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詩【やわらかな季節】

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妊娠・出産・子育てにまつわる詩、ときどきエッセイ。 ちいさいひとたちとの、ひととき。
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記事一覧

「親の木」

親と言う字は 「木の横に立って見る」と書くのだと 教えてくれた人があって そんな木持ってな…

有門萌子
1年前
44

「範囲」

子らと離れ ひとりきりの時間を過ごすと 使命を失って余ったわたしの注意力たちが ちいさな彼…

有門萌子
1年前
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「出会い」

園へ向かう途中の 交差点にある草垣に 息子は毎朝あいさつをしに行く 「いた」 おおきな蜘蛛を…

有門萌子
1年前
40

「やわらかな季節」

ちいさな手をひいて歩く道は 空高く昇った日に照らされ 流れるものはすべて ゆったりと動いて…

有門萌子
1年前
61

孕みたてなかばの野良女はカタツムリになりたい

どうして人間は子宮のある個体とそうでない個体に分かれているんだろう。細かい顔のつくりこそ…

有門萌子
1年前
47

「思いどおりにいかない世界で」

帰り道 いつものお店で買ったパンを 公園で食べてしまって ひとしきり遊んだあと またパンを買…

有門萌子
2年前
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「おかえり」

家に帰ってくると息子は 大きな声で元気よく 「ただいま」じゃなくて 「おかえり」っていう ふたつ年下の妹が 「ただいま」というその隣で 少し、にやにやしながら 「おかえり」っていう 彼らを「おかえり」と出迎えながら そうだよな、とふと思う わたしの方が帰ってきたのだ ちいさなきみの目の前に 世界の方が帰ってきたのだ すべてが新しく見えるきみの前に だからわたしが きみの世界に言う「ただいま」 いつだって 「おかえり、この目の前の世界」

「知らないことは冷蔵庫で冷やすの」

兄とのおままごとの途中 スプーンの所在を 尋ねられた娘は 「しらない」 に続けて言った 「し…

有門萌子
2年前
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【詩】てぶくろ

いっしょに湯船に浸かって おもちゃで遊んでいた娘が ちいさなじょうろを わたしの手に被せて …

有門萌子
2年前
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【詩】やさしさ

半分は優しさで 出来ているらしい バファリンを飲んでも わたしの半分も 優しくなれず 無造作…

有門萌子
2年前
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【詩】月をもらう

「あ、おつきさま」と 空に手を伸ばしたきみは あーむ、といって月をとり ちぎって食べるまね…

有門萌子
2年前
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【詩】理由

強くなれる 理由を知った と、きみが歌うたび わたしの理由は あなただったと 教えてもらっ…

有門萌子
2年前
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「泣き声」

どうしてもと駄々をこねる あなたの大きな声に 追い詰められ 責められているような気がして 割…

有門萌子
2年前
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詩という行為の先に見えるのだとしたら

先日、私が数年前にクラウドファンディングで絵本を2冊出した、ということを知った知人からこう尋ねられた。 「どうして絵本を描こうと思ったのですか」 甦ったのは8年前の記憶。 当時、就活生だった私はコピーライターとして京都の広告会社に勤めるか、東京の大手人材会社に行くかで悩んでいた。 ある冬の日の朝、京都の広告会社へのインターン出勤前、四条烏丸のカフェベローチェでリクルートスーツの私はホットココアを飲みながら窓の外を見ていた。 考えていたのは 「どうして私は"人間"に生