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07.庄野潤三の本 山の上の家 / 夏葉社_200707

こだわりのある本を丁寧に作り続けるひとり出版社「夏葉社」。作家庄野潤三については名前しか知らなかったが、「夏葉社」というその出版社の姿勢に惹かれて読んでみた。作家案内と銘打たれており、その手の本はおおむね実用書的なシンプルな作りが多いものだが、本書を手にしてまず目を奪われたのが装丁や造本の美しさだった。編集人の愛情がひしひしと伝わってくる出来というのだろうか。庄野潤三が生涯に渡って描き続けたという「自らの家族の姿」。その温かな家族の体温が溢れ出してくるような本に仕上がっている。評論家による作家評などを最小限にとどめ、家族の手による父庄野潤三への小文が散りばめられいるところがまたいい。理念や思想を大言壮語することなく、生活の中のささいな細部に目を凝らした作家の姿がそこからも偲ばれてくるようだ。

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