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自作 vs. 市販品 ~蜜蝋クリームの性質~

先日オンライン販売を開始した「白いみつろうクリーム」。

今回はこちらの性質に関する基礎実験を行った結果をご紹介したいと思います!


1)使用した蜜蝋クリーム

<本品>
白いみつろうクリーム
◆成分:ホホバオイル、蜜蝋、ひまし油

<革用>
市販の蜜蝋クリーム(ドイツ製)
◆成分:ホホバオイル、蜜蝋、ラノリン、ワセリン

<木工用>
市販の蜜蝋クリーム(国産)
◆成分:菜種油、亜麻仁油、蜜蝋、椿油、ヒバ油


2)性状(塗り広げやすさ、香り)

こちらについてはすでに先日の記事や販売ページでもご紹介しているおりますが、もう少し詳細を追記しながら改めて。

上記画像内に記載しているとおり、本品は比較的ぼってり取れる(冷たくないシャーベットみたいな感じ?)のに対し、市販の革用クリームはワセリンっぽい、水あめのような粘りのある性状です。

いずれも、無加工のヌメ革でも比較的伸びよく塗り広がってくれるので、指でも塗り広げることができました。

※どちらもホホバオイルが高配合されていて、染み込む速度も速いので、多少の手早さは求められますが・・・


<白いみつろうクリームを塗り広げる様子>

<革用クリームを塗り広げる様子>



対して市販の木工用クリームは指に取るとだいぶオイルっぽい感じで、上記二つに比べると、無加工のヌメ革のような表面抵抗が大きい素材に指で塗り広げるのはかなり困難でした。

<木工用クリームを塗り広げる様子>


においについては、本品革用無臭木工用は亜麻仁油とヒバ油のにおいが混ざって独特のにおいとなっており、気になる人と気にならない人で二分されそうな感じでした。

※私はヒバの香りは好きなのですが、亜麻仁油のにおいが苦手なので、正直この製品の香りは・・・ごめんなさい😓


3)塗った後の基材の表面

上記の「指塗り実験」とは別に、布を使ってきちんと塗り広げた後の様子をご紹介します。

<@無加工ヌメ革>


分かりづらくて恐縮ですが、「白いみつろうクリーム(本品)」と「木工用」は、斜光で見ると少し白っぽい膜を張ったような感じにテカっています。
対して「革用」はそのような膜感があまり見られませんでした

これはあくまでも推察ですが、おそらく「本品」と「木工用「革用」に比べて蜜蝋の配合量が多いためこのような表面性の違いが出たのではないかと考えます。

表面を保護するためには、革に染み込まず表面に留まる物質が不可欠な訳ですが、「本品」も「木工用」も蜜蝋以外のものは革の中に浸み込んでしまうオイルしか配合されていません。
対して「革用」には蜜蝋の他にワセリンが含まれていますので、蜜蝋の配合量を他の2つと比べて減らせるのでは?と考えております。
指に取った時の感触がワセリンっぽいのもそのためかと。

※ちなみに話が脱線しますが、ワセリンは石油由来の物質ですので、自然素材派の方には個人的にはおススメいたしません。


<@ヒノキ板(ホームセンターで売られているままの表面状態)

どうもうまく写真に撮れなかったのですが、プレーナー加工のみ(ヤスリでの仕上げ無し)のヒノキ板に対して塗った際には、いずれも蜜蝋クリームらしい上品な艶が出て、色味が若干濃くなりました(濡れ色)。
三者に明確な差は認められませんでした


4)撥水性

こちらは、すでに前回の記事でご紹介した内容の繰り返しとなりますが、簡単にご紹介します。

<@無加工ヌメ革>

上記の蜜蝋(の薄膜)のおかげなのか、「本品」と「木工用」は「革用」と比べて高い撥水性を有しておりました。


<@ヒノキ板(ホームセンターで売られているままの表面状態)

こちらは三者ともに同等の撥水性を示しました。
革用の水滴が他の2つに比べると少しコロンとしていて、そういう意味では革用が一番撥水性が高いかもしれません。

ただ、一度水がかかったところに再度水滴を垂らした場合にどうなるか等、繰り返し実験は行っていないのと、あくまでも「撥水性(水がかかった時に水を弾けるか)」を調べただけで、「耐水性(水に浸かった時にどうか)」については調べられておりませんので、その点はご了承ください。


5)耐候性

こちらの実験は、「白いみつろうクリーム(本品)」に対してしか行っておりません。

なぜこのような実験をしようと思ったかと言うと、本品に使用しているホホバオイルは非常に安定性が高いオイルなのですが、もう一つの原料であるひまし油の酸化安定性が低いという情報を目にしたためです。

これまで自作の石鹸を作る中で、ひまし油の安定性が低いと感じたことはなかったのですが、不安要素を持ったまま販売開始することはできないので、以下のような最低限の実験を行いました。


<使用した材料>

左から、
染料で染色された牛革(濃茶色の革)
顔料で染色された牛革(黄色の革)
無塗装の牛革(ヌメ革)

そして木材として・・・

こちらは端材として手に入れたものなので断定できませんが、おそらくトチの木と思います。


これら革/木材を写真のように2枚ずつ用意し、一方に「白いみつろうクリーム」を塗布、もう片方は無塗装のまま、全てのサンプルが約1か月間天日に当たるよう管理しました。


また、クリーム自体の安定性も確かめるため、2つのポリ袋の中に入れたクリームを、一方は天日に当て、もう一方を室内で管理しました。
※チャック付きの袋でしたが、チャックは密閉せずに管理しました。


↓↓↓ 1か月後 ↓↓↓


革の方は、塗布直後に比べてだいぶ「塗った感」が無くなっており、塗った直後はかなり色味が濃くなったりテカっていたりしていたのが、無塗装とあまり違いが分からない程度に変化していました。

木材の方は塗った直後と1か月後で見た目の変化はあまり大きく認められませんでした


撥水実験をしてみると、染料で染色した牛革の撥水性が低くなっていることが明らかとなりました。
無塗装のヌメ革の場合は高撥水性を保っていたので、革の繊維の状態(密度など)や、仕上げ剤との相性によって効果の持続性には違いがありそうです。

顔料塗装のサンプルについては、クリーム塗布の有無にかかわらず撥水しています。
これは元々バリバリ化学薬品を使って表面コーティングされたものだったためと考えられます。

このような種類の革の場合、蜜蝋クリームを塗っても浸み込む様子はなく、単に表面に載せただけという感じだったので、そもそも蜜蝋クリームを使う意味はないでしょう・・・😅


ちなみに、クリームだけを天日に当てたものはこちら↓


天日に当てずにとっておいたサンプルは、何かの拍子に捨ててしまったようで残っておりませんでした(汗)が、それと比較するまでもなく、日に当てた物でも特に変色するなどの変化は認められませんでした

においも確認しましたが、特に異臭がするようなこともありませんでしたので、ほっと一安心です。

前回の記事に書いたとおり、この「白いみつろうクリーム」を開発するまでは、亜麻仁油クルミ油を使った蜜蝋クリームを自作して使用していました。
そちらに関しては、時間が経つと明らかに酸化した臭いがするようになってしまい、使用するのがためらわれる状態だったので、今回のこの蜜蝋クリームはそれと比べて安心して使用できそうです🎵


6)まとめ

以上、一連の結果をまとめます。


まだ開発したての商品なので、今後自分でもどんどん使用し、データを蓄積し、必要に応じて製品も改良していきたいと思います!!


長い記事に最後までお付き合いいただきまして、どうもありがとうございました^^









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