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10.BABEL / 広川泰士著_200710

写真家広川泰士が大判カメラで撮り下ろした日本の風景。と言っても、そこに映し出されているのはいわゆる風景写真ではない。わたしたちが暮らしているこの文明社会とは何なのか、自然とどのように向き合ってきたのか、そしてどこへ向かおうとしているのか。そうした諸相が写真を通して克明に精緻に浮かび上がってくる。一見このように書くと社会派ドキュメンタリーのようにも聞こえかねないが、本書は決して声高に批判したり糾弾しようとするものではない。東京の姿を、福島の姿を、また日本全国で切り拓かれてゆく自然の姿を生々しく描写することで、見る者に大きな問いを突きつけてくる。本書を眺めていると、黙示録という言葉が浮かんでくる。それはBABELという題名ともリンクするのかも知れないけれど、とにかく人間の原罪、あるいは有志以来の人類の進歩とは何なのか。そんな大きな時間軸が写真の中に流れているのを感じさせてくれる作品集だ。

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