見出し画像

タクティカートオーケストラ特別公演 ラフマニノフ生誕150周年記念コンサート

出演:
タクティカートオーケストラ
坂入健司郎(指揮)
吉見友貴(ピアノ)
naco(ナビゲーター)

プログラム:スケルツォ ピアノ協奏曲第2番 交響的舞曲

昨年12月のアイヴズ交響曲第4番でのこのオーケストラによる明晰な演奏に惹かれ、ぜひまた聴きたいと思って足を運んだ。今年生誕150年となるラフマニノフによるプログラム。

スケルツォ…プログラム・ノートにある通り、冒頭は何となくメンデルスゾーン「真夏」の音楽を思わせるけれど、基本的にはごく素朴な曲調で、むしろ「スラブ舞曲」のほうが近いか。ヴァイオリンの綺麗な音が印象的。

ピアノ協奏曲第2番…独奏ピアノは全編を通じて非常に音数が多いのだけれど、第1楽章はオーケストラが被ってピアノの細かい音が聴こえない箇所が結構あることに気づく(有名曲だけど、生で聴くのは本当に久しぶり)。演奏の問題ではなくて多分設計によるものだけれど、聴いているうちに、作曲家はこれでいいと思ってるのではないかと感じる。ピアノの virtuosity を見せつけるための曲ではあるのだけど、それと同時に、メロディを聴かせるために書いたのではないかと感じる。演者にそういった読みかたがあったか否かはともかく、ふしをじっくりと歌う演奏だった。オーケストラがおもしろく聴けないと陳腐になる曲だと思うが、今回の演奏は独奏とオーケストラが文字通り「協奏」していて、聴き応えがあった。管楽器は好演だけれど、フルートの旋律が聴こえないところがあった。ヴィオラが素晴らしい音色で、パワーもある。対して、チェロ・バスがすこし弱いか。第2楽章以降は第2ヴァイオリンにも効かせどころがあり、対向配置が活きる。独奏の吉見氏は少しだけ線が細い気がするけれど、思い切りの良い快演。

交響的舞曲…最初の音が鳴ったとき、録音よりも生で聴く作品だと実感した。録音では、ホールで聴くときのような立体感がどうしても弱まるのだけど、そういう影響が如実に出る作品ということか。パートそれぞれに見せ場があり、全曲を通じて、"オーケストラのための協奏曲"のような趣がある。ピアノの使用も効果的で、改めて管弦楽作家としての腕を感じる。第1楽章はアルト・サックスをも動員し、ロシア的憂愁が溢れる。第2楽章のワルツはテンポが細かく揺れ動くのだけれど、オーケストラが指示待ちでなく自らの意志で動いていた。それだけ互いの呼吸を意識し、有機的に音楽を作っている。個々人の能力の高さと、何よりもオーケストラをやりたいという明確な意志によるものだろう。こういう演奏を聴いていたいと思う。第3楽章はやや長く感じられるが、曲自体の、いささか盛り込み過ぎな構成によるものかと考えた。この曲でも低弦が物足りなく感じた。座席のせいなのかしらん(このホールでは、ステージが見渡せる2階正面を狙うのだけど、今回は1階中程だった)。

指揮の坂入氏は、オーケストラの機動性を活かし、色彩豊かな音楽を巧みに引き出していた。

これからも聴き続けたいオーケストラである。(2023年2月23日 東京オペラシティ・コンサートホール)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?