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5W1H兄弟

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 5W1Hという6人兄弟がいる。
 長男のWhenはとてもせっかちな男。
 仕事の納期に厳しく期限が近づくと「いつできる? いつ?」と相手をまくし立てる。社内一嫌われているので会社の飲み会に誘われない。
 次男のWhereは極度の方向音痴。
 地図を見ていても目的地にたどり着けず、街の中をさまよいながら「ここはどこだ? どこなんだ??」と徘徊している。Googleマップを見ていても反対方向に自信を持って進んでいく。
 三男のWhoは交通事故に遭ってからというもの、人の顔が覚えられない。
ホストとして働いていたのだが、事故の後に離職をして現在はフリーターだ。最近は『博士の愛した数式』を意識して、人の名前を付せんに書いて身体に貼り付けている。
 四男のWhatは耳が遠い。
 何度も何度も大きな声で話しかけているのに50m先から語りかけているかのように「何!? 何て!?」と聞き返してくる。補聴器を買おうか本気で悩んでいるらしい。
 五男のWhyには意思がない。
 分からないこと、知らないことに直面すると、自分で一切考えようとせず「なんで? どうしてこうなるの?」と尋ねてくる。ウィキペディアがないと死ぬという噂がある。
 こんな社会生活をする上でかなり問題を抱えた5人の兄たちを、まとめ上げているのが末っ子のHowである。
 有象無象の兄たちにそっと寄り添って「じゃあどのようにして早く仕上げてもらう?」、「じゃあどうやって場所を知ろうか」、「どうしたら覚えられるかな」、「どのようにすれば聞きやすい?」、「そのことをどのように考える?」など、サポートしてくれるのだ。
 兄たちはHowがいるおかげで何とか社会に順応することができるのであった。
 ある日、5W1H兄弟の父親が亡くなり、遺産を相続することになった。
金というものは恐ろしいもので、平等に6分割すれば良いものを、他の兄弟よりも少しでも多く貰いたいと皆が考えた。
 欲望も相まって、5Wの兄たちは平常の悪癖をこじらせ、裁判手前の騒ぎにまでなった。
 そこでも活躍を見せたのが末っ子のHowで、5人の意見を聞きながら、それぞれが満足のいく配分に進めてくれた。
 5Wの兄弟たちは、口をそろえて言う。
「Howがいてくれてよかった」
 そんなHowが、父親の財産を一番多く相続していることを5Wの兄たちは知らない。
 いくら疑問を持っても、具体的に「どのようにするか」考えないと意味がないのだ。

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