をブルンブルンふって、かかがんでいた奥さんのひざ小僧にそっと右足を乗せ
「くーん」
「はい、おそまつさまでした。」
「これからどこかへ　おでかけ？」
「あらあら　ちょっと　そっちはだめなんだけど・・・」
その犬が店の中へ・・・・まだ食べたりないのかしら　大変です！
？陳列棚のほうへは目もくれずレジの後ろのほうへ・・・・
後ろにまわると・・・・それこそ匍匐前進・・・やつの前まで来てぴたりと止まりました。
「ウゥ～　ククーン」
何やら唸っています。
そうしてバックで匍匐・・・・後進。
やっぱり陳列棚には目もくれず表に出てきました。
「・・・ひょっとして、お友だち？」
見送るように外に出てきた奥さんが聞きました。
「ハアハア」
言いながら尻尾をブルンブルン。
「ワン」と小さく鳴いて走り出しました。
「いってらっしゃー・・・？」
戻ってきました。
奥さんのまわりを・・・
一回・・・・・
二回・・・・・・まわって
「ワーン」今度は大きな声で一吠え、また走り出しました。
まるで、弾丸です。高台の住宅地へ続く斜面に向けて・・・・・
「気をつけてねー」
「あっ　あぶない！バスよバスー！！！！」
ぶつかるっ！ぶつかった！
あーーーーーーーーーーー
ん？斜面の草むらが朝露を吹き上げて上へ上へ・・・・
ぶつかった・・・よね・・・・・
でっでも朝露のしぶきはもうすぐ頂上まで・・・
ひゃーあの犬が飛び出しました。一瞬でしたけど・・・どこかへ飛んでいきましたよ。
奥さん口あいたまんま・・・
「どうしたん？」
「犬が来たの・・・パンあげたのォ・・・やつにあいさつしてぇ・・・どっかいったのォ・・・・」
「そ～～」
「うん～　そうなのォ～」
へんてこりんな朝でした。



・・・ところで、わざわざもどって二回まわったのって、何かのおまじないかしら・・・

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい