【カサンドラ】 22.2019-ブログ-2
自宅に帰ると僕は敢えて暗い自室でPCを開いた。
ほん怖。を見ている時のような頻脈と閉塞感に包まれながらPCでLINEを開き、そこから飛んでみると、
先日大地と一緒に入ったコーヒーショップのマークをアレンジした大きなアイコンと、
真っ白な背景に大きなブロック体で「SOLITUDE」と記されたロゴが表示された。
僕はゆっくりとカーソルを動かし、最後の更新日を確認した。
「2019年 1月 28日」
僕は思わずハッと上体を逸らせキーボードから指を離した。
事件のほんの1カ月前だ。
その日の記事を読んでみた。
”15の夜”と題されたそのブログは、どうやら渡辺の誕生日に書かれたものらしい。
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我々世代の少年期の応援歌 15の夜/尾崎豊…
(盗んだバイクで走り出すヤツですw)
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自分は誰にも理解してもらえないと拗ねたまま
大人達が大事そうに握りしめている世間体とか ルールとか
そうゆうものと戦って 壊してしまえば
いつか あの頃の自分を救ってあげられるような
気がしていたのかもしれません
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数年前にふっと “この歳で死ぬ”という感覚に襲われたことがありました
そして今日 その年齢になりました
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それが本当の死を意味するのか
身体や心のどこかが死ぬのか
はたまた以前のようにリセットボタンを押して3周目の人生に入るのか(笑)
わかりませんが
間違いなく何かが動く年なんだとは思います
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「人が外側の何かに夢中になるのには
2つの要因がある」
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ひとつはその事柄が本当に好きで もはや使命とでもいえるものである場合
もうひとつは自分自身から目を逸らすための囮にしている場合
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是非 前者でありたい ありたかったけれどもw
いや むしろ前者でありながら
今まで一度も”何かから逃げている”という自覚がなくなったことはなく(笑)
わかっていながら 音楽と 文章を書くことと
に 没頭することで それを見なくても生きてこれた
一種の 麻薬のようなものでもありました
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いつか必ず向き合うことにはなるということも
昔からどこかで知っていたように思います
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本当 人生ってうまくできてるよ
完璧で壮大なロールプレイングゲームだ
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やらなきゃいけないことがあるからといって
もうライブを見る時間もブログ書く時間もないですというお知らせ記事ではありませんw
今まで通り足繁く通い詰め ここで厚かましく語り続けるのだと思います
しかしそれがそのまま続いていくのか
徐々に興味を失っていくのか
今まで確信を持っていたことが少し わからなくなりました
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今まで出逢ってきた音楽 バンドさん達は
少なくても私がここに辿り着くために
必要であったことは間違いなく
その音達は熱いメッセージと共に
15歳のまま走り続けていた私にしっかりと届きました
それが血肉となり 私の思考を動かしたなら
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音楽は人を変えることができるよ
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See you next gig.
Love everyone.Thank you♡
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https://solitude-klang.com/15の夜
「SOLITUDE」とは孤独という意味の英語だけれど、klangは何かとググってみると"音"や"響き"を意味するドイツ語らしい。
句読点を使わない独特の文体で書かれたブログ。
これが、あの渡辺が書いた文章なのかと思うと
何だか不思議で
どちらかというと、優等生だった頃の渡辺が書いていると考えるほうがしっくりきた。
大地の店を訪れた時に、バンドを追いかけているという話をしていたと聞いた。
確かに、先ほど送られてきた画像を見るとそうゆう風にも見える。
しかしそれからどうして、家庭内殺人に繋がってしまったのだろうか。
この文面を見ると、既に人生を終わりにしようとしている感触が伺える。
今だからそう思うのだろうか。
逃げ続けてきた課題というのが
彼女の両親のことだったのだろうか。
7年にも渡り綴られた過去記事を辿っていたら
数時間で40ページほどの記事を読み尽くしてしまった。
しかし内容がマニアックすぎて僕にはわからないものばかりで
事件に繋がりそうな文言は殆ど見つけることができなかった。
残りは、次の休みに読もう。
僕はPCの電源を落として、大地にLINEを返した。
「マニアックすぎてわけがわからん」
10分ほどして大地から返信が来た。
「俺もわからん」
「他にもいくつもブログのアカウントがあるみたいでさ」
「仕事終わったらまた共有するわ」
正直、もういい・・とも思っていたけれど
わかった、とスタンプで返事をしてスマホをポケットに仕舞った。
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