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13.珈琲屋 / 大坊勝次 森光宗男著_200903

東の「大坊珈琲店」と西の「珈琲美美」。東京青山と九州博多でそれぞれ珈琲屋を営んでいた大坊氏と森光氏の対談集になる。美味しい珈琲を淹れるためにはこれだけの個の物語が横たわっているのか。上下二段組のボリュームある構成になるが、読んでいるとまるで茶道にも通じるような奥深さに強く引き込まれてしまう。極上の珈琲を求めて二人が探究熱心なのは当然だが、論理的に着地点を設けてそれに向かってゆく森光と、一つひとつ地道に積み重ねてゆくことで無意識に目的地に向かってゆく大坊の違いが面白い。「人々は珈琲店でコーヒーを飲む時、ちょっと立ち止まります。立ち止まって、これまでのことを思い浮かべます。これからのことを考えます。珈琲屋がお渡しできるものは、一杯のコーヒーだけです。一杯のコーヒーが、少しでも人の心を鎮められるとすれば、珈琲屋にとってこんな嬉しいことはありません(大坊勝次)」。この一冊の本を読む時間もまた、大坊珈琲店でコーヒーを飲むのと同じ豊潤な時間だったのは間違いない。

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