お題「封筒」「17時」「手を伸ばす」#400字小説

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マーマレイドの空と、長く伸びるセサミペーストの影。
僕はこの時刻が苦手だ。不安、寂しさ、別れ、最後。
そんな気持ちが胸の中を支配する。
公園の砂道を蹴りながら、友達の肩に手を伸ばす。
軽く叩くと彼は悔しそうな顔をして、僕の代わりに鬼になった。
カラスが鳴いた。どこからか肉じゃがを作る匂いがする。
スーパーの袋を両手に提げたおばさん。
みんな家へ帰ろうとしている。
17時のチャイムは無残に僕と友達を引き裂く。
帰るべき場所があるのに、どこか別の場所に帰りたくなるのは何故だろう。
僕の給食費が入った封筒はどこへ行ってしまったのだろう。
誰が犯人なのだろう。誰が鬼なのだろう。
もしかしたら、僕が無くしたかもしれない。
僕が鬼なのかもしれない。
この黄昏に全身を染めて、オレンジ色に溺れたら。
息ができなくなったら。
事切れることができたら。
みんな鬼にならないで済むのかな。
帰る。変える。今を、替える力が欲しい。
(389w)

お題は「診断メーカー お題スロット」
にて出してもらってます。

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