自治体史に残らない話
歴史雑記161
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はじめに
歴史に関心があり、自分でも調べものをするひとであれば、自治体史のお世話になることも多いだろう。
自治体史というのは、◯◯市史とか◯◯村史とかいうやつのことであり、図書館に行けば、近隣のものや県史なども郷土史とか地域史などのコーナーに置いてある。
これらの自治体史には、かならず資料編が付属していて、奈良県の自治体なら寧楽遺文や平安遺文などに入っている文書のうち、当該の自治体に関連するものが活字で載っていたり、『多聞院日記』から関連箇所が抜き出されていて参考になる。
加えて、寺社や旧家の文書類なども入っているから、かなり細かく当該地域について知ることができる。
とはいえ、これらの自治体史には載らない情報というのもある。
今日はそういう話である。
「辻」という国字について
ここで、少し話が変わるが、結果的には近道になるので、「辻」について触れておきたい。
知っている人もいると思うが、道が交わるところを意味する「辻」という漢字は国字(日本でつくられた漢字)である。平安時代には見えるというので、国字としては古いほうに入るようだ。
字源について詳しく触れることが目的ではないので、そこのところは軽く触れるにとどめるが、しんにょうは「⾡(ちゃく)」で、それに交差を意味する十字が加わった形をしている。
この、「辻」については民俗学的な研究蓄積がある。詳しく述べるとどこまでも詳しくなってしまうのでここも省くが、類型的に「異界との境界」とみなすことには慎重な議論もあるものの、そこで非日常的な祭祀なりが行われたこと自体は認めてよい。
ある「辻」における事例(平成中期)
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