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231024_エレメンタル批評文集 / 菅啓次郎

詩人であり比較文化研究者である菅啓次郎氏の作品選集。1990年代初頭から最近のものまで二十数編が収められている。帯には、「世界文学論、翻訳論を集成」と記されているが、人類学、アメリカ文明論、旅、自然科学など、ジャンルを自在に横断する姿はまさに詩人の柔軟な魂が躍動しているのを感じさせる。世界を細分化し分析し論理的に説明する学者や評論家はいくらでもいるが、菅氏ほど世界を全体的かつ根源的に捉えようとする人は本当に数少ない。しかもそれを冷たいロジカルな言葉ではなく、血の通った生き生きとした言葉で綴る菅氏の筆致は、まさに現代の語り部と呼ぶにふさわしいみずみずしさに溢れている。

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