06_勇気凛凛ルリの色 / 浅田次郎著_200706

人情ものから歴史小説まで、当代随一の人気作家の初期エッセイ集。いかにも昭和のオッサンが書いた濃いエッセイが並ぶが、それにしても、わずか四半世紀前というのはこんなにおおらか時代だったのか、と改めて驚かされる。内容的にも詐欺まがいの実体験談が並ぶかと思えば、それを伝える文章表現自体も、今では差別やセクハラと糾弾されてもおかしくないようなものばかりだったりする。おそらく発表媒体が、「週刊現代」という下世話さも許される週刊誌だったところもあるのだろうが、それにしても昭和のオッサンというのは、こうした野蛮さも全然許されたのだなぁ、と羨ましささえ覚えてしまう。もちろん、そうは言っても、自虐的笑いから泣きを誘う浅田節までその筆捌きは見事だ。本業の長編小説を書き下ろしつつ、並行して毎週こうした軽妙なエッセイを描き続けるその力量には目を見張るしかない。

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