09.夕暮の緑の光 / 野呂邦暢随筆選 岡崎武志編_200709

1980年に42歳の若さで亡くなった芥川賞作家の随筆集。最近は芥川賞を獲ってもその後が続かずに忘れ去られてゆく作家も多い中、野呂邦暢は地味ながらも根強いファンが多く、また再評価も進んでいるようだ。野呂の最大の魅力は、その端正な文体にあると言える。本書の編者である岡崎武志は、解説の中に次のように記している。「ちょっとした身辺雑記を書く場合でも、ことばを選ぶ厳しさと端正なたた住まいを感じさせる文体に揺るぎはなかった」。確かに自分自身こうしてNOTEに走り書きをしていること自体、なんだか恥ずかしくなるような凄みと気品を野呂の作品には感じてしまう。難解というのでもない。三島由紀夫のような絢爛豪華な文体というのでもない。詩情あふれる静かな激しさというのだろうか。散文、雑文書きの方にはぜひ一度手に取って欲しい作家だ。

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