08.日々の一滴 / 藤原新也著_200708

2011年の東日本大震災から2020年3月までの雑誌連載をまとめた一冊。
一編あたりが1000〜1500文字程度と短めなところに少し物足りなさを感じるが、藤原節は健在といったところか。藤原新也といえば写真と文章で時代を語るパイオニアであり、後追いとも呼べるフォロワーをこれまで数多く産み出してきた。しかし本書を読むと、やはりこの人の発想の豊かさは突出していると改めて気づかされる。いや、もしかしたらそれは発想というよりも、ただ単に勘の鋭さと言った方がいいのかもしれない。「勘の鋭さ」が作家としての生命線というのも凄い話だが、それが言語感覚の鋭さに繋がっているところがこの人の唯一無比なところだろう。新しいパラダイムを促すような深度はないが、日常の風景がちょっと違って見えるような、そんな心の小さな旅に誘ってくれる秀作。

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