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ホットサンド


ホットサンド

念願のホットサンドメーカーを買った。
これより私のホットサンド生活が始まるわけで、それは日本の幸福度指数を上げるほどの多幸に満ちている。
さっそく、食パンにレタス、ハム、チーズを挟んでサンドしたところこれがもう、見事なまでに上手く焼けた。
食パンとは、斯もカリッカリになるのかとその触感に感銘を受けた。熱せられたことによりチーズは魅惑的にとろーりと伸び、私の腕が自在に長くなるのであれば、ソーシャルディスタンスを保てるほどにまで伸びたに違いない。
こうなると、様々なものを挟んでみたくなる。私は冷蔵庫を漁り、ソーセージとマスタード、ケチャップでホットドッグサンドを作った。これもまた美味く、更に様々なものを挟みたくなった。私はコンビニに走り、肉まんを購入してホットサンドしてやった。これも美味かった。そうなると、もっともっといろんなものを挟みたい。ああ挟みたい。ああホットサンドしたい。
どれでやるか。いつやるか。誰とやるか。
頭の中は「挟む」という行為にばかり支配され、私はまともな生活を送ることができなくなった。
しかしながら、ホットサンドというものは、少なからず食パン二枚を必要とする。
すなわち、二種類のホットサンドを完食したということは、食パンを四枚完食したことと同意。ものすごいカロリーなのだ。
そこで己の中にある自制心を奮わせ、ホットサンド中毒になった脳を押さえつけた。
「ああ…挟みたい。挟ませてくれ…。お願いだ最後に一回だけ、一回だけ挟ませてくれ!」がたがたと喚いているが、ホットサンドはしばらくお預けだ。
「この世の全てをホットサンドしてやる…」もう一人の私が憎々しげにそう呟いたが、理性によって説き伏せられた。

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