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満月の夜

不思議な学校に入学した。

一年生のわたしはいろいろなことがわからず、

校舎は地下3階から地上15階くらいまであって、とにかく教室も多く、校舎の外にも広大な土地が広がっているもんだから、次の授業の場所にたどり着くのも大変。

極寒の吹雪く森の中に山小屋が2軒ほど立っていて、それぞれが授業の場所となっている。

一方の山小屋にはキッチンがあって、大鍋で麻婆豆腐やとろりとした煮込みを作るあっちゃんの姿があった。

みんなでふうふう言いながら、できたての煮込みをごはんにかけて食べたりした。

外は極寒なのに、中はぬくぬくとしていて、わたしはキャミソールワンピースにぺらぺらのカーディガンで過ごしていた。

友達はみな、いつのまにかお互いに教えあったり調べたりして、次の授業に向かったらしい。

いったん自分の部屋に荷物を置きにいったわたしは、もう授業開始のベルが鳴っているのに、向かうべき教室がわからないでいる。

こういうこと、前にもよくあったな。

途方に暮れながらも、検討をつけて、まず体育館に向かってみる。

すでに女の先生2人の授業が始まっていて、でもそこはわたしが専攻する授業ではないらしかった。

正直に尋ねた。次の授業の場所がわからない、と。

「7階で、ハンバーグを作る授業なら、とにかくスネ肉を捌くときに気をつけてね!」

と、アドバイスを受ける。

でも、ハンバーグを作る授業なんてとっていない気がするし、作りたい気分でもなかった。

でもとにかく、向かってみることにしてエレベーターに乗った。

7階で降りたものの、前に見た7階の風景と随分違う。

ショッピングモールの屋上駐車場みたいに広い空間に、人や車、店が並んでいて、遠くの方には緑が広がっている。

全然わからない。

ここはどこ? わたしの知らない7階。

泣きそうになりながら、そばにいたおじさんに尋ねる。

「7階でハンバーグを作る授業を受けたくて来たのに、見覚えがない場所なんです。どこに行けばたどり着けるのでしょうか。」

するとおじさん、

「あーそっちか!ここからまーっすぐ行ったとこなんだけど、遠いんだよなぁ。今日はやめときな!」

と明るく言うもんだから、

(そんな・・・だって授業が始まってるし、一年生初っ端からこんなんじゃ・・・)

なんて心の内でぶわーっと絶望感が広がってきて、いつのまにか大泣きしていた。

見かねたおじさんが、ちょうど近くにやってきた外国風のタクシーを呼び止めてくれた。

「ちょっとこの子を向こうの7階フロアまで送ってやってくれ。」

そうしてわたしは助手席に飛び乗って出発。

なぜか前方には可愛らしいおばあさまが先導切って案内してくれている。バイクか自転車か、なにか見たことのない可愛らしい、でもスピーディーな乗り物にまたがっていた。

野原を突き抜けて、木の柵を飛び越えて(おばあさんもタクシーもなぜかは軽々とやってのけた)、森の向こうの街に向かってぐんぐん進んでいくうちに、わたしはなんだか愉快な気持ちになってきて、不思議な光景をぱしゃっと写真におさめていた。


涙はすっかりどこかへ消えていて、一体全体これからどこにたどり着くんだろう?と、わくわくどきどきする気持ちに胸が高鳴っていた。



2020.9.2 満月の夜の夢の話

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